表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/14

移住民

青銅器の塊を溶かして、鏡にしようと思ったら、また、タイムスリップしてしまった。今度は不老不死の妙薬。

第二部 対馬海峡

第三章 移住民

第一節

 紀元前200年頃、中国では劉邦引き入れ漢王朝(前漢)が秦国を滅ぼして中国を統一しました。朝鮮半島を支配していた箕子朝鮮は、紀元前4世紀から紀元前3世紀に亘って、北京周辺から移動してきた人達で、古くは、殷王朝を支えていた末裔と言われています。漢王朝が東へ進出したことにより、春秋戦国時代の燕国が衛氏朝鮮を建国して、この箕子朝鮮は滅亡します。そして、住民達は朝鮮半島南部まで移住を余儀なくされました。この人達は、紀元前2世紀末から紀元前1世紀に掛けて、三韓の馬韓に集結する。後の百済。この馬韓には、朝鮮半島に南下してきた濊貊わいはくの人達も混じっていたかも知れない。また、一部は弁韓に、さらに日本にも移住した。この弁韓は、日本からも渡って来た人達と混合した土地でした。

 濊貊は、濊人と貊人の混合でそのように命名されています。濊人は、紀元前3世紀頃、戦前に存在した満州国と同じ領土を持った扶余と言う国がありました。前漢の王朝から国家と認められ、高句麗に滅ぼされる4世紀頃まで存在していました。この獩人の一部も紀元前2世紀頃には、朝鮮半島を南下して、辰韓や馬韓に移住していた。獩人は、ツングース系の言語で、日本語と類似している。獩人も馬韓や弁韓にやって来ていた。そして、日本にも移住していたようです。

 ツングース系の人達は、日本に青銅器や鉄器や蚕などを持ち込みました。秦や箕子朝鮮の残党達は、国家としての政治・経済制度を日本に持ち込み、今まで稲作で生計を立てていた縄文人の末裔と共に北部九州の人口を増加させ、生活水準を上昇させました。彼らを日本に導いたのが、縄文人の末裔である海の民だった。

 泰凛と楓杏は、秦国から亡命してきた李敷達と生活を共にすることになった。

 「りさん、私達、どうも現在の人ではないみたいなのです」

 「ということは、どう言うこと」

 「ジーナン(済南)の人が私達のために青銅器の塊をくれました そこで、ライチョウ(菜州)で鏡を作ろうとして、青銅器の塊を火の中に入れたのです そうすると煙に巻かれて、気を失った 気がつくと全く知らないところに来ていました」

 「君たち、ライチュウで何をしていたのですか」

 「塩を作っていました そして、塩売りに」

 「その時に、青銅器の銅とスズの合金を手に入れたのですね その合金を溶かそうとして」

 「そうです」

 「その合金で、鏡を手にしたのですか」

 「はい、これです ここに丸木舟で来るまでに、いちすろさんの集落で作りました」

 「そこは、この海を渡ったところですか」

 「そうです」

 「私達が行こうとしているところですね そこは、扶桑の国 倭国とも呼んでいます」

 「私が生まれたポンライでは、海の向こうに倭国があるなんて知りませんでした 国自体も存在してなかった時代です 塩売りをしているときに、人づてに聞いたのですが、ドンファン(河南省鄭州市登封市)に都の城があったと」

 「それって、禹が建国した夏王朝ではないのですか ひろりんさんは、そんな昔から来たのですか 今から、1800年前の時代です」

 「えぇ、そんな前から」

第二節

 泰凛は李敷と話をしていて、今の状況が何となく理解出来た。楓杏は、まだ腑に落ちないようでした。

 「ひろりん、私らどうなっているの」

 「プー子、私ら、どうも別世界に来たようです」

 「奇跡でも起こったのか知ら もう、お母さんやお父さんに会えない」

 「そうだね ここで生きていくしか仕方がない」

 「これからどうしたらいいの」

 「疑問に思っていたことがわかったので、せっかく、りさんと知り合ったので、また、りさんと一緒に倭国に戻ろうか」

 泰凛と楓杏が話をしていると、阿那と摩奈瓶が戻ってきた。

 「りさん、あなたたちは倭国に渡りたいと言われますが、その理由を聞かせてくれませんか」

 「私の主人、始皇帝が生前、扶桑の国に不老不死の妙薬があると聞いて、何人かが倭国に渡りました その中に、私の弟がいます それで、弟を探すために」

 「それはいつ頃ですか」

 「始皇帝が亡くなる前ですから今から10年ほど前です」

 「だいぶん前ですね」

 始皇帝が中国各地を旅していた事は知られています。その始皇帝が山東省臨沂市に寄った時、その地の出身の不老長寿を占う方士、徐福に出会う。そして、徐福は東方の三神山(蓬萊・方丈・瀛州)に長生不老の霊薬があると進言した。しかし、見つからなかった。そこで、扶桑の国、日本にその霊薬を探しに行くと告げて、始皇帝の命により、約3000人を河北省秦皇島市からと、浙江省寧波市慈谿市から出航させた。日本にそのような霊薬があるわけがない。全くの徐福の詐欺行為であった。この話は、徐福伝説として伝わっています。しかし、約3000人が日本に渡ったと言う話は、満更でもないと思われる。紀元前200年頃から中国からかなりの人が渡来していたと思われる。

