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三華繚乱  作者: 南優華
第二十四章
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第二十四章拾参 焰の嘲笑

 曹華の槍がわずかに遅れた。その一瞬を朱烈は逃さない。

 炎槍が唸る。月穿が受ける。

 火花。衝撃。

 踏み込み。再び撃ち合う。

 だが。

 徐々に押されている。

 朱烈の攻撃が鋭い。

 速い。

 重い。

 視界の端で、何かが斃れるのが見えた。

 碧蘭。

 その姿だった。

(……碧蘭隊長……)

 胸が冷える。

 だが、戦いは止まらない。

 さらに――白玲。

 白玲も、斃れている。

(……っ……白玲……)

 焦りを抑え込む。

 だが。

 動揺は槍に出る。

 ほんの僅かな狂い。

 朱烈の口元が歪む。

「……くく」

 獰猛な笑み。

 炎槍が閃く。

 曹華の槍が弾かれる。

 月穿が空を切る。

 体勢が崩れる。

 胴ががら空き。


 次の瞬間。

 朱烈の脚が唸った。

 回し蹴り。

 腹部に直撃。

「……!!」

 衝撃。

「……がっ……はっ……!」

 曹華の身体が吹き飛ぶ。

 地面を跳ねる。

 転がる。

 土煙。

 ようやく止まった。

 紫叡が嘶く。

 駆け寄ろうとする。

 だが。

 焰魄が立ちはだかる。

 炎の馬が低く唸る。

 主を守る獣のように。


 朱烈は歩く。

 悠然と。

 倒れた曹華へ。

 曹華は咳き込む。

「……げほっ……がっ……」

 呼吸が乱れる。

 その時。

「立て」

 朱烈の声。

「…曹華」

 次の瞬間、曹華の身体が持ち上がった。

 首を掴まれている。

 だが。

 朱烈ではない。

 炎。

 炎で形作られた兵士。

 巨体。

 朱烈よりも大きい。

 その炎の腕が、曹華を宙吊りにしていた。


 朱烈は腕を組む。

 興味深そうに曹華を見上げる。

「……なあ、曹華」

 声音は穏やかだった。

「確かにお前は強くなった」

 朱烈は笑う。

「金城での覚醒、この戦場での成長。……見事だ」

 曹華を認める言葉。

 だが。

 その目は冷たい。

「だがな、」

 一歩、近づく。

「曹華」

 炎が揺れる。

「まだ、それだけなのだ」

 静かに言い切る。

「お前の強さは、」

 曹華の胸に突き刺さる。

「お前は、まだ、」

 一拍。

「…将の器ではない」

 そして。

 はっきりと言った。

「……お前は弱い」


 曹華の胸に、悔しさが込み上げる。

 弱さの自覚はある。

 自分が最強などと、思ったことはない。

 だが。

 肝心な時に。

 守れない。

 碧蘭。

 白玲。

 胸の奥が締め付けられる。


 その時。

 記憶が蘇る。

 村。

 炎。

 惨劇。

 逃げ惑う人々。

 そして――

 追い詰められた川岸。

 牙們の姿。

 あの時。

 自分は殺される寸前だった。


 朱烈が、再び口を開く。

「安心しろ」

 笑う。

「殺しはしない」

 炎槍を肩に担ぐ。

「お前は黒龍宗のために、その柏林の血を捧げればいい」

 指先で曹華を示す。

「お前が捕らえられれば、姉も弟も、いずれ捕まる」

 唇が歪む。

「姉弟仲良く血を捧げればいいのさ」

 そして。

 その言葉。

「……“龍脈の器”としてな」

 曹華の心臓が強く跳ねる。

 朱烈が炎槍を構える。

「それまでは」

 嗤う。

「気を失ってもらうか」


 その瞬間。

 空気が裂けた。

 ――斬。

 真空の刃。

 見えない斬撃。

 朱烈が反応する。

 咄嗟に跳ぶ。

 炎の兵士が切り裂かれた。

 一刀両断。

 炎が霧散する。


 曹華の身体が落ちる。

 地面。

「……げほっ……ごほっ……」

 息を整える。

「……いったい…なにが……?」

 朱烈が笑った。

 楽しそうに。

「……これはこれは」

 曹華の視界の先。

 そこに立っていた人物を見て。

 目を見開く。

「……!!??」

 声が震える。

「……天鳳将軍……!?」

 なぜ、なぜここに。

 その答えは、風のように立つ男の背中にあった。

読んでいただきありがとうございます。

作品、続きに興味を持っていただけたら、★☆評価をお願い致します。よろしくお願いします。

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