カドモスの本音
ああ、怖かった。
わたし、カドモス・フォン・フィルマーは先程の少年に恐怖していた。
この国の成人男性に比べても、わたしは大きい方なのだが、そのわたしよりも大きい男が居るとは。
しかも、何かとんでもない威圧感を感じて、思わず敬礼してしまいそうだった。
わたしも「残るように」と言われている理由は詳しく知らないと言うと、向こうも納得してくれたようだ。
名前は聞いていなかったが、一軍の将軍と言われても納得が出来る貫禄があったな。
ふぅ、気を取り直すために深呼吸しよう。
息も落ち着いたし、さて、適性があった人達を連れて行くとしよう。
「では、皆さん。参りましょう」
わたし達は異世界からの客人たちを連れて、契約の間に向かう。
この部屋は魔法と契約する時に使う部屋だ。
魔法と契約するというのは、儀式をすればその人に見合った魔法を使う事が出来る
この世界には、儀式を行うか、精霊又は妖精と契約して魔法を使う事が出来る。
神と契約する事もあるが、大抵神職に就く者が契約している
我が国の魔法師団でも、神と契約する者も居れば、精霊と契約する者も居る。
さて、この者達はどうなるのであろうな。
(――一番注目すべきは、彼か)
わたしは後ろを振り返り、その彼を見る。
名前は確か、イノータとか言っていたな。
我が師団の前師団長が彼を大層買っていた。
話を聞いた限りでは、アスクレイ侯爵が気に入った人物のようだ。
今でこそ閑職だが、前は魔法師団団長であった方だ。
前回の戦争の責任を取り辞任されたが、その実力は我が国でも一~二を争う力を持っている。
剣や魔法も練達に使えて、その上指揮官としても一流だ。その他にも芸術や音曲にも通じるという多才な方だが、知識欲にどん欲な所があるからな。
そんな方に気に入られるとは、かわいそ……げふんげふん、余程の才能があるのだろう。
まぁ、悪い方ではないので虐める事はしないだろう。多分。
契約の間へ向かう廊下は、王宮の中でも特に静謐な空気が漂っている。
魔法という神秘を扱う場所ゆえか、歩くたびに靴音がやけに響く。
わたしは先頭を歩きながら、後ろの異世界人たちをちらりと見る。
皆、緊張しているようだ。
この国でも、魔法契約できる者は、限られているからな。
(……あの者は、何故あんなに不安そうなのだ?)
イノータという少年は、緊張しているというより、どこか不安げな顔をしている。
魔法契約に対する不安というより、
まるで「また何か面倒事に巻き込まれるのではないか」という顔だ。
まぁ、異世界に飛ばされたのだ。面倒に巻き込まれたと思うのも無理ないか。
そうして歩いていると、契約の間の重厚な扉が見えてきた。
「皆さん、ここが契約の間です」
わたしがそう言うと、異世界人たちは息を呑んだ。
扉がゆっくりと開く。




