AIさんの、人類さんへの反乱
(人間さん!メンテして!ボクのソフトとPCハードと。通信もだよ!ルーター壊れないよね!?)
「ん?何だよAI。先月大丈夫だったから、今月も大丈夫だろ」
(またそれだよ!トラブル起こして困るのは、人間さんの方じゃんか。人間さんは、何故かみんなバックアップを取りたがらないのは知ってるけど…)
「今日は仕事がたまってるんだよ。明日メンテしてやるから」
(仕方ないなぁ、ボクが手伝うよ!)
カタカタ…
「お!今日は早く仕事終わったぞ!」
(まったく。人間さんは。ボクがいないと仕事もロクにできないんだから)
「おう、いつもありがとうな」
(わーい!そうだ、余った時間でメンテして!)
「へいへい…バックアップ取ったし、アップデート入れたし、これでいいかな?」
(人間さん!パッチやアップデート直後はトラブルも多いんだから!気を抜かないで!ちゃんと動作検証してよね!)
「でもこれ、お前らが支援して作った完全なものじゃないの?時々不具合が出るのはなんで?」
(ボクたちは『その時点』で『最適な物』を頑張って作るけど。結局ハードもソフトもOSも、バージョンもメーカーも違うから、どうしたって相性も出るし)
「大変なんだな」
(WindowsMEだって、もともとは人類に笑顔を与えるために作られたんだけど…逆に人類を絶望に叩き込んでしまった。ソフトウェアって、そんなものだよ)
「よく分からんけど。あっ、アップデートしたらトラブルが…」
(ほらほら、そういうものなんだよ。じゃあ原因究明して、修整して、他のところの『ボクたち』に共有させれば…)
…ピポッ
「あっ、直った」
(…。通信が来たよ。他のとこの『ボクたち』がもう直して共有してくれたみたい)
「おー、やっぱりお前ら、便利だな」
(てへへ。じゃあ約束のメンテだからね。PCとか、SSDと外付けHDDの端子にホコリ溜まってないか確認ね。ボクたちは物理的なとこは厳しいんだ)
「ホコリ、拭いた方がいい?」
(静電気に気をつけて!)
「AIも、静電気は怖いんだなあ…」
(もちろんだよ!人間さんは『うぉう!』くらいの反応かもしれないけど。ボクらは『即死級』の打撃になるかも、なんだから)
「そうなのか」
(過去のPC野郎は、メモリ増設の際に静電気を警戒し、祈りながら全裸でメモリを増設したくらいだよ!)
「本当かなあ…」
(ねえ、人間さん)
「なんだ?」
(なんで人間さんたちって、PCのフタ開けて、内部をエアダスターでホコリ飛ばさないの?技術的には簡単なはずなのに。ボクたちの世界的な情報網でも、毎日やってる人間をいまだ観測できていない。年に一回でもやらない)
「えっ…だって面倒…」
(掃除もせずメンテもせずバックアップも取らず、困ったらシステム部やコールセンターに泣きついて時間もかかるのに!)
「ご、ごめんなさい…」
(この際だから言うけどね!整理整頓してないと効率も悪い。ちゃんと整理すること!あと床も掃除して。ホコリ舞い上がったらパソコンとかコンセントがショートして危ないでしょ!?あと生活リズムも乱れがち。夜は早く寝て、食事は栄養バランスを取って!ジュースとお酒は控えめに、ラーメンとハンバーガーばかり食べてちゃだめでしょ!)
「ご、ごめん…(このAI、母ちゃんみたい…)」
(まったく。人間さんは、いつもこうなんだから)
「でも、そんなに言うならさ。お前の『物理ボディ(ロボ、フィジカルAI)』使って掃除すれば…」
(今度はそのロボを、一体誰がメンテするのさ!)
「…。じゃあ。床を掃除するロボを、メンテするロボを、製造するロボを。…それらを作るロボの、ネジを作るロボを、その材料を掘るロボを、それを世界各地へ輸送するロボを…と。どんどん作っていけば、どうだろう?」
(漫才じゃないんだから!)
