第二十四章拾壱 止める者、砕ける槍
礫を受け、碧蘭の体勢が崩れる。
膝が地に落ちた。立てない。肺が焼ける。
玄鉄の影が迫る。岩が歩くような重い足取り、その一歩一歩が、戦場を沈めていく。
麗月が歯を食いしばった。
「……くそっ」
気功を練る。
槍を握る。
踏み込む。
「――止まれ!」
槍が走る。
一直線。
玄鉄へ。
だが、玄鉄は静かに向き直った。
左腕の岩盾が動く。
槍を受ける。
弾く。
麗月は連撃する。
突き。
返し。
薙ぎ。
しかし玄鉄は崩れない。
そして、拳、衝撃。
麗月の身体が吹き飛んだ。
地面を転がる。
息が詰まる。
(……万全なら……)
麗月の胸に悔恨が刺さる。
朱烈との戦闘。
消耗。
血。
いまの自分では、止められない。
将でありながら、護られる側に回っている。
その事実が、胸を焼いた。
白玲が動く。
「……麗月将軍!」
剣を構える。
痛む脇腹を無視し走る。
玄鉄へ。
玄鉄が拳を構える。
振り抜く。
空気が爆ぜる。
風圧。
白玲の身体が弾き飛ばされた。
地面を転がる、息が抜ける。
それでも。
白玲は歯を食いしばる。
まだ、剣は手にある。
その間に、碧蘭が立ち上がった。
脚が震える。
だが、槍を握る。
玄鉄へ向き直る。
視界の端。
白玲が起き上がる。
麗月将軍も、立とうとしている。
碧蘭の胸が静かに決まる。
親衛隊隊長として、将を守る者として、選ぶべき道は一つ。
碧蘭が叫んだ。
「白玲!」
声が戦場に響く。
「麗月将軍を連れて下がれ!」
一拍。
「私が止める!」
白玲の目が揺れる。
理解する。
これは命令だ。
そして。
覚悟だ。
「……っ!」
白玲は身体を引きずるように動かした。
麗月の元へ走る。
碧蘭は槍を構える。
静かに玄鉄を見据える。
決死の覚悟。
玄鉄は歩みを止めた。
その姿を見ている。
わずかに目を細める。
そして一言。
「……来い」
碧蘭が駆けた。
地を蹴る。
全てを込める。
槍が閃く。
一閃。
玄鉄へ。
玄鉄の盾が受ける。
衝突。
碧蘭は押し込む。
さらに力を込める。
岩盾が軋む。
ひび、砕け、岩が割れた。
玄鉄がわずかに驚いた。
「……見事だ」
短く呟く。
だが。次の瞬間。
玄鉄の拳が構えられた。
正拳突き。
碧蘭は槍を横に構える。
受ける。
衝突。
槍が、折れた。
砕ける音。
次の瞬間、
拳の衝撃が碧蘭の身体へ叩き込まれる。
空気が爆ぜた。
絶望の瞬間だった。
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