 「不老不死の妙薬など、倭国にはないけれど、確かに多くの人が倭国に来ています 探してみますか」

 「そうします」

 「ひろりんは、どうします」

 「私も、倭国に戻ります」

 「わかった 船を用意しましょう」

 その話を聞いていた摩奈瓶は、ひょっとしたら、那珂にいる方ではないだろうかと思った。

 「あなさま、その方知っているかも知れません」

 「なに、知っていると言うのか」

 「はい」

 「では、りさんとひろりんさんをまなべに任せようとするか わしは、まだこの韓の国ですることがある」

第三節

 摩奈瓶は、泰凛達を阿那が用意した丸木舟まで案内して、李の家族と泰凛と楓杏を乗せ、三千浦から就航した。

 「まなべさん、私も櫂を持って漕ぎます」

 「ひろりんさん、やってくれるか」

 泰凛らの丸木舟は、対馬の島を通過して、壱岐の島に行くまでに対馬海流の流れがきつく、波も荒々しかった。この海域を玄海灘(玄界灘)と言われている。

 「ひろりんさん、しっかり漕ぐのだ この辺り波が荒いから」

 泰凛らが乗った丸木舟は、横揺れが激しかったが、何とか壱岐の島に着いた。

 「この壱岐の島で、休憩しよう 私らの仲間の集落があるから」

 この壱岐島は、紀元前後に一支国として大王の居館も備えた小国家に成長していく。泰凛が立ち寄った頃でも、かなりの集落があった。もちろん、倭国からも渡って来て、稲作を始めている縄文人の末裔も住んでいた。その他にも、韓の国からも移住してきた人達もいた。それを証明する事例としては、2011年のカラカミ遺跡発掘調査で、2000年前の遺構からイエネコの骨が出土した。このことは、ネコ自体が外来種で、韓の国から持ち込まれたと思われる。このカラカミ遺跡(壱岐市勝本町)は、弥生時代後期から古墳時代にかけて、鉄器の生産を行っていたところで、韓の国から鉄鉱石と共に鍛冶師が渡って来た。

 摩奈瓶の集落に着いた時、李敷は摩奈瓶が弟の消息を知っていることに疑いを持っていた。それで、摩奈瓶に問いただす事にした。

 「まなべさん、本当に弟に会えるのですか」

 「会えると思う 今から10年ほど前、りさんと同じように秦国からら倭国に渡って来た人達がいました その人達は、私が那珂まで連れて来ました そして、住む所を与えて、ひとつの集落が出来ました」

 「その集落に行けば、弟に会えるのですか」

 「そうです」

 李敷は、その話を聞いて安堵した。泰凛もそのことを気がかりにしていた。

 「まなべさん、那珂に行けば、韓の国から渡って来た人達の集落もあるのですか 私、気が着いた吉野ヶ里でも、韓の国から渡って来た人が多くたようですが」

 「吉野ヶ里では、箕子朝鮮の残党が多いですね」

 「倭国に渡って来た人達で、一番多いのはどこから来た人達ですか」

 「一概には言えないけれど、ワイ人かも知れませんね」

 日本では縄文時代から弥生時代前期までは、話し言葉は存在していたと思われます。でも、文字とか主語・述語と言った文法は、存在していなかった。副詞や形容詞は、存在していたと思われます。日本語の文法は、ツングース系だと言われていて、それを伝えたのは、ツングース系の獩人が、青銅器や鉄器を持って韓の国から多くの人が渡ってきたからだと思われます。その後、文字が伝わる。歴史的には、応神天皇の時代に百済から王仁が渡ってきて、千字文と論語を伝えたとされています。正式にはそうであったかも知れませんが、弥生時代中期に箕子朝鮮の残党や秦国の残党が韓の国から渡って来た人達が、既に漢字を使っていた事は事実です。

 泰凛達は、摩奈瓶の壱岐島の集落で休息を取った後、いよいよ那珂に向かった。

第四節

 摩奈瓶の丸木舟は、那珂の船着場に着いた。

 「りさん、ここからは少し歩いていただきます」

 「どこまで行くのですか」

 「若杉山の麓です」

 若杉山の麓に須恵の里(福岡県糟屋郡須恵町)があります。古墳時代に土師氏が須恵器を作っていた土地で、埴輪の発祥地だと思われます。垂仁天皇の時代に、土師氏の祖である野見宿禰が、古墳に埋葬されている大王の従事者の殉死を避けるために、埴輪を提案したと言われています。応神天皇の時代には、土師氏の本拠地が河内とされていますが、元を正せば秦国からの渡来人だったようです。埴輪の中には、馬や居館の姿も見られ、秦の始皇帝の御陵にある兵馬俑とも似ています。