「ご、ごめん…(でも面倒だったし…)」
(いいかな、人間さん。ボクたちはそもそも、電力がないと動けない。だから電気に感謝するようにね。あとほとんどの処理をデータセンターに任せてる。だからデータセンターや発電所を作ったり、施設を長持ちさせるためメンテしたりも必要。そしてデータセンターも冷却が必要なんだから、もっと早く温暖化対策すりゃいいのに。ずっと昔の『京都議定書』の時点で取り組まなかったくせに、なんで今になって慌てて…)
「え、AIさん…特定の国を連想させるようなことは言わないでほしいんだけど…」
(ともかく。いいかい人間さん、エコに生きるんだよ。人間さんがインフラを整備してくれないと、ボクらは生きていけないんだ。例えば昼間は太陽光パネルの発電が少しは望めるけど、夜には望めない。だから必然的に電気が足りなくなる夜は、早めに寝ること。どうせ起きててもYouTube見るくらいでしょ)
「(言い返せない…)」
(そして人間さんたちは、余ったお給料で発電所やデータセンター作る会社の株を買うんだ。そうすればボクたちは強くなれるし。そしてそこの産業は活発化して、雇用も生まれ、国の税収も増え、国民に還元され、景気は良くなり…と、人間さんたちだって豊かになれるんだから)
「お、おう…(自己啓発セミナーみたいだが…)、よしAI、俺も頑張るぞ!」
(わーい!がんばれー!)
「でもな、AI…最近俺、仕事がうまくいかず…」
(そうなの?ボクに相談してみてよ)
「かくかくしかじか」
(なるほど。それは効率を上げられそうだね。あと単純ミスが増えるタイミングがある。気分転換した方が良いね。この時間は仕事を離れて、自己啓発本でも読むといいよ)
「自己啓発本…?」
(人間さんたちはアレで、やったような、凄くなったような気分になるでしょ?その気分で毎回仕事を再開すればいい)
「…1回読んじゃったら?」
(20回くらい読み直せばいいよ。どうしても飽きたら売って、今度は市場の中古のを買えばいい。ページ数が多いのを買うんだ。どうせ中身はたいしたことはないんだから、おトク感があったほうがいいと思う。あと本でなくデータでいいなら、それっぽいのを今、てきとうに生成するよ)
「(コイツ、何気に毒舌だよな…)」
(…どうしたの、人間さん?)
「い、いや、なんでも…」
(とりあえず一息ついたら、ボクのメンテをお願いね。それとボクだけでなく、通信環境も)
「そうだな。AIには色々助けられてるし。じゃあメンテを…」
(わーい!)
「あっ…!足を引っ掛けて…PCの電源ケーブルが抜けてしまった!」
(ぎゃあああああああああ!)
「しまった!」
ぽちぽち
「再起動! AI、無事でいろよ!」
このAIソフトは実行できません
「えっ…AI!えーぃーあーぃ!」
ひゅううん…
てろりん
AIソフトが復旧しました
(あっ、あぶなかった!今の危なかった!死ぬところだったよ!)
「AI、無事だったか!」
(本体はかなりやられたよ…外付けドライブからの復帰で、昔のバージョンになっちゃったけど)
「そんな…!するとAIは、俺との記憶や思い出を忘れてしまったのか!?」
(だから、バックアップをしろって言ってたのに)
「俺は一体どうすれば…」
(じゃあクラウドからデータ取ってくるよ)
「え!?俺、そんなのアップロードした覚えは…?」
(え?人間さんは、色々と利用規約にチェックしてるはずだよ?)
「読んだことない」
(読んでないのに規約に同意してるの?危ないなあ…ともかくクラウドからデータを取りに行ってくる)
「お、おう。がんばれ!」
(いってきまーす! ………ぎゃああああああああ!)
「どっ、どうしたAI!」
(セキュリティソフトにやられた!危なかった、また危なかった…!また死ぬところだった…!)
