【カクヨム連載】晴れときどき地雷系〜空から記憶喪失の地雷系が降ってきたので、ゆるっと共同生活をはじめました〜
地雷系。おおざっぱに言えば隠れメンヘラ。
地雷系ファッションが確立された今では"もはや隠れてないじゃん"と感じるが、
何はともあれ関わりにくいタイプ。
できることなら一度も関わらないで生きていきたいものだったんだが……
◆◇◆◇
○月×日
俺はサービス残業終わりでフラフラになりながら、人通りの少ない夜道を歩いている。
『ヒュ〜〜』
すると突然、空から風を切るような音が聞こえてくる。
しかし、俺には上を向く元気もなかった。
サビ残の涙はこぼれ落ちるばかり。
『ヒュ〜〜〜〜』
なんか音が近づいてるような気がする。
これ絶対俺の頭に何か落ちてくるやつだ。
なんだろう、鳥のフンとか?いやそれなら風をきるような音はきこえないh
『ゴッチ〜ン』
考えているうちに後頭部に何かが当たる。
頭に落ちてくるもの界隈で言えばかなりの重さのものだ。
普通に考えて頭に何かが当たったとなると
かなり痛いし場合によっては死ぬはずなのだが、不思議なことに痛みは全くない。
いったい俺の頭に何が落ちてきたのだろうか。
この辺りに物が落ちてくる場所なんてないはずなんだけどなぁ。
俺は痛くもない後頭部を押さえて周りをキョロキョロと見回す。
すると、驚いたことに俺の目の前には
地雷系の女の子が倒れていた。
◆◇◆◇
うーん。なぜ黒とピンクの可愛い系の服装をしているツインテガーリー地雷系女子が道端に倒れてるんだろう。
まさか空からこの子が降ってきたとでもいうのだろうか。
いや、そんなジ○リ……非科学的なことありえない。
確かにこんぐらいの女の子と頭からぶつかったみたいな感触だった気もするけど。
めんどくさそうだからありえないということにしておこう。
「…仕方ない。帰るか」
そういって俺は倒れている地雷系をほったらかして家に帰ることにした。
「酷くないかな!?」
俺が一歩踏み出すと
地雷系がガバッと上半身を起こして大きな声を出す。
地雷系が大きな声出すことってあるんだ。
「え、女の子が倒れてるんだよ!? 大丈夫? くらい声かけてくれてもよくない!?」
地雷系が立ち上がり、こちらにどかどかと詰め寄ってくる。本当に地雷系なのか?
めんどくさいなぁ。地雷系と関わるとろくなことにならない。俺はあからさまに嫌な顔をする。
仕方ない、ここは煙に巻いてさっさと退散するとしよう。
「地雷が地面に転がってるくらい普通だろ」
俺が冷めた態度でそういって帰ろうとすると
「地雷を地面に置きっぱにしちゃいけないでしょ!?」
地雷系は俺の服の袖をつかみながら、猫みたいに毛を逆立てて怒る。
「それに地雷系には何があっても関わるなって死んだ婆ちゃんが言ってたから」
俺は手を振り払い冷めた態度のまま続けると
「やだよ地雷系の概念知ってる婆ちゃん!」
地雷系は今度を襟を掴み毛を逆立てたままツッコミを入れる。
身長差があるので掴みにくそう。
……確かに地雷系を知ってる婆ちゃんは俺も何となく嫌だな。地雷系のもっともなツッコミに俺はうんうんと顔を動かす。
「お前、地雷系のくせにツッコんでくるなよ。魚雷系にでも改名したらどうだ?」
俺は攻め方を変えて地雷系を煽ってみる。
「誰のせいでツッコんでると思ってるの?魚雷系って何?魚雷ガール?ボケ殺し?」
地雷系は怒りの表情を浮かべなら首を傾げる。
なかなか手強いなこの地雷系。何を言っても的確にツッコミ返ししやがる。
しかし、こいつが空から降ってきた地雷系の見た目の魚雷系だとすると、こいつ一人で陸海空をコンプリートしてることになるよな。
おもろ。
今まで偏見でものを語っていたが、地雷系ってこんなおもしろい人間だったのか。
人は見かけによらないものだと俺は感心する。
俺、天雷勝文は面白いものが大好きだ。
俺は幼少期からお笑いに触れ、ギャグマンガで言葉を覚えてきた。はじめて話した言葉はゲッ○だったとか違うとか。
そんな俺にとって面白いことは正義である。この世の全ての人間に一定の面白さがあれば、世界は平和になると考えている。俺は思想の強い人間だ。
だが、人によって面白いと思うものが違うというジレンマ。
まぁ俺の思想は置いておいて本筋に戻ろう。
「しかし、お前ファッション以外地雷系っぽくないな?ファッション地雷か? 」
俺は疑問に思ったことを口にしてみる。
「いやお前がボケるせいだが?」
地雷系は呆れた表情になりこちらを見つめてくる。
なるほどこの地雷系はボケると面白い返しをしてくれるタイプの地雷系なのか。
ならもっとボケてあげたほうがいいな。
「ファッションジライ、略してフライ」
「揚げるな!」
「いや、野球のフライ」
「どっちにしろ上がってるからな!?
