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転移したら賢者、転生して魔王の息子になりました。  作者: 雪国竜
第2章

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閑話 ヘルミーネの心境

 可愛い。

 初めてリウイを見た時、そうとしか思えなかった。

 白雪のような肌。

 蒼銀色の髪。

 額から覗く小さな赤い角。

 魔人族の王の末子として生まれた、わたしの弟だ。

 正直なところ、父上とリウイの母親との間に生まれた子には見えなかった。

 母親は「あたしの小さい頃にそっくり」と言っていたが、わたしには髪の色くらいしか似ていないように思える。

 できれば性格は二人に似ないでほしい。

 本気でそう願っていた。

 生まれて間もない頃、一度顔を見に来たことがある。

 だが、リウイはわたしを見るなり大泣きした。

 あの時は本当に焦った。

 抱き上げようとしたり、声を掛けたり、わたしなりにあやそうとしたのだが、全く泣き止まない。

 結局、ミリアとフェルがやってきて、ようやく泣き止んでくれた。

 どうすればいいのか分からなくなったわたしは、長女のロゼッティータ姉さんに相談した。

『泣かれるのなら、泣かれなくなるまで顔を見せればよいのじゃ』

 そう助言された。

 だから、わたしは毎日リウイの部屋へ通うことにした。

 最初のうちは相変わらず泣かれていた。

 だが、毎日顔を合わせているうちに慣れてくれたのか、次第に泣かなくなった。

 そして今では。

 わたしの顔を見ると笑顔を向けてくれる。

 その笑顔が好きだった。

 だから訓練や仕事の合間を縫って、こうして顔を見に来ている。

 今日も訓練の休憩時間を利用して部屋へやって来た。

 揺り籠の中を覗き込む。

 すると、リウイはすぐにこちらへ気付いた。

 そして嬉しそうに笑った。

 その笑顔を見るたびに胸の奥が温かくなる。

 ロゼ姉さんの助言は正しかった。

 感謝しなければならないだろう。

 一通り顔を眺めた後、わたしは人差し指を伸ばした。

 本当は触りたい。

 抱き上げてみたい。

 頭も撫でたい。

 だが、赤ん坊は弱い。

 加減を間違えれば傷付けてしまうかもしれない。

 だから、軽く触れるだけで我慢していた。

 指先がリウイの腕に触れる。

 柔らかい。

 あまりにも柔らかくて、思わず指を引っ込めてしまう。

 それなのに。

 また触れたくなる。

 だからもう一度。

 そっと触れる。

 わたしは部屋へ来るたび、こんなことを繰り返していた。

 リウイは嫌がる様子もなく、いつも不思議そうな顔をしている。

 そんな時だった。

 リウイが小さな腕を持ち上げた。

 何をするつもりなのだろう。

 そう思いながら指を伸ばしていると、

 ちょん。

 互いの人差し指が触れ合った。

 一瞬、思考が止まる。

「きゃはっ」

 リウイは楽しそうに笑った。

 嬉しそうに。

 無邪気に。

 その姿があまりにも可愛くて、思わず頬が緩んでしまう。

 たぶん、今のわたしは笑っている。

 きっと笑顔になっているはずだ。

「将軍。そろそろ訓練のお時間です」

 その時、副官の声がドア越しに聞こえてきた。

 もうそんな時間か。

 もっと見ていたかったが、仕事を放り出すわけにもいかない。

 わたしは最後にもう一度だけリウイを見る。

 リウイは笑っていた。

 それに、気のせいかもしれないが、こちらへ向かって手を振っているようにも見えた。

 いや、さすがに気のせいだろう。

 まだ生まれて間もない赤ん坊だ。

 そんな器用な真似ができるはずがない。

 そう自分に言い聞かせる。

 それでも少しだけ嬉しかった。

 わたしは名残を振り切り、部屋を後にする。

 さて、今日の訓練も頑張るとしよう。

 次にリウイの笑顔を見るために。

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