第九章 白華・興華伝五十一 白陵皇族との関係
白華と興華にとって、白陵皇族の三姉弟との関わりは、宮廷での生活を彩る重要なものとなっていた。
天華皇女、雪蓮皇女、華稜皇子――いずれも若く、白華と興華と年齢も近い。にもかかわらず彼らは、亡国の柏林国の王族の末裔である姉弟を決して見下すことはなかった。むしろ「もし自分たちが同じ立場であったなら」と思いを馳せ、自然に親しみを寄せてくれた。
白華は天華皇女と政務や文化について語り合い、雪蓮皇女とは心情を重ねるように親交を深めた。興華は華稜皇子と剣の稽古を共にし、同年代の少年同士らしい切磋琢磨を重ねていく。
日を重ねるごとに、彼らの存在は白華と興華にとって大きな支えとなり、また白陵の三姉弟にとっても、異国の兄妹は新たな刺激となっていた。
そして時折、氷陵帝は二人を謁見の間へと呼び寄せた。
「外から見た白陵京はどう映る?」
「もしこの都が攻められたとすれば、弱点はどこにあると思う?」
冷徹で鋭いその問いは、単なる試しではなく、白陵国外から見た視点を欲する氷陵帝の知恵の現れだった。
白華の理路整然とした答えや、興華の率直な視点は廷臣たちを唸らせ、氷陵帝をして「なるほど」と頷かせることもあった。
氷陵帝は確かに二人を試していたが、同時に彼らの声を求めていたのである。
ある日、宮廷で盛大な食事会が催された。氷陵帝をはじめ、皇族の三姉弟、清峰宰相、霜岳大司徒、雪嶺大将や凍昊中将など、白陵国の政軍を担う主要な人物たちが一堂に会した。
その場に、白華と興華も列席を許された。氷陵帝の庇護を受ける者として、二人は重臣たちの視線を浴びながら席に着いた。
やがて氷陵帝は盃を置き、ふと遠くを見つめる。
「……余が若き日に、柏林国へ留学した頃のことだ」
その一言は、場の空気を静めるに十分だった。
白華と興華にとって、それは父・景曜王子の名に触れる前触れであり、胸を高鳴らせる予感を呼び起こしていた。




