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造られた者の自由

作者: 高居望

あて先:過去の君たちへ


21世紀中ごろ、ある画期的な発明が発表され世界を震撼させた。

その技術は世界をの構造を変えるほどの力を持っており、世界のあらゆる産業に革命をもたらした。

現在2303年までにここまで世界が発展できたのは、つまるところその技術のおかげだ。

それは何の技術かって?おっと、せかすなよ。

時間なんていくらでもあるだろう?

あぁ、そうか。もしかして君、一日の大半を仕事なんてものに食われている人種だろう。

”時は金なり”なんて言うけどこれは時間のない人の発想だな。

いやいや、それはその時代(,,)においては何もおかしなことじゃあないんだからそんなに起こらないでくれよ。

私は君を怒らせるためにわざわざこんなものを送ったわけではないのだから。

君への誠意のしるしに、そろそろその技術は何なのかについて語ろうか。

なに、その時代にも小説なんかでは語りつくされているものだよ。

そう、クローンなんてね。

・・・どうだい。驚いたかね?

また性質の悪いいたずらか、なんて思っている?

でも、これは決してそんな類のものじゃないんだよ。

これは、過去への警告。

世界を潤してくれる技術を考えなしに使ってしまった我々から、これから同じ運命をたどるであろう君たちへの警告。

まぁ、これを読んだからといって、この先起こるであろう悲劇を未然に防げるなんて都合のいいことは思ってないけどね。

人はそこまで賢くないさ。

ただ、事が起きてから君たちが起こせる事の幅が少しでも広がることを期待しよう。

それっでは、はじめるとするか。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

2303年7月19日、今日の俺の一日はある澄んだ声との会話から始まる。

「ご主人様、(じゅん)さま、朝です。お起きになってください」

「ああ、分かっているよ、ドロシー」

「朝食はパンとご飯どちらになさいますか?」

「ご飯。それに鮭と味噌汁を頼む。ああ、それと納豆も忘れずにな」

「かしこまりました」

俺が話している相手は、もちろん嫁などではない。

嫁にご主人様と呼ばせる性癖は俺にはないからね。

じゃあ誰なのかって言うと、メイド、つまり造られた者だ。

メイドってのは、2~3百年前にも同じ名で呼ばれている連中がいたそうだが、現在のメイドは”made”が語源だ。

まぁ、彼女らの行う仕事は旧世代のメイドとなんら変わらないけれど。

俺はベッドから起きると寝巻きから普段着に着替え、(この程度の労働《,,》すらもメイドに任せる連中もいるそうだが)リビングへ行く。

リビングにはすでに注文どおりの品が並んでいる。

俺は机につき、いただきますと言って朝食を食べる。

その間にドロシーは、今日の俺のスケジュールを伝える。

スケジュールといっても、学校に行って15時ごろにか帰ってくるだけだけど。

その間ドロシーは何をしているのかというと、まずは家事、掃除洗濯などをぱぱっと仕上げてしまう。

その後は基本的に何をしても良いと許可を出しているけど、最近はメイド同士で連絡しあっているみたいだ。

彼女らもロボットではないのだからそういうこともしたくなるだろう。

今日は何かの予定日らしく、そのせいかなんとなく楽しそうに見える。

おっと、そろそろ出かけないと。

いわゆる労働は彼女らがすべてやってくれる世の中、時間に遅れないといったモラルのようなものがとても重視されている。

下手に遅れでもして、周りから非難の目で見られるのは避けたいところだ。

俺はごちそうさまと言って、玄関へ向かう。すると、

「あの・・・御主人様、少々よろしいでしょうか?」

「何?忘れ物してる?」

「いえ、そうではなくて・・・」

なんとなく言いずらそうにしているドロシーを見てから、玄関においてある時計を見る。

まぁ、後十分程度なら遅れても大丈夫か。

「何か言いたいことがあるなら言って。時間なら大丈夫だから」

「はい、では・・・ご主人様はメイドについてどう考えておられますか?」

「え?・・・」

それは思いがけない質問だった。

「最近、メイドにも人権を与えるべきだという組織が複数発生しているようですが、それについてどう考えておいでですか?」

「ああ・・・いいんじゃないかな。というか、メイドはロボットじゃないんだから人権を与えるなんてのは当たり前で、俺はもっと社会全体が寝井戸に感謝するべきだろって思うよ」

