壱話―⑥ under world
血が紅葉のように散った。
暗闇、それがこの場所の名前だった。
別名を《ナニカ》の小屋という。
必要とされなくなり《ナニカ》となってしまった者の最終利用をする場所だ。
リサイクルは重要だ、という意見によりこの場所は作られた。
ここは、若い死神達を鍛える場所として、時には、ストレス発散の場所として多くの死神達に利用されている。そして、《ナニカ》はこの場所で最期を迎える。
血塗られた小屋、とでも言い表わせるような場所でもあった。
そう、この場所は年中赤い血がいたるところにこびりついている。元々白かったらしい壁や床もいつのまにか赤く染まり暗闇としたらしい。この配慮は《ナニカ》を怖がらせないようにするため、という理由もあるらしい。
だから、この部屋は、暗闇、なのだ。
そこに、血で染まった鎌を振り回すまだ、少女と呼ばれてもおかしくない少女と二〇代の女性がいた。
薄明かりが少女、伊織を照らし出す。彼女、は全身血だらけだった。
そして、巨大な鎌を振るのをやめようとせずただ、《ナニカ》に向かって攻撃を叩きつけていた。
何かが潰れる音・・・・・・もし、これが明るいところで行われていたら、物凄くグロテスクな現場となるだろう。
ぐぎゃあ、と何かのわめき声。
そして、クケケケケケッという笑い声。
それが重なり合いこの場所の音は気味が悪いものとなっていた。
「クケケケケケケケッ」
下品な笑い声が再び響く。
伊織は、《ナニカ》の腹にあたる場所を踏みつけ、心臓を片手に持って女性、狼人間の≪人間≫を見た。彼女、≪人間≫は表情一つ変えずにこの様子を眺めていた。
「何か言ったらどうなんだ?」
「何も言っても変わらないですから」
「君もやらないのか?」
「同類殺しになります」
「同類じゃない、《ナニカ》だ」
「同じです」
彼女は冷たい目でぐちゃぐちゃになった《ナニカ》を見下ろしながら簡潔に伊織の問いに答えた。詰まらなくなったのか、伊織は鼻で笑って再び《ナニカ》をいじりだした。
心臓が、トクントクンと蠢く。心臓は、ただ心臓だった。
何もどことも接していなかった。ただ、一つのオブジェとなっていた。
つまり、どことも繋がっていない、ということだ。単体、という言葉があてはまるだろう。
それを、伊織は握りつぶした。
手からは赤い液体が流れ滴り落ち赤い水たまりを作る。
「あーあ、終わっちゃったよ」
この場所にはふさわしくないような伊織の態度、それはいつもだ。伊織は笑いながら《ナニカ》の体を蹴り上げる。そして、それは黒い大きな穴へと吸い込まれていった。
「じゃあ、暇になったし有巣に会いに行くか」
赤い目が天井を見上げる。
跳躍。
「おい、ボクは行くからな」
「了解しました」
そして、伊織は天井を鎌で突き破り外に飛び出していった。
後には、天井が壊されたこともあってか白い光が差し込みこの部屋を一望することができた。学校の教室ほどの大きさの部屋は血だらけ、真中にぽつーんと置かれた椅子までもが寂しそうに置かれていた。そして、その隣には絶命した人間の死体があった。
人間といっても、すべて赤く染まり白い骨もあちらこちらから覗き血肉がむき出しになっている。もう、人間だといわれないと分からないほど赤い血肉の塊と化していた。そして、眼球の一つが地面に無造作に置かれていた。
ぐちゅ、と何かが潰れる音がする。
≪人間≫が黒いヒールでその眼球を踏んでいた。
赤い口を舌が這う。血を完全に嘗めりとり、≪人間≫は狼から人間の女へと姿を変える。全裸となってしまった≪人間≫は近くにあったタオルを体に巻きつける。そして、落ちていた眼鏡を拾い上げ手に持った。
「まったく、お二人は似てなさる。これでは、《ナニカ》、いや、狼殿が可哀想だ。私と同族、と言っても選ばれなかった平凡な狼人間だ。まあ、しかし、埋葬してもいいだろう」
独り言だから言えるのか、≪人間≫は静かに目を閉じ手を合わせ祈った。そして、コツとヒールを鳴らし歩き出す。
桜の花びらが血肉の上に着陸する。
鈍い音とともに、≪人間≫はこの部屋から去った。
さて、2回目のunderです。基本、この世界はグロイです。そのつもりで書いてますし。
《ナニカ》、それは・・・・・・という話です。
原作の方が遅くなっている気がしなくもなくもないですが・・・・・・。
多分、明日は更新できないような・・・・・・まあ、頑張ってみます。
最後に、読んでくれたみなさんありがとうございます。
左腕の筋肉痛とともに。
追伸:世界五分前説にはまりましたっ