迷い
時代は十二世紀。
この時代クリスティアン・ローゼン・クロイツという人物が、奇跡を見せ、錬金術や魔術を広めたという。
クリスチャン・ローゼンクロイツは120年後見つけるだろう、とメモをドアに張り、弟子のひとりが腐敗もせずに眠るよう死んだ、彼の死体を発見した。
ローラントはローゼンクロイツにあこがれて、彼の一団に入団した。
おなじころ、ナポリの修道士、トマス・アクィナスが登場したり、パラケルスス・ホーエンハイムやアグリッパと言った面々のご登場。
彼らはみな、ヘルメス学とか言われる学問のスペシャリストで、錬金術、魔術、召喚と言ったことまで詳しかった。
「悪魔の召喚?」
ローラントはカンテラ・ランプのわずかな明かりに照らされた、四畳半ほどの木造建築された部屋で、団長と密談を交わしていた。
「そうだ。ローラント、お前やってみないか」
「しかし、悪魔なんてよんじまって、呪われないですかね」
「そんなわけなかろう」
ローラントは団長に言われ、苦笑した。
「それで、いつ決行するんです?」
「明日だ」
「明日!? 待ってください、急すぎますよ」
団長はヘキサグラムとペンタグラムと呼ばれる、星形のマークを象ったペンダントをローラントに渡す。
「お前を悪魔の悪意から保護してくれる」
「そんな・・・・・・」
ローラントはイスに腰掛け、団長を見送った。
入れ違いに団長の妹、エリカが部屋にはいる。
「ローラント、お兄さんがまた難題でもふっかけたんでしょ。わかってるわ。しょうがないね」
「エリカ・・・・・・。俺、明日・・・・・・」
つい言いそうになってしまう。
エリカを前にすると、ローラントは弱かった。
「なんでもない」
「変なローラント。ねえ、木イチゴのパイ食べる?」
エリカがバスケットから甘い匂いのするパイを皿にのせた。
「いらない、もう寝る」
ローラントは階段を上がり、屋根裏の自分の部屋までやってくると、ベッドに寝ころんだ。
エリカも追いかけてきて、ローラントに抱きつく。
「おいおい」
「いいじゃない。ね、愛してるの・・・・・・」
エリカが唇を押しつけてきた。
拒む理由がないなぁ、などとぼんやりする頭で想うローラント。
「じゃあ、キス以上のことも許す気?」
「当然よぉ」
エリカのほうが、する気満々と言った感じだった(汗。
「でも俺、マジで眠たいんですけど;」
と言ってぐったりするローラント。
「なさけないわね! それでも男なの!? あんた騎士でしょ。しっかりしてよ」
「そ、そんなコト言ったって・・・・・・」
いつもこんな調子で、エリカの押しに弱いローラントだった。
次の日。
城の地下室に呼ばれたローラントは、ローゼンクロイツ社の規定通り、特別な衣服を身につけず、悪魔の召喚という、大きな儀式に携わった。
「ローラント、テトラグラマトンを・・・・・・」
エリカの兄、マクシミリアンがローラントにマジック・ソードを与えて言う。
マジックソードは魔術を行うものが使う剣であり、儀礼用としての意味合いをとり、武器として使うことは少ないという。
ローラントは剣をかまえ、一同が見守る中、魔法陣の中央に立った。
迷い。
ローラントは悪魔の召喚に対してまだ、躊躇していた・・・・・・。