第二十四章拾 戦場へ向かう将
駐屯地の麓――蒼龍国軍の本陣。
巌峻と連珂は、戦場の様子を睨みながら指示を飛ばしていた。炎柱が空を染めている。戦場は混乱の極みにあった。
その時だった。駐屯地から二騎が駆け下りてくるのが見えた。緊急の伝令か――そう思った瞬間。
巌峻の目が見開かれる。
「……まさか」
連珂も気付いた。
「……あれは……」
二騎は砂塵を巻き上げて本陣へ滑り込む。
馬を止めた二人の顔を見た瞬間、巌峻と連珂は息を呑んだ。
蒼龍国天鳳筆頭将軍天鳳。そして牙們将軍。
本来なら首都にいるはずの二人だった。
巌峻と連珂はすぐに駆け寄り、敬礼する。
「天鳳筆頭将軍、牙們将軍。お疲れ様です」
「援軍でお二人が来られるとは……」
天鳳は短く頷いた。
「……私と牙們将軍は戦場へ赴く」
視線はすでに戦場中央を向いている。
「黒龍宗の二人を止める」
牙們が続けた。
「……麗月将軍を下がらせる」
一拍。
「その後、第三軍団と第四軍団は駐屯地まで後退させろ」
巌峻と連珂は力強く答えた。
「かしこまりました!」
「ご武運を!」
天鳳と牙們はすぐに馬首を返す。
戦場へ。
炎の中心へ。
一方。
戦場中央。
碧蘭と玄鉄が対峙していた。
碧蘭が踏み込む。
「はぁっ!」
槍が閃く。
突き。
薙ぎ。
返し。
連撃。
だが――
玄鉄は動かない。
受ける。
弾く。
止める。
槍の軌道をすべて読み切っている。
麗月は血を吐きながら起き上がり、その戦いを見ていた。
碧蘭は弱くない。
親衛隊の隊長、一隊を率いる武も、胆力も持っている。
だが。
(……分が悪い)
相手は四冥将。地冥将・玄鉄。
碧蘭の槍が再び閃く。
玄鉄を突く、玄鉄が受ける。
お互いに間合いが開く。
「……はあ……はあ……」
碧蘭の呼吸が荒くなる。
玄鉄はまったく乱れていない。
静かに言った。
「……なかなかの実力だ」
感情はない。
ただ事実として。
「決して弱くはないな」
その言葉は評価だった。
だが同時に、宣告でもある。
少し離れた場所。
白玲がようやく身体を起こしていた。
「……うぐっ……」
脇腹が痛む。
肋骨が折れている。
呼吸のたびに痛みが走る。
それでも立つ。
視界の先では碧蘭が戦っている。
麗月将軍も、まだ立っている。
(……私も……)
剣を握る。
(……護らなければ)
その時、玄鉄が動いた。
拳が振り上がる。
ただの徒手空拳。
だが、空気が唸る。拳の風圧だけで衝撃が走る。
碧蘭が避ける。
だが、風圧が肌を裂き、血が滲む。
反撃する隙がない。
避けるだけで精一杯。
玄鉄が地面へ拳を打ち込んだ。
岩が砕ける。
拳で抉った岩片を、掌に掬う。
礫。
次の瞬間、それを碧蘭へ撃ち込んだ。
石礫が雨のように襲う。
碧蘭は避ける。
横へ。
前へ。
だが数が多い。避けきれない。
礫が肩を打ち、脇腹を掠める。脚に当たる。
衝撃が身体を揺らす。
碧蘭の体勢が崩れる。
玄鉄の影が、迫る。
岩が歩くように。
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