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「本当にあった怖い話」シリーズ

嗤うモノ

作者: 詩月 七夜
掲載日:2026/07/15

 平成16年12月に経験した話


 当時、ある職に就いていて、5階建ての建物に職場があった。

 業務は慣れないながらも手探りで務め、一年が過ぎようとしていた頃である。

 年の瀬も近いその日、やむを得ず残業をしていて、もうすぐ深夜になろうという時だった。

 その建物は、守衛さんが夜に見回りをしてくれているので安心だったが、23時にはエレベーターも止まり、廊下も消灯されてしまい真っ暗。

 そのため、時間を過ぎると真っ暗な通路と階段を通り、1階まで徒歩で降りることになる。

 事務室は4階にあったので、その点だけが難儀する点だった。

 ようやく仕事に一区切りがつき、いい加減に帰宅しようと、事務室を消灯。

 真っ暗で一人きりの心細さもあったので、私はわざと明るい雰囲気にしようと口笛を吹きながら、指を「パチンパチン」と鳴らしながら、歩いていた。

 そうして階段を下り、2階に差し掛かった時である。

 突然、右耳のすぐそばで「ふふっ」と女の声。

 その途端、全身が総毛立ち、足が止まる。

 当然、辺りには誰もいない。

 私一人きりだ。

 疲れていてし、空耳だろう…と思い直し、再び階段降りていく。

 ただ、もう口笛も指を鳴らすこともせず、急かされるように降りた。

 やがて、1階の守衛室前に続く扉が見える。

 ホッとして、扉を抜けるその時、

「ほほ」とまた女の声。

 もう後ろも見ずに、扉を叩きつけるように閉じて、守衛室に駆け込んだ。

 一刻もこの建物から離れたかった。


 後日。

 建物の2階にある別の事務室で、昔、発作で亡くなった人がいたことを知った。

 以来、守衛さん達も時折、声の主に笑われたことがあるらしい。


 世の中には、ブラックな業務時間を強いる会社はまだまだあると思う。

 やむなく残業を強いられる人も多いだろう。

 でも…私はもう二度とやりたくない。


 今も思い出せるあの声は、本当に怖かった。

 それこそ笑えない恐怖体験である。

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例年、開催される「夏のホラー企画」で紹介した過去の作品を「本当にあった怖い話」シリーズとしてまとめております

本作を気に入っていただけたなら、本ページ最上部の文字リンクからジャンプできますのでお楽しみください

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