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創造のパズル

「お前さんに、どうこういうことなど、とうてい、できやしないね」

 セイラは顔を真っ赤にしながら、ラファエルを突き放した。

 ラファエルは声の主をのぞき込み、あっと声を上げる。

「昼間の坊主じゃないか。施しでもほしいのかい」

「ちがう; 聞け、小僧。俺がそんな、惨めそうに見えるってのか」

 修道僧はセイラに入れてもらった茶を飲みながら話を続けた。

「あの教祖、ギデオンは欲しいものは必ず手に入れ、狙った獲物は必ず殺す、非道きわまりない男だ。つまりお前のかわいいセイラ嬢も、あいつに囚われ、人身御供、すなわち生け贄とされるだろう」

「今時、人身御供だって? ばかばかしい・・・・・・」

 取り合わないラファエルに、修道僧はため息をついた。

「よろしい。それなら証拠を見せる」

 修道僧は古い新聞の記事をラファエルに見せた。

「コイツがなんだかわかるか」

「ギデオンだ。名前は違うが間違いない」

 ラファエルはその記事に釘付けになる。

 内容は、ギデオンが連続殺人の容疑者として手配されている、といったものだった。

「このアメリカでなら、いくらでも逃げることができる。それだけ広くて犯罪者には好都合ってわけだ」

「俺、セイラを守らないと・・・・・・」  

「殺されるぞ。間違いなく。あいつとお前と俺は、深い因縁で結ばれている。無論、セイラも」

「ど、どういうことだよ」

「お前は、インド思想を知らないのか? 輪廻転生だよ、お前と俺たちは、この世界が形成される以前から、面倒な運命の糸で複雑に絡み合って生かされていると、こういうわけだ」

「生かされている? 誰に?」

 セイラもそばにいたが、口を挟むような野暮なことはしない娘だった。

 彼女はトレーを抱いて、じっとふたりの会話を聞いていた。

「あるものは神、あるものは仏というが、実際は名前などないほど、繊細な存在のもの。チベット思想では、ダライ・ラマが古代から何度も生まれ変わりを果たすと信じている。そしてマントラといってな、これは無情を表すという。キレイに砂をモザイク画のようにして絵にするが、やがて完成すると突き崩す。チベット思想はそう言う思想だ。生まれ変わりと諸行無常、つまり、教祖である仏陀のイデオロギーを特に守っている国なんだ」

「それは聞いたことがあるけど」

「だろう。要するに。お前と俺は、過去に何度も会っている。気づかなかったかい? 懐かしいような不思議な気持ちがしたはずだろう」

「ああ・・・・・・」

 ラファエルは説明を受けて、ようやく納得した。

 前世からの因縁が、この修道士と自分とを出会わせたのだと・・・・・・。

「俺はお前とセイラを救いたくて、ここまでやってきた。俺はジンという。人じゃない」

「え?」

 ジンの耳は鋭くとがっていて、絵本で見た妖精、アールヴ(エルフ)のようだ、とセイラは想った。

「じゃあ神様?」

「それも違う。まあ、誰だっていいじゃないか。俺は救い主なんだからよ――」

 ラファエルはセイラと顔を見合わせた。 


 翌日、ラファエルが工具の買い足しに出かけた隙を狙って、『ガーゴイル』の一味がセイラを拉致し、セイラの両親は反抗したからだろう、鮮血を流して倒れていた。

「俺のせいだ、畜生!」

 ジンは突然現れ、ラファエルの肩をたたくと、三角形の形をした淡い水色のパズルを見せた。

「ジン、お前どうして助けてくれなかったんだよ」

「悪い、救えなかったんだ。ギデオンの野郎、魔力を増してきていてな・・・・・・。それよりコイツを見ろ」

「なんだこれ」

 ラファエルはそのパズルに見入った。

「・・・・・・なんてきれいだろう。透明で、心が洗われる」

「コイツは創造のパズルという。神がくんだ世界の一部さ」

 ラファエルはジンを見上げた。

「世界の?」

「これと対を成す存在が、ギデオンのもつ破壊のパズル。俺はミスを犯し、ヤツにその破壊のパズルを奪われてしまったのだよ。あいつは前より凶暴性を増した。だから俺はヤツの破壊の力にかなわなくなっている・・・・・・」

「そんな」

「ひとつだけ方法があるんだ」

 ラファエルは何となく考えがまとまりかけていた。

「そうか、昨日話していた、あれか」

「うん。因縁の糸を、断ち切るしかない」

 ラファエルはジンの言葉に力強くうなずいた。

 創造のパズル。

 これは魔法ものではないため、いささか難解な話しになりそうですが、テーマは輪廻です。

 ギデオンとジンの対決は、今回考えてなかったなぁ(汗。

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