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監禁中の僕が朝起きたら見張りの男と入れ替わっていたんだが

作者: 斉藤寅蔵

 しいな ここみ様主催『朝起きたら……企画』参加のサスペンスSFです。

 朝起きたらそこは病室のような部屋だった。

 見知らぬ部屋、と言いたいとこだがこの部屋には見覚えがある。

 昔こんな部屋に監禁されていたような……

 ん!?監禁されていた!?

 まさかと思いドアを開けようとするが鍵が掛かっていて開かない。

 何かないかと室内を見回すと洗面台の鏡が目に入る。

 そこに映っていたのは


「だ、誰だ!?え?僕!?」


 そこには見知らぬ男の姿をした僕が映っていた。

 いや、この男には見覚えがある。

 

「見張りの男……」


 そうだ。僕がこの部屋に監禁されていたときの見張りの男だ。

 いつも監視窓から僕を見張っていた。


「中身が入れ替わったってことなのか……?」


 まだ若い僕がこんな爺さんと言っていい男と?

 冗談じゃない。

 どこの神様の悪戯か知らないが残酷すぎるだろう。

 

「あれ?でもそうだとしたらなんで僕は監禁されているんだ?」


 ここに僕を監禁している組織も入れ替わりに気付いてるってことか?

 というかこの入れ替わりは神様の悪戯なんかじゃなくて人為的なもの?


 こう考えてみたらどうだろう。

 この身体の男は只の見張りなんかじゃなくて金持ちの偉いさんかなにかだった。

 年老いたその男は、金の力と何らかの医療技術とで僕と入れ替わった。


「もしかして脳移植とか!?」


 だが、鏡で見ても頭に手術跡など見えないし、頭のどこかが痛むということもない。

 そもそも脳移植だったら僕の脳とこの男の身体は用済みで処分されてるだろう。


「脳移植じゃないがなんらかの方法で入れ替わった……魂か何かってことか?」


 霊能力で魂を入れ替えたとかならむしろ脳移植より戻せる可能性があるのではないか。

 そんな希望にでも縋ってないと発狂しそうだ。

 ともかく脱出する方法はないかと改めて部屋を見回して気付く。


「あれ?監視窓が無い?」


 昔、いつもこの男が顔を覗かせていた監視窓が無い。あれはこの部屋じゃなかったのか?

 昔……昔っていつのことだ?

 僕が混乱していると部屋のドアがノックされる音が響き僕の名前を呼ぶ声がした。


他村(たむら)さーん、お目覚めされてますかー?」


 ◇◆◇


「先生、新薬の臨床試験の経過はいかがです?」

「順調だよ。この認知症治療新薬は素晴らしいね。投薬した患者には劇的と言っていいくらいの症状の改善が見られたよ」

「それほどなんですか?」

「ああ。何しろ投薬当日まで、鏡を見ても自分の姿が映っていると理解できずに『知らない男が監視窓から見張っている!』と言っていた老人が、投薬翌日には自分の姿が鏡に映っているいうことを理解できるほど回復したからね」

「それは確かに劇的な改善ですね」

「まあ、前日まで自分を若者だと思い込んでいたんで、現在の自分の姿を見て多少の意識の混乱はあるようだがね。じきに落ち着くだろう」


 ◇◆◇


 僕がこの男の姿で目覚めてから一週間が過ぎた。

 毎日部屋訪れる医者も看護師もこちらの質問をはぐらかし、訳の分からないことを言うばかりだ。

 掃除や食事の配膳係たちも口が固い。

 これ以上は無駄に時間が過ぎるだけだ。

 今日、医者が問診でいつもの注射を僕に打とうとしたらそれを奪って医者を人質にとって逃げよう。

 奴らは油断してるからそのくらいできるはずだ……


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― 新着の感想 ―
二重三重に怖いですね……。 この主人公の記憶が一体どこまで正しいのか……。 医者の言っていることが真実なのかも分からず、めちゃ怖いです。 (。ŏ﹏ŏ)
怖いッス……
 これは酷い。(笑)  コンプライアンスを考えると、笑ってはいけないと解ってはいるんですけど、それでもこの皮肉には笑ってしまいました。  世間は認知症の人間を馬鹿扱いしますけど、本人はあれでも結構物事…
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