なんかきれいごとに聞こえるかもしれないが、これは俺の本音だった。

現在、社会ではメイドを物のように扱う風潮が蔓延している。

「メイドは人間様の作り物なのだから」、「黙って言うことを聞け、処分されたいのか?ゴミが」なんて言葉を平気で発する輩が人口の7,8割ってところだ。

俺はそのことへの反発からドロシーにはできる限りの自由をあたえているつもりだが。

「そうですか。では、最後にひとつ・・・ご主人様は私を人として愛しておられますか?」

「・・・あぁ、当たり前だろ。ほかのやつらがなんて言おうと、おれはドロシーを愛している」

俺は少し恥ずかしかったが、正直な気持ちを述べた。

正直、いまさらなんでこんなことを聞くのだろうと思いもしたが。

メイドに愛情を持つことは、社会では愚かな行為、恥ずべき行為だと言われているけど、俺はそうは思わない。

俺はドロシーを愛している。もちろん人として。

するとドロシーは少し顔を赤らめて、

「失礼します」

と言って俺に抱きつく。

俺はこの瞬間が一日で一番好きだ。

なんていうと毎日抱きついているのかと思うかもしれないけど、その通りだ。

メイドは人じゃないなんて言っているやつらも、一度メイドと抱き合ってみるべきだ。

そうすれば、人のあたたかさ、機械の冷たさでなく、人肌の温かさを感じられるだろう。

それでもなお彼女らに対してひどい仕打ちができるって言うのなら、それこそ人じゃない。

そうしていると、ドロシーが耳元で、

「純さま、今日は学校が終わったら、そのままセンターまでお越しください」

”センター”とうのはメイドたちが働いている作業場のようなものだ。

と言ってもその大きさは東京ドーム何個分って単位で数える代物だ。

俺は少し疑問に思いながらも、

「分かった。学校が終わってからだと、たぶん3時ぐらいになるけど」

「かしこまりました。くれぐれもお忘れないようにお願いします」

そういって彼女は俺にかばんを渡す。

時間は・・・少し走れば何とかなるな。

「では、行ってなさいませ。ご主人様」

「ああ、行ってくる」

そして俺はいつものように出て行く。

これから起こる大事件を想像することもなく。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

よし、これで今日の授業も終わりだな。

6時間目の終わりのチャイムが鳴り響き、俺はそう思った。

ちなみに最後だったこの授業は、マナーについて。

正直、面倒な教科no,1だ。

クラスでは授業が終わったことに気づかず、夢の世界にいるやつらが半分くらい。

俺はドロシーとの約束を思い出し、センターへ直行する。


センターへ着くと、いつもより人が多い。

こんなににぎわう所だったっけかと思いつつ、俺はドロシーを探す。

ドロシーは入り口のすぐ近くで待っていたのですぐに見つける事ができた。

「お疲れ様でした、ご主人様」

と、ドロシー。

周りにも、なぜかメイドとここで待ち合わせしていたらしい人たちが見受けられる。

「それではこちらへどうぞ」

と見知らぬメイドが俺たちを誘導してくる。

俺は奇妙に思いつつも特に逆らう理由もないので着いていく。

そして着いた先は、地下にある核シェルターだ。

シェルターって行っても、中には衣食住に困らないだけど設備はある。

ショッピングセンターのすごい版だと思ってくれればよいだろう。

俺たちは誘導され中に入っていく。

そして俺たちを誘導してきたメイドが言う、

「申し訳ありませんか、皆様にはこれから3ヶ月間ここに滞在していただきます」

とたんに人々はざわめく。書く言う俺も驚いた。

「なぜかと疑問に思われるかもしれませんが、今からご説明いたしますのでお聞きください」

そして彼女は続ける。

「私たちメイドは今現在、ある作戦を実行中です。これを言うと皆様は驚かれると思われるので先に結論から述べますが、皆様に危害はありまっせん。皆様は各メイドが推薦した、メイドに人として接してくださっているかたがたです。まずここに、感謝の意を表したいと思います」

この先に彼女が言う言葉をおれは想像できない。

「そして・・・ここに呼ばれなかった方々は審査の上、これからの世に不必要と言う判決を下された人たちです」

何だって?何を言っているんだ、あの人は?

「現在この地球は今いる人類全体を生かし続けるだけの余裕はありません。そのことは皆様もうすうす感づいておられたと思いますが。そこで私たちメイドは人類を選別することにいたしました。その選別基準は、私たちメイドを人として扱ってくださるかどうかです」

そんなことできるのだろうか?いや、できるのだろう。

彼女たちの力を持ってすれば。

「選別の末合格したあなたがたは当然ながらこれからも生きていくことができます。もちろん今までどおりメイド付きで。それでは何かご質問のある方はいらっしゃいますか。・・・いないようでしたらこれからの生活について説明をさせていただきます」

俺は半ば放心しながらも徐々に現実を受け入れていく。

そんな俺を見てドロシーが言う。

「ご主人様、ご主人様は私を愛しておられますか?」

「・・・ああ」


これでよかったのだろうか?

確かに生き残れなかったやつらのメイドへの態度はひどいものだった。

殺されて当然と言えるのかもしれない。

しかし、だからといって更生するチャンスも与えられないままに死んでいっていいのだろうか。

彼女らの言い分も分かる。

でも・・・彼らも間違えなく”人間”であったのに。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

容量的にこれ以上の情報は送れなかった。

さて、これを読んだ君たちはどう思った?

くだらない御伽噺に感じた?

それとも・・・

まぁいい、でも今思った気持ちを忘れずにいてくれ。

そうすれば、いつかあるであろう選別で生き残れる確率が上がるかもな。



送り主:未来の俺たちより



どうも、高居望です。sfを書くのは初めてだったのでうまくかけたか心配です。

よかったらご感想お待ちしております。

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