第二十四章捌 退かぬ者たち
炎が唸る。
曹華と朱烈の刃が再び交差していた。炎槍が閃く、曹華は月穿で受け、身を捻り、流す。次の瞬間には反撃。鋭い突き。
だが。
朱烈は軽く槍を滑らせ、いなす。
「くく……」
朱烈は愉しげに言った。
「焦っておるな、曹華」
曹華は何も答えない。
だが、内心では、焦りが静かに広がっていた。
(……私が止めなければ)
朱烈。そして――玄鉄。
麗月将軍は消耗している。
碧蘭隊長と白玲がいるとはいえ、玄鉄の実力は未知数。
炎槍が迫る。曹華は避ける。月穿を振るう。だが、朱烈には届かない。
いなされる。弾かれる。再び炎が迫る。
焦りが胸を締める。しかし、頭は逆に冷えていく。
(……麗月将軍……)
刃を受ける。
(……碧蘭隊長……)
火花が散る。
(……白玲……)
心の奥で、祈る。
――無事でいて。
その少し離れた場所。
白玲に支えられ、麗月が立っていた。
碧蘭が一歩前に出る。
槍を構える。
迎え撃つ構え。
そして――玄鉄が歩いてくる。
急ぐ様子はない。だが確実に距離が縮まる。岩が歩いてくるような圧。麗月は白玲に声をかけた。
「……白玲。もう大丈夫だ」
支えを外す。
胸の奥が軋む。
だが、立つ。
白玲が驚く。
「将軍……!」
麗月は手元の槍を握る。
それは曹華が使っていた槍。
名もない槍。
だが、手に吸い付く。
「……いい槍だ」
静かに呟く。
白玲は剣を抜く。
碧蘭の隣へ並び、麗月を護るように一歩前へ。
三人の前に――玄鉄が立った。
巨躯。静かな視線。
抑揚のない声で、口を開く。
「……黒龍宗四冥将が一人、玄鉄」
一拍。
「蒼龍国が誇る五将軍の一人――麗月将軍とお見受けする」
礼を失さない声。
だが、そこに躊躇はない。
「恨みはないが――黒龍宗のために死んでもらう」
碧蘭と白玲が身構える。
その瞬間。
二人は感じていた。
圧。
圧倒的な圧。
まるで地そのものが立っているような。
麗月は静かに息を吐く。
「……碧蘭。白玲」
二人を見る。
「下がれ」
短い言葉。
「お前たちが、私のために命を散らすことはない」
碧蘭が目を見開く。
「……将軍……!」
白玲も声を震わせる。
「……そんな……!」
玄鉄は淡々と続けた。
「……無益な殺生は好まない」
視線が二人に向く。
「いま退くなら、二人は見逃してやる」
だが、それは提案ではない、確認だった。
二人が退かないことを玄鉄は知っている。
碧蘭の歯が軋む。
「……舐めるなよ」
白玲が剣を構える。
「……主のため、退かない」
玄鉄は一瞬だけ目を閉じた。
「……そうか」
次の瞬間。
玄鉄はそこにいた。
碧蘭の間合い。
地が鳴る。
岩が踏み込んだ。
戦場は、二つに割れた。
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