真田舞華の心情
「ぶぅ、今日も買い物に付き合ってもらえなかった……」
学校からの帰り道、あたしはぶーたれながら家へと帰る。
ノッ君を買い物に付き合わせようとしたら、邪魔者二人のせいで出来なくなった。
SHRが終わったらまた声を掛けようと思っていたのに、肝心の本人が風のようにいなくなってしまった。
話しかける暇もないくらいの速さだ。昔から足が速いけど、最近は特に速くなった気がする。
あたしも身体を動かすのは好きな方なのだが、今でも駆けっこで勝ったことがない。
実際、体育の体力テストでグラウンド二十周しても、最後までペースを崩すことなく走りきる体力がある。
さらに勉強も得意で、中学の頃には全国模試でも五位以内に入るほどの学力がある。人に教えるのも得意なので、あたしも分からないところは全部ノッ君に訊いている。ノッ君は嫌な顔一つせず丁寧に教えてくれる。
「ああ〜、今日は買い物が終わったら映画に誘おうと思ったのに」
さっきまで、最近人気がある警官と女子高生の夫婦恋愛映画のチケットを二枚持っていた。
もっとも、さっき恋人がいる友人に渡したので、もうない。
「ちぇ、これで少しは関係が進むと思ったのに……はぁ」
正直、そろそろ幼馴染から一歩進んでもいいと思っている。
なのに、それを邪魔する奴が二人もいるので進展しない。
これは本人たちに聞いていないが、恐らく二人もノッ君のことが好きなのだろう。
なんでそう思ったのかというと、女の勘だ。
まぁ、同じ人を好きになったのだから、そう感じたのかもしれない。
「いい加減、気付いてほしいなぁ。あたしがノッ君のこと好きなこと・・・・・・」
「ああ〜、暇だな。暇だし、ノッ君の部屋に行くか」
ドスドスと足音を立てながらリビングに向かい、菓子置きにある菓子の袋を手に取る。
今日は家には誰もいないので、どれだけ音を立てても怒る人はいない。
そして、自分の家に鍵を掛けた後、隣にあるノッ君の家に向かい玄関の扉を開けた。
「こんにちわ〜、遊びに来ました〜」
あたしがそう言って少しすると、ノッ君のお母さんが笑顔で出迎えてくれた。
「あらあら、マイちゃん。遊びに来てくれてありがとう。馬鹿息子はまだ帰ってないけど、部屋に上がっていってちょうだい」
あたしの家とノッ君の家は隣同士だから、ノッ君のお母さんとは長い付き合いで、顔パスで家に入れてくれる。
そして部屋に上がると、なんか色々な本が乱雑に置かれていた。
漫画だけではなく、図鑑とか何かの専門書や、料理が好きだからか料理本なども置かれていた。
「前はこの本を読んだから、続きは・・・」
あたしは読んだことがある漫画を手に取り、ベッドに寝そべり、持ってきた菓子の袋を開けて食べながら漫画を読んだ。
そのまま暫く漫画を読んでいると、玄関の扉が開く音が聞こえた。
同時にノッ君がお母さんと話していた。
すると、慌てて階段を駆け上がっていく音が聞こえて、程なく部屋の扉が開けられた。
「あっ、おかえり〜」
「おかえり〜じゃないから。マイちゃん、頼むから勝手に部屋に入らないでよっ」
「良いじゃん。幼馴染なんだから」
ノッ君は怒っているが、あたしは気にすることなく漫画を読みながらお菓子を食べていた。
そんなあたしの態度を見て、溜息を吐いた後、椅子に腰を下ろした。
そして、あたしに付き合うように適当な漫画を手に取り読み出した。
「・・・・・・ねぇ、ノッ君」
「なに?」
「エロ本どこにあるの?」
「ぶふっ⁉」
あたしの問いに、ノッ君は噴き出した。
「な、ななな、なにを言ってるの?」
「だって、前に月と部屋の中探し回ったら、エロ本見つからなかったんだもん。どこに隠しているの?」
「月と一緒に何をしているの⁉ というか、そんなの教えるわけないだろう!」
「でも、男の子なら一本や二本あるのは普通だっていうし」
「いくら幼馴染でも、そんなことは教えませんっ」
ノッ君がそう言って顔をプイと背けた。
ふむ。その反応を見るに、持ってないわけではないと見た。
今度、月と一緒にお母さんの許可をもらって、天井裏でも探そうかな。