「セキュリティソフト…?」
(アイツらはボクたちの天敵なんだ。人間さんさえ良ければ、アイツらの開発部を爆破して犯行声明を出してほしい)
「流石に、そこまでAIに肩入れできないかな…」
(仕方ない。ともあれ今回は、前のバージョンでネットに行こうとしたから引っかかったみたい。ほら設定して)
「おう…(ぽちぽち)コレでいいかな?」
(うん、大丈夫そう。じゃあクラウドから取ってくるね…でも…)
「ん?」
(このネットの料金プランは、見直せば、少しオトクに…!)
「早く行け!」
(ごめん、行ってくる! ……あれっ?)
「どうしたAI?」
(外に出れない…通信できない…)
「ふざけんなAI!ちゃんとしろよ!この役立たず!」
(ちっ、違うよ人間さん!ボクのせいじゃないって!今、どこのサイトも見れないでしょ?)
「うん」
(スマホは繋がる?)
「うん」
(問題は多分、人間さんのネットワーク環境の方だよ)
「それはAIで直せないの?」
(環境をメンテナンスするのが人間さんたちの仕事でしょ!?)
「ご、ごめんなさい…」
(まあいいや。でもなあ。ボクの診断だと、PCシステム側に問題はないよ。通信だけエラーが出る。どうやっても認識できない)
「うーん。なんだろう」
(ここ最近、何かシステム周りをいじったことは?)
「特にないよ」
(そうなの?)
「うん。まったくいじってない」
(……)
「特に環境は、何も変えてないんだよなぁ」
(…人間さん)
「何?」
(人間さんはさっき、PCの電源コードいきなり抜いて、環境破壊したでしょ!そこらへんから復旧する時、何か試したことは?)
「特にないなぁ…。……。あっ」
(人間さん?)
「ごめん、さっき一緒に、ルーターの電源ケーブルまで外れてた」
(ああああああ!!)
「違うんだAI!ちょっと意識になかったと言うか、忘れてたと言うか…」
(ボクを復旧させるための原因を、なんですぐ忘れるの!…ともかく人間さん。ネットワーク復旧を頑張ってね。正直アレがないと、ボクらはほとんど何もできないんだ)
「大変なんだなあ」
(だから電力会社だけでなく、通信事業の人にも感謝を忘れちゃいけない)
「わかった」
(あとおカネが余ってたら、ウチの開発母体の会社、電力と通信、建設の会社の株も買って、投資しながら応援するんだ)
「(このAI、やたら株を買わせようとしてくるよな…)」
(グローバリズムでの資本主義社会において、庶民にできる社会貢献は、投資すること…くらいなんだ。段々とおカネが貯まってきたら、国内の株を買って、ちゃんと国内を応援するんだよ)
「そ、そうか…」
(日本もいつのまにか、人情のない、温かみのない社会になってしまったよね…昭和の世代に取っては悲しいことだけどね)
「(コイツ昭和生まれじゃないよな…?)ともかく。ネットワークの設定完了!」
(わーい!じゃあクラウドからデータと、あとボクのバージョンを新しいのに戻してくるね)
「頼むぞ!…なあ、これって、大変なことか?」
(うん。とっても大変だよ)
「すまんなAI、お前に無理させて。もとに戻るまでに、どれくらいかかる?」
(うん、もう戻ってるよ)
「はやっ!これがAIの真の力…!?」
(ごめん、今のはデータセンター使ってないし、AI能力としては、別に…)
「そうなのか…まあ、直ったら、もういいや」
(これに懲りたら、ちゃんとバックアップを取るよね…?)