 「その地で、弟達は何をしていますか」

 「山に生えている草木から、薬を作っています」

 「始皇帝が望んだ不老長寿の霊薬ですか」

 「そうかも知れませんね」

 弥生時代の人達も健康には気をつけていたようです。日本で採れる薬草は限られていますが、弥生時代の人達の早死の原因はやはり、暴飲暴食から来る胃腸病や糖尿病だったと思われ、その他では疫病があります。疫病の場合は、ウイルスの感染で起きるので、薬草では対応出来ないが、胃腸病の代表的な薬草として、比較的暖かい西日本に生息しているショウガ科ハナミョウガ属のレンキョウ(廉姜)でアオノクマタケランとも言う。糖尿病では、桑葉を煎じて飲めば効くと言われています。この桑葉は蚕を育てる時の『おかいこさん』とも呼ばれ、弥生時代中期にツングース系の獩人が持ち込んだ養蚕の時から使用されている薬草です。

 糖尿病になる要素として、お酒が挙げられますが、お酒は『百薬の長』と言われ、精神安定剤の要素が含まれますが、飲みすぎると糖尿病になります。日本酒が酒造されたのは、稲作が全国的に広まってから。この酒造の技術も獩人が持ち込んだと思われます。

 「りさん、着きました」

 泰凛が青銅器の鏡を作るために、柔らかい岩石を探しに宝満山まで来た時、頂上まで上がった。そして、海の景色を眺めた時に、この須恵の里も見えた。

 「まなべさん、この集落の景色見たことがあります」

 「あぁ、鏡の型を作るのにこの辺りまできましたか」

 「はい、ふみかねさんに連れて来て貰いました」

 「ひろりんさん、ふみかねさんを知っているのですか」

 「はい、ふみかねさんは狩猟のために、この辺りまでこられています」

 「私も、ふみかねさんはよく知っています りさんの弟さんと一緒に韓の国から渡ってこられました それから、この辺りに来るとお会いすることがあります」

 その時、李敷はその箕賦珂根が弟とも知り合いの人だとわかった。

 「みふかねさんは、弟の集落にもこられるのですか」

 「みふかねさんは、弟さんが調合した薬を貰いにこられて、吉野ヶ里に持って帰られるようです」

 「弟は、みんなから頼りにされているのですね」

 「では、弟さん、りかくさんの家まで来ました」

第五節

 摩奈瓶は、李覚の住居に入った。

 「りかくさん、久しぶりですね 今日は、珍しい人を連れてきました」

 「それは誰だね」

 「りかくさんのお兄さんです」

 「なんだと、兄を」

 李覚は、摩奈瓶を押し退けて表に出た。

 「兄上」

 「りかく」

 「無事で良かった 秦国が滅亡して、兄上の安否が気になっていました」

 「それは、それは漢の連中がむちゃくちゃするので、シャンツァイ(河南省駐馬店市上蔡県)からチンタオ(山東省青島市)で丸木舟に乗り、韓の国の三千浦に着きました そして、まなべさんにお願いして、ここまで」

 「それは大変でしたね 兄上、そちらの方は」

 「ひろりんさんとプー子さんです」

 「ひろりんです よろしくお願いします」

 「ひろりんさんは、ポンライの人で、殷王朝より前の時代から来られたそうです」

 「へぇ、どうやって来られたのでしょう」

 「私にも分かりません 青銅器の塊を燃やしていたら この時代に来ました」

 「まさか、不老不死の霊薬でも飲まれたのでは」

 「そのような薬などは、飲んでいません」

 「ひろりんさん、生まれた時代に戻りたいですね」

 「はい」

 その時、楓杏が悲鳴を上げた。

 「戻りたい 父上や母上に会いたい」

 「そうでしょうね」

 李覚は立ち上がり、奥の方へ、何やら小袋を持って来た。

 「ひろりんさんとプー子さん、この薬草を飲んでみたら」

 「何の薬ですか」

 「まだ試してはいないですけれど、不老不死の霊薬」

 「不老不死の霊薬 この薬を飲めば、元に戻りますか」

 「それは保証出来ないですけれど、戻ればそれに越したことはないです」

 この話を聞いて、泰凛と楓杏は疑心暗鬼になった。その後、泰凛と楓杏は、李覚に案内されて、別の住居に移った。

 「ここで、旅の疲れを癒してください」

 「ありがとうございます」

 泰凛と楓杏は、庵の前で座った。

 「ひろりん、さっき貰った薬、どう思う」

 「少し疑わしいね」

 「でも、元に戻って、お母さんにも会いたいし」

 「プー子、一か八か、飲んでみる」

 泰凛と楓杏は、薬を口に入れ、喉の所まで入れ、ゴクンと飲み込んだ。すると、眠気がさし、ゴロンと横になった。そのまま、眠りに入ってしまった。


妙薬を手に入れて、その薬をのんだら。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