戦いの後
「ただいまぁあ」
疲労困憊のサリクト達をスペンスは温かく迎え入れる。ブリムガルデとアリストラムは各々店に帰り、ライゼンダルは報告の為に帝都へ戻った。
「お疲れ様だなネムレス。サリクトもお帰り」
「おいおい、私には無いのか?」
何故か居るシルード。
「お前はこれくらい大したこと無いだろ。帝国の最終兵器様がよ」
「あれ? 知り合い?」
サリクトは二人を交互に見る。
「ネイジの連れだ。お前には会わせて無かったんだがな」
「まったく、こんな人材を隠してたなんて人が悪いね」
「言ってろ」
スペンスは皆をテーブルへと招く。
「で、そのネムレスにくっついて離れない女性は……。色男にそんなこと聞くのは無粋だな。部屋を用意しとこうか?」
「その言い方はなんか……、まあ良いや。お願い出来るかな?」
「わかったよ。で、名前は?」
「グラ……」
「グライラだ」
ネムレスが言いかけた所にシルードが割って入る。
「シルード閣下?」
「私の一存でここに預けることにした。不服か?」
「いや、喜んで」
スペンスはふふっと笑うとすんなりと受け入れた。
「ついでと言ったらなんなんだが、もう一部屋用意出来るかな」
「誰の?」
「私だ。これからここに厄介になるのでね」
「へえ、お前もかい……って、はあ?」
「少し、やり過ぎたようでね」
シルードは経緯を説明する。
黒夜神グラム受け渡しの際に、案内役だったボルドフ秘書官とその部下数名を殺害。そして浄化封印状態の黒夜神グラムを強奪、その際元老院が管理する地下施設を壊滅的に破壊したことで現在は反逆罪で帝国軍から追われているとのこと。恐らく数日の内に今の役職からは降ろさせ指名手配されることになる。だから匿って貰おうとここにやって来たらしい。
「んなことしたって、すぐにバレるとだろ。とは言えまともに探す気があれば、だがな」
スペンスは無謀なシルードに呆れる。
「これを使う」
とシルードは口部分が開いている仮面を被る。
「これで分からないだろ」
確かに顔は分からなくなった。
「はあ、ったく。まあ、シルードに立ち向かおうって奴は居ないしな。ブランクにいりゃ追っても来ねえか。」
「君達に迷惑は掛けないよ。逆に良い戦力になるだろ?」
シルードは笑っているが、その他皆は笑っては居なかった。そして後日シルードの想定通り、魔法庁次官、魔法軍中将の地位は失われ、国家反逆罪出指名手配される事となった。
事件の後、シルードなき空箒騎兵団ではライゼンダルは空席となった空箒騎兵団の団長となり、国家転覆を狙ったとされる宗教集団アジト壊滅の立役者であるギルバスは功績を称えられ今の職と兼務して空箒騎兵団副団長となった。サリクトと言うと、直接の罪には問われていないがシルード麾下のクレイドルガードが解散となった為、また、シルードのスカウトだったこともありサリクトは軍を除隊されただの女の子に戻っていた。帝国内での住居であるタワーの部屋は、所有する貴族の好意でそのまま使わせて貰えることになった。なんでもタワーのエネルギー供給の為にサリクトの存在は必要不可欠であり、職など関係なく定住して欲しいとのことだったがサリクトは狩猟団に帰る意向の為、月に数度泊まる約束をして帰って来た。
月日が経ち、軍も、狩猟団も通常の生活に戻って行った。ネムレス、サリクト、シルードは狩猟団として狩りに出掛けている。グライラと名を変えたグラムは狩猟団の女性団員達と共に狩猟団内の家事や雑務に勤しんでいる。周囲はそれを神だとも知らずに。
指名手配されているシルードに殆ど追手や軍が来ることは無かった。偶に懸賞金目当ての傭兵達が来ることがあるが、尽く返り討ちにして行く。恐らく周囲は誰しもがシルードの存在に気付いてはいるが、ニアブランクは元よりムステラの城壁内でも気にする人間はおらず普通に暮らしている。
一部の人間しか知らない事件は一部の人間達により沈静化され、その人間達もまた、大勢の人間と同じ生活に紛れて行く。
激動の荒波のような歴史に刻まれた人物達であっても、その殆どの時間は何気ない日常の中にある。
サリクト達は新たな波が現れるまで、それまでは平穏な時間の中に流されていくのだった。
ダラダラ続きそうだったので取り敢えず完結です。
続きは纏まったらシリーズに追加していこうと思います。




