第44話 遂に魔法が使える! 条件付きだけど
『驚いたか? まぁ、仕方がないな。別れてから左程時が経っておらんからな』
「確かに。それで僕の前に来たということは」
『察しの通り、汝に魔法を授ける』
よしっ! これで魔法を使える事が出来る。
「それで、何か代償はあるのですか?」
柄にもなく、鼻息荒くバズヴに詰め寄る。
『そう慌てるな。今言うから、少し落ち着け』
おっと、少し興奮したようだ。
深呼吸して落ち着こう。
「ふぅ~、失礼しました」
『うむ。我は寛容ゆえ許す。だが、代償が必要だ』
「代償か」
思わず、生唾を飲み込んだ。
『代償は…………』
溜めないでほしいな。それだけ代償が重いということだろうか?
僕一人で代償を払えるだろうか。
何だか、不安になってきた。
『代償は、我を楽しませろ』
「楽しませる?」
『左様。笑わせるでもよい、美味い物を食べさせるでも良い、劇を見せるのでもよい。何をしてもよい。兎に角、我を楽しませろ』
楽しませるか。範囲が広すぎて難しいな。
『ただし、条件がある。常に我が汝の傍にいる事だ』
つまり、四六時中一緒に居るという事だろうか?
「あの、聞いてもいい?」
『許可する』
「つまり一緒に行動するととっていいのかな?」
『そう解釈して構わん』
マジでっ、二十四時間常にこの烏が僕の傍にいるの?
何か、昔のアニメでそんなキャラいたな。
でも、あれは巫女さんだったかな?
「今の条件に従わないと駄目なんですよね」
『この条件に従えないなら、魔法の契約は無しだ』
う~ん、ちょっと困ったな。
でも、烏が僕の傍にいるのもちょっとな。
(まぁ、取って喰われる訳でもないから大丈夫か)
僕はそう思い、この条件を飲むことにした。
「分かりました。その条件を呑みます」
『では、跪くのだ』
僕は言われた通りに、その場で跪いた。
バズヴは飛んで、空中で静止した。
空中なのに、その場に足場があるかのように進み、僕の額を嘴で突く。
その瞬間、頭の中に文字ではない何かが幾つも流れてくる。
見た事もない文字だが、でもどこかで見た事がある気がする。
(英語じゃないし、ラテン語でもない。ギリシャ文字かな? 駄目だ。全然分からない)
そう考えていたら、いつの間にか頭の中に流れて来るものが止まった。
『これで魔法契約は完了した。汝はもう魔法を使えるぞ』
そう言われて、頭の中から変な声が聞こえてきた。
『風魔法を習得しました』
『土魔法を習得しました』
『水魔法を習得しました』
『炎魔法を習得しました』
『光魔法を習得しました』
『闇魔法を習得しました』
沢山の魔法を習得したようだ。
僕はそんなに魔法を習得して何ともないのか気になり、手を握ったり開いたりした。
それで、どこも異常がないと分かった。
「これで魔法を使えるのか。何か、あっけないような」
『お主は習得したら “こ、これが魔法なのかっっ、素晴らしい。世界は力で溢れている!” とか言う性質か?』
「何でそんな恥ずかしい事を言わないといけないのですかっ⁉」
『前に契約した者が、そんな事を言っておったからな』
その人はこの世界の人だろうか?
それとも僕達と同じ異世界から来た人だろうか?
どっちにしろ少々痛い人のようだ。
「契約して思ったけど、魔法名とか詠唱とかないんだ」
『魔法名? 詠唱だと? そんなものは皆個別に作る』
「えっ⁉ 個別に作る!」
『同じ威力を持っている魔法でも、扱う者によって詠唱も魔法名も違うのだ』
つまり、僕が『ファイヤーボール』という魔法を唱えても、別の人は同じ魔法を唱えて『ファイヤーボム』になるかもしれないという事か。
(統一感無さすぎだろう。でも、これはこれでいいのか)
魔法名なんて、別に個人で好きにつければいいものだ。
そういうのが、何か男心をくすぐるのだろう。
(僕も個別に魔法名と詠唱を作って唱えられるのか。じゃあ、子供の頃に作った魔法も使えるっ⁉)
まだ少年といえる時に作った魔法が、今この時使えるなんて感無量だ。
子供の頃を思い出すな。必死に魔法の詠唱を考えて、それをマイちゃんの前で言ったりしたものだ。
あの時は恥ずかしい黒歴史だったけど、この世界ではその魔法も使えるという事だ。
僕は俄然やる気が出てきた。
『代償の件、ゆめゆめ忘れるでないぞ』
も、勿論だ。