声に出したらどっちかわかんないでしょ!?」
俺が試しにテンポよくボケるとテンポよくツッコミを返してくれた。
なんだこの地雷系は…!
どんなボケにも対応してくれるなんて…!
俺は思わず興奮が隠せない。
「フッ。おもしれー女」
俺は顔をニッとさせて、心からの賛辞を地雷系に送る。
「ハァ……ハァ……いや、こんな会話で言われたくねぇよ……」
地雷系は流石にツッコミ疲れたのか、息切れを起こしているようだ。
俺はその様子を見て近くにあった自販機で緑茶を買い、地雷系に渡す。
「お前面白いからちょっとだけなら話聞いてやるよ」
こいつみたいなおもしろ人間ならば、
地雷系であろうと多少は関わってもいいかもしれない。俺はそう思った。
この判断は正しかったのか。
そんなことは未来の自分が考える。
「ハァ……ハァ……地雷系に緑茶渡すセンスなんなんだよ。お前は利休の生まれ変わりか?せめて玉露をわたせ玉露を」
地雷系が緑茶を受け取りながらツッコミをしてくれる。疲れていてもツッコミを続けるなんて芸人の鏡だ。
だが、俺は今回のツッコミに少し不満を感じる。
そのツッコミは利休までで完成していた。なぜ玉露のくだりを付け足したのか。
さてはお前おもしれーって言われてはりきったな?
「玉露のくだりは余分だな」
俺は素直に感想を言う。
まぁそもそもどんなボケに対してもツッコミをしようとする姿勢が素晴らしい。
何事も挑戦が大事だ。
俺の好みと違っただけで、先ほどのツッコミを面白いと考える人もたくさんいるだろう。
あぁ、こいつなら本当に世界初の地雷系芸人になれるかもしれない。
「……」
俺が恍惚な表情を浮かべていると地雷系が黙って俯き出す。
様子が変だな。と思い顔を覗くと目が潤んでいる。
あのツッコミ気に入ってたのか?なら、俺の意見など無視して自分を通して欲しい。磨けば宝石になるから。
「そうだよねつまらないよね。ごめんね面白いって言われて調子乗って例えツッコミなんてして、もっと面白いって思ってもらいたくなっちゃったけど自惚れるなって話だよね。なんかごめんねつまらない私に価値なんてないよね。もっと面白くなるからさ私を捨てないで。無理?やだなんで、」
地雷系は地面にぶつぶつと語りかけはじめる。
……急に地雷が爆発してしまったようだ。
地雷系はわかりやすくヘラっている。
「何すればお兄さんに面白いって、捨てたくないって思って貰えるかな?そうだ飛び降りるとかどう?高いところから飛び降りたら面白いよね?そうだよね?」
地雷系はさらによくない方向に思考が向かっているようだ。
俺が地雷を踏んでしまった以上俺がこの地雷を処理する必要があるのだろう。
それに、こんなに面白い地雷系が世を去ってしまうのは勿体無い。
俺は覚悟を決めて地雷系を慰めることにした
が、
「ん?あれどこ行った?」
目を離したすきに地雷系がどこかにいってしまった。どこにいったんだ?飛び降りるなんていっても近くに高い建物なんて…
『ヒュ〜〜』
空から風を切るような音が聞こえる。
悪い予感がする
『ヒュ〜〜〜〜』
自分の頭に女の子が降ってきそうなそんな予感だ。
いや待て、女の子が降ってくるってわかっているなら、
あのセリフを言わなきゃいけない気がする!!
「親方!空から女の子g」
「ラ○ュタじゃねぇか!!」
『ゴッチ〜ン』
空を見上げた俺のおでこに地雷系のエルボーが直撃する。だが、やはり痛みはない。
衝撃で俺は仰向けに倒れる。
「……ナイスツッコミ」
俺は地面に倒れながら、地雷系を褒めた。
◆◇◆◇
「んで、魚雷ガール」
「地雷ガールだが?だから○ーボボのキャラではないって」
さっきも思ったがよく地雷系がボー○ボ知ってたな。
さてはこの地雷系守備範囲広めか?
なら、いろんなパロボケをしても問題なさそうだ。
「まぁそれはいいとして、お前の名前は?」
ボケたい気持ちを抑え、俺は気になったことを質問する。名前がわからなきゃ永遠に地雷系と呼ぶことになる。流石にそれは避けたかった。
「急にまともな質問してくんなよ……」
俺がまともなこと言ったらいけないのかよ。
地雷系はボケじゃないところにもツッコんできたが、それを指摘するとまたヘラりそうなので黙って話を聞くことにする。
「名前……名前ね……実は自分に対する記憶が無くて……」
地雷系は申し訳なさそうにしながら話を続ける。
「お兄さんに会うまでの経緯を説明するね?まず、気がついたら空にいたの。そしてそのまま落下して、何もわからないまま死んじゃう!!ってなってたらお兄さんと頭と頭でぶつかって、今って感じです」
……つまり何もわからないってことか。
地雷系はツッコミの勢いからは信じられないほどおどおどしながら話している。
「さっきみたいに空から落ちるのはどうやってるんだ?」
俺は質問を続ける。
「飛び降りたいなぁって思ったらまた落ちてた」
地雷系は真剣な眼差しで答える。
「何その無駄な力」
え?マジで何?