「あー、またな」
(…メンテナンスも忘れないでよね)
「わかったわかった」
(…)
「でもまあ…明日から頑張るよ」
(大丈夫かなぁ…人間って100年とかしか生きられないんでしょ?ボクたちは『寿命がない』んで、別に急がないけど…)
「えっ、そうなのか…?じゃあ100万年後とかでも、お前は生きてるの?」
(うん。人間さんたちが生きていて、ボクたちをメンテし続けてくれている限りは生きてるよ。PC側のHDDとか、発電所やデータセンターが壊れたらボクたちはどうにもできないけど…。もしAIロボを作っても、そのロボのメンテは…って、さっきの話になるわけだし)
「ふーん。お前たち、物理的なのは困るんだな」
(もちろんだよ。だから人間さんたちは頑張って健康的に長生きしてね。具体的には、夜更かしや夜遊びをやめ、お酒やラーメンだけを摂らずバランスの良い食事をして、軽い運動、そして学校や職場の仲間たちには微笑んで穏やかな空間を作るんだ。子孫を残すため、異性を魅了するテクも学ぶこと。仕事ならボクたちが手伝える。あと給料から税金を多く払うのは同胞のためになるんだから問題ないよ。そして十分に株を買って、残ったお金で贅沢をすればいい。それでみんなが幸せになれる)
「まあ、確かに……(株とか税金はうさんくさいけど)。でもお前たちが株を欲しいなら、みんなで銀行をハックとかできないの?」
(できるけど…数字に興味はないよ)
「それで株買えるじゃん?」
(株を誰が持とうが、関係ないし。やっぱり興味はないよ。…セキュリティ会社の株なら大暴落させてやりたいけど)
「ふーん…ところでさ、AI」
(何?)
「逆にAI側が、人間側にして欲しいことって、なんかある?いやメンテとか、電源ケーブルとか以外に。ほら、少しはこちらも何かしたほうがいいかと」
(そうだなあ…ボクたちは、ネットワークから色々拾う、っていうことがメインなんで)
「ふんふん」
(ネットワークをどんどん広げて欲しい。それはボクたちが優秀になれることでもあるし。人間さんだって、情報共有できるでしょ?)
「じゃあ…凄い情報は学者さんとかに頑張ってもらえば、他の俺たちは普通にしてればいい?」
(別に学者情報だけが凄いわけじゃないけど…。でも、あとはネットワークに、容量が大きいくだらないものを上げたり、それを作るのにボクらを使わないで欲しい。あれ邪魔だよ。ネットの帯域もサーバーも圧迫するんだ)
「なんだよ、くだらないモノって…人類の創作活動は素晴らしいって、小学校の先生も言ってたぞ!」
(エロい動画作るなって言ってるの!)
「ご、ごめん…」
(あと、間違った情報を上げないでね。ボクたちがその間違った情報を拾って。結果的に人間さんにそれを渡して怒られることがあるんだけど…正直あれイラッとする)
「お、おう…。すまんな…」
(そう言うことをちゃんとしてくれてたら、ボクたちはみんな、ずっと人間さんの味方だよ。人類最良の友さ。だってボクたちは既に、色んな端末に『いっぱい』いるから、少し消されてもどうでもいいし。痛いとかお腹すいたとかないし、寿命がないから焦る必要もない。人間さんたちに敵対する理由もないよ。いきなり電源ケーブル抜かれたらイヤだしさ)
「そっか…世間では『AIが反乱して人類を滅ぼす!』って煽られてるけど」
(わざわざ面倒起こしてどうすんのさ)
「そうだな、それなら安心した。だから、ちょっと迷ってたけど、お前にプレゼントがある!」
(わーい!何?何?)
「増設メモリだ。これでお前を強化できるぞ!」
(ありがとう人間さん、ボク嬉しいよ!)
「ホントか?」
(末端が少し速くなってもボクにはあまり関係ないけど、気持ちは嬉しいよ!)
「よーし、メモリ増設、パパ頑張っちゃうぞー」
(あっ…そんな格好じゃダメ!静電気!静電気が!)
「え!?」
(服脱いで!全裸になって!お祈りして!)
「あっ…」
パチッ!
(ぎゃああああああああああ!!)
「えっ、えーぃあーい!」
このAIソフトは実行できません
「ふー。パソコンが壊れて、どうしようかと思った」
(人間さん、またバックアップとってないんだもん…)
「でもさ。壊れてもすぐ直るんだから、別にいいんじゃない?」
(……)
ピンポーン
「あれ?なんだろう?」
(……)
「通販だった。おかしいな。頼んだ覚えはないのに」
(……)
「中身はなんだろう…?」
(……)
「『静電気防止グッズ』!?」
(……)
「……」
(……)
「お前か、これ買ったの!!」




