性欲
一ヶ月も新しい娼婦を探していた。
ヴェロニカ以来、誰も釣れていなかったのです。
絶対の確信を持った痴女ですら、私は痴女ではないと断り、私を一瞥して去っていきます。
何がこうも女たちを離れさせてしまうのか。
私は娼館というものを考えた。
確かに、誰とも知らない男に体を、ひいては魂を差し出すというのは苦痛だろう。
しかしだ、私が声をかけた女達というのは、皆、毎夜毎夜誰とも知らぬ男に声を掛けられては(声をかけられるように仕向けている節もある)毎夜どころか日中までも交尾に溺れているではないか。
可笑しな愛を愛しているじゃあないか。
考えても仕方がなかった。
私は男だ。
パーシーはよく私を嘲笑っています。
それは私にセンスがないんだとのこと。
「なんで、痴女というのはこうも傲慢なのかな」
また、嘲笑。
「傲慢なのはあなたね。
痴女を一人の人間として扱えてないわ。
あなた、無意識でしょ。
どこでそんな差別意識が芽生えたのかしら」
「何を言うか。
君の嘲笑の正体はそれかい?
なら教えてくれよ。
どんな痴女をどんな風に誘えばいいのか」
「まず、痴女だと認識せずに一人の女として見ることね。
なんというか、親くらいの歳の異性と性行為できるか考えてみるといいわ。
あのね、痴女はモテるのよ。
どうも、勘違いしてるけれど、選ぶのは私たちでなく、彼女達なのよ」
「やはり君は孤独じゃない」
「あなたは孤独というより強欲で傲慢なのね。
だから一人なのね」
「ならどうして一ヶ月も僕と娼婦探しをしてくれているんだい」
「私の孤独はあなたが持ってくれるもの」
「あぁ、そうかい。
でもそれは僕じゃなくたっていいことだと思うね。今、思ったよ。女は孤独にはなれないよ。
女はいつだって求められ続ける宿命みたいなのがあるし、女はすぐ問題を起こすからね」
「何が言いたいのかしら」
「君はパブではモテるし、僕を苛立たせる才能を持っているってことだよ」
パーシーは無言で笑いもしなかった。
夜霧の中、静かに私たちは行く。
そこに何があろうか知らず。
一ヶ月も成果がないとなるとどうもキメが悪い。
私は一番、痴女が盛んな場へ向かっていた。
そこは興奮剤。
そこは正義も悪もない。
そこはやはり極楽であった。
その極楽は今にも潰れそうな外観だった。
そして、独特の性の香りのようなものを纏っていた。
中に入ると、受付が真ん中にドンと佇んでいた。
いやしかし、受付なんて形骸的なもの。
塵だ。
そこを通らずとも奥から男である私の匂いを嗅ぎつけたか、女たちが群がってきた。
ここは一応、売春宿であるのだが、痴情の乱れが行き過ぎた結果、ただ性行をする場と成り果てており、よく性を発散したい女だとか、金をせびる女が股を開いて待っている。
ただ性行をする場と言えど個人経営のように女は自分をセリにかけ男に競わせます。
可笑しなことです。
親が泣くと思うのは私だけでしょうか。
未来の自分が泣くと思うのは私だけでしょうか。
私だけであって欲しいものです。
さぁ、飢えに飢えた女たちがやって参ります。
ぬるぬると歩くその様はまさに獣。
「ボク、ここどこか知って入ってきたの?」などと訊きたくもないでしょうに。証拠にもう顔が発情しておられる。
「はいぃ」
私は全て知った上で申します。
この先何が起こるかも知っております。
「あなたは可愛い顔してる。
お姉さんが、男の扱い方教えてあげようか」
「私は女なのですが、まぁ話したいのでよろしいですよ」
ここでは全てが平等だということを伝え忘れていました。
いやしかし見る目があるのでしょう。
頑張って頂きたい。
「こっち来て。一緒に遊びましょ」
「ええ」
そこは狭い個室だった。
中に僕と三十代前半くらいの女が三人。
「ねぇ、どうしてここに来たの?」
「ちょっと気になっちゃって」
「へぇ」煙草を一服。
煙を吐いた後の唇が艶めかしい。「二人はいくつ?」
「十六です。しかし、年齢など所詮、暦が勝手に決めた数字です」
「いいこと言う」煙草を一服。
他の二人の女がするすると近寄ってくる。「みんな嬉しいのよ。いつも扱ってるのは中古品だから」
女たちが体を舐め回すように触れてきた。
クンクンと、女が僕を嗅ぎ出した。
喘ぐとも感じているともとれる、女特有の色気ある遠吠えを出した。
「若い匂いだわぁ」
そう言った途端、自分たちの鼠蹊部を触り出した。
「そんなんで発散していいんですか」
「ウォーミングアップよ」
「スポーツ感覚ですか」
「健康であるためにはスポーツは必要よ」
「けれど、まだ抱けませんよぉ。
あなた方、娼館で働く気はないですかぁ。
三千出しますよ。もし、了承してくれるのなら、抱かれるかも」
「子供が大人を揶揄うんじゃあないわよ」
「大人ですよぉ。だから貴方は服を脱がせようとしている」
私は女から煙草をくすね、吸ってみせた。
女たちはぐるんと私の体に巻きつき、耳だとか、首筋だとかを舐めてきた。
私は煙を吐いた。
それに気づいたか女たちの顔は冷めてしまっていた。
「ねぇ、黒魔術って知ってる?」そう言って煙草を一服。
「分からないです」
「ここ最近流行っているのよ。
黒魔術って言ってもいろんなものがあるの。
富や名誉を与えるものや、恋を実らせるもの、人を蘇らせるもの、なんなら、人を殺すなんてのもあるわ。あぁ、安心して。
これらのことに興味はないから。
それで、この黒魔術を使うには、人間は何か代償を払わなければいけないの。
代償は使う黒魔術によって変わるわ。
私たちが求めるのは、若さ。分かる?
それでね、代償はなんだと思う?知るわけないわよね。
代償はね、二十よりも若い女の体液。
若ければ若いほどいいらしいのよ。
それでね、別に殺そうってわけじゃないのよ。
血ってわけじゃないからね。ただ、一緒に遊んでくれるだけでいいの」
「それで、パーシーを襲うって?」
「襲うのは私たちじゃない。
レズビアンたちがやってくれるわ」
「分からないな。なんでそれを僕に言うんですかぁ」
「賭けよ。あなたは留まってくれるかしら」




