序幕
平凡な毎日を送る貴方に・・・・・・。
一三歳ぐらいの少女がいた。
白くて長い髪、赤い目を持ったなかなかの美貌の持ち主だった。
そして、彼女の左目からは赤いタトゥーが左半身に刻まれていた。それは芋虫のように今にも蠢きそうで、見ていて気持ちがいいものではなかった。
また、少女には不似合いな大きな鈍い光を放つ鎌が地面に突き刺さっていた。それも、その鎌は少女の手首の手錠へと繋がっている。
少女の名前を神原伊織といった。
彼女は、死神だ。
それも、最下級の死神なのだ。
生まれ持った美貌とも表現できる白い髪と赤い目は最下級の死神の色だった。
死神にとって不吉な色、それは差別されるべき者が持つ色。だから、少女は最下級の死神だった。
「うさぎさん、おいで」
伊織は僕を見ていた。
にこり、とほほ笑む彼女の笑顔は僕を幸福にさせる。まるで、女神のような笑顔だった。しかし、彼女は死神であり、女神ではない。
「うさぎさん、て呼んで、いい?」
可愛らしい声が僕に囁く。
「いいよ、別に」
「よかった、うさぎさん」
また笑った。白い頬が少し赤色に染まる。
僕、まあ、彼女からは『うさぎさん』と呼ばれているが名前を白玉白という。そして、彼女の≪うさぎ≫だ。
≪うさぎ≫それは、死神のペット。
つまり、僕は彼女のペットなのだ。まあ、ペットと言っても別に下僕とかではない。死神の付き人、カッコよく言えば守護神みたいなもの。死神に守護神という言葉は適切じゃないと思うけど。
とにかく、僕は彼女、伊織のパートナーなのだ。
「うさぎさん、本当にボクでいいのか?」
赤い大きな目が僕を見上げる。
「僕は、君に助けられたから、ね」
「でも、こんな下級のボクなんかに・・・・・・」
「いいんだって、別に」
「でも・・・・・・」
僕はそんな彼女の口を封じる。まだ、何か言いたそうにしている彼女に僕は自分の人差し指を自分の唇に押し当てた。
はい、と彼女は低くうな垂れたような気がした。そして、
「しー、ですね」
と、残念そうに呟いた。
僕は、彼女の≪うさぎ≫になる前まで、平凡な男子高校生をやっていた。しかし、最悪な悲劇によって僕は人間でいられなくなってしまった。正確に言えば、僕は、吸血鬼になってしまった。吸血鬼になった僕は普通の人間として暮らせなくなった。毎晩血を求め、欲望に耐えきれなくなった。
吸血鬼といっても、はじめはただの人間でいられた。ただ、血を飲むたびに体が変化していった。犬歯が唇に突き刺さるぐらい伸び、次に、爪が黒く硬く、そして鋭く伸びた。そして、耳は尖った。
理想とする吸血鬼の出来上がりだった。
しかし、この変化は血を飲むごとに止まらず、変化し続けていった。
僕は怖かった。
血を欲する自分はもちろん怖かったが、だんだん姿が変わる自分が怖かった。
こんな自分は嫌だ、と思って自殺を図ろうとした。
そこで出会ったのが彼女、伊織だった。
必死に僕の自殺を止める彼女のために僕は生きることにした。
しかし、すでに人間として過ごせない僕に、彼女は僕の居場所を与えてくれた。それが、彼女の≪うさぎ≫だった。
そして、今に至る。
はじままして、伊草です。はじめての投稿です。よろしくお願いします。
この作品は、電撃大賞投稿用に作成中の作品の裏話を元にした作品です。下手な文章ですが、読んでくれた人ありがとうございます。
できるだけ、がんばって投稿していこうと思います。