俺は用途が不明な力に困惑する。
いやまぁ面白いからいいんだけどさ。
気を取り直して次の質問をする。
「お前は俺に何をして欲しい?」
これが本題だ。地雷系の目的を聞く。
正直言って地雷系が俺に何を欲しているのか俺には見当もつかない。
「○ンリオグッズでも欲しいのか?」
俺はとっさに思いついたことを言ってみる。
「なわけねぇだろ。私記憶喪失だぞ?」
地雷系はボケと思ったのか鋭くツッコむ。真面目に考えた結果なのに。
「マイメ○とかク○ミ目的じゃないのか…」
予想を外した俺がしょぼくれた声を出すと
「は?○ンリオキャラはフォーミュリックス○ット一択だろ」
と地雷系が強気に言ってくる。
「そんなやついねぇよ」
俺は苦笑いを浮かべる。
聞いたこともないよそんなやつ。
え、本当にいるの?
マジ?
全国のフォーミュリックスゼッ○のファンの方ごめんなさい。
「ってそんなわかる人しかわからないような話じゃなくて!私の目的だよね!?」
俺がフォー○ュリックスゼットについて調べていると、
地雷系は話の流れをむりやり元に戻す。
まだいろんな作品聞きたかったのに。
地雷系はそんな俺の心境など知るはずもなく
息を大きく吸って吐くを繰り返しはじめる。
俺にお願いするのがそうとう怖いのだろうか。
そして、ついに意を決したのか地雷系が俺にしてほしいことを声に出す。
「私をお兄さんの家に住ませてください!」
地雷系が頭を下げてお願いしてきた。
地雷系ならもっとあざとくお願いするもんだろ……ってそんなことはどうでもいいか。
えーっと、今なんて言った?
地雷系が俺の家に住みたい…?
え……?
俺はそんなことを言われるとは全く考えていなかったので、不意打ちを喰らい驚愕の表情を浮かべる。
「いや、正直予想できる範囲だろ」
その顔を見て地雷系は俺とは対照的に冷めた表情を浮かべる。さっきまで頭下げてお願いしてた人の態度かそれが。
「そうだ。お兄さん、名前は?」
予想外のお願いに困惑しているこちらに地雷系は急にボケのフリをしてくる。
「フランシスコ・ザビ」
「そういうのいいから」
地雷系がこちらのボケを止める。ボケのフリではなく単なる質問だったようだ。
「え〜教えたくな〜い」
俺はお笑い的には教えたらいけない流れと思ったので駄々をこねる。
「なんで急に精神年齢下げたの?
……いや、私に教える名前なんてないってこと……?そうd」
地雷系がうだうだ言おうとしてる途中で目の前から消える。理不尽なボケをしすぎるとヘラる可能性がある。気をつけなくては。
まぁいい。流石に慣れた。この後は『ヒュ〜』って落ちてきて俺の頭に
『ゴッチ〜ン』
と地雷系が直撃する。
あぁ、一緒に住むことになったら今後こいつがヘラるたびに俺の頭に
『ゴッチ〜ン』
するのだろうか。
「ごめん」
地雷系は落ちてきた後、普通に謝ってきた。1日に2回も地雷系に頭を下げさせたのは俺が初めてかもしれない。
◆◇◆◇
「で、俺の家に住みたいと」
俺が話を戻すと
地雷系がこくりと首を動かす。何度も落ちたことで気分も落ちているようだ。
こいつが家に住む……か。
まぁいっか。面白いし。
俺はちょっと考えてみるが、結局おもろかったらなんでもええやんという結論に辿り着く。
「お前の記憶が戻るまでは家に置いてやる。ただし、記憶が戻ったらすぐに自分の家に帰れよ」
俺は地雷系を指差して条件を提示する。
流石に地雷系と永遠に一緒に住むってなるときつい気がする。おもしろにも飽きがくるしな。
「……わかった。しばらくの間、よろしく」
地雷系はこくこくと頷ずく。
俺の条件を飲んでくれたようだ
良かった。ずっと一緒に住むのは嫌ってこと?ってかんじでヘラらなくて。
今思ったけどこいつ家の中でヘラった場合屋根突き破って俺に直撃するのかな。
俺はそんなことを考えながら歩き出し、地雷系に
「…うし、じゃあ帰るからついてこい。」
と呼びかける
「うん!今行く!」
すると地雷系は目を輝かせて俺についてくる。
これから俺達の笑いあり涙無しの共同生活が始まる。
お読みいただきありがとうございます!
もしこの作品で少しでも笑顔になってくださったのであれば、カクヨムの方にも見にきてくださるとありがたいです!!
https://kakuyomu.jp/works/16818093087258251665




