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空白の狩猟団  作者: 些阨社
赤き焰、青き刃
36/38

寸暇の終わり

 暗い地下の通路、そこを歩く数人の足音が響く。

 「シルードよ、ゾッド議長に言われ連れて来たが、ここは元老院でも限られた人間だけが知っている場所。本来、お前の様な者が入って良い場所では無いのだがな」

 若い男が冷たく言い放つ。

 「分かっている。ボルドフ君」

 ボルドフは数年前にゾッドの秘書官となった若者である。若い上に伝統ある家柄に生まれたことで選民思想にも似たエリート意識の強さが滲み出ており、ギルバスとは違った性格の悪さを持っている。

 「この先にある物も、お前にくれてやる物では無い。ゾッド議長も解っておられんのだ。この力の必要性を、帝国を世界に君臨させる為の力を……」

 静かなボルドフの口調とは裏腹に不穏な雰囲気が漂う。

 「ボルドフ君、何か物騒なことを考えてはないか?」

 

 「はあ、なんか和んじゃったな……」

 すぐ隣には地獄への入り口があると言うのに、何故か穏やかな空気に包まれるサリクト達。

 「ああ、それはアリストラムのせいです」

 ブリムガルデはお茶を一口啜る。

 「彼女は場の空気を支配する力があります。その気になれば貴方方は恐怖で地に平伏し死を乞うことになります」

 お茶菓子へ伸びる手が止まるサリクトはアリストラムを見る。微笑んでいた。

 「あれ? アリストラム、なんか顔色悪くない?」

 よく見ればアリストラムの顔が少し黒ずんでいる。

 「ああ、疽子を取り込み過ぎたみたいですね」

 「どゆこと?」

 「私の身体は肉体の活動を維持する為にエーテルが含まれるものを手当たり次第に取り込むよう出来てて、疽魔を構成する疽子もエーテルを含むので取り込んじゃうのです。その際に疽子の穢れが身体に蓄積されてしまうのです。このまま行けば私も疽魔と同じ地獄の鬼になってしまいますねえ」

 うふふと微笑む。

 「いやいや、洒落になんないでしょ」

 その時、ゲートに張られていた封印が張り裂ける音と共に破られる。

 「さあ、楽しい時間はお終いです。続きを始めましょうか」

 アリストラムは立ち上がりテーブルなどをしまうと代わりに血に塗れた肉切り包丁を両手に握る。サリクト達も迎撃の体勢を取ると封印に押し止められていた疽魔達が怒涛の如く押し寄せて来る。

 「シルード、早く来てくれよ。アリストラムが鬼になる前に」

 サリクトは箒を握りしめる。


 「さて、ボルドフ君。大分と歩いたが、黒夜神はまだかな?」

 「いや、お前に黒夜神は渡さない。帝国は強くならなければならない。帝国とは名ばかり、形式上は皇帝が頂点に君臨するが実際は議会から選出された代理王が治めている。その中で弱体化は進み、隣国からも軽視される始末。帝国はもっと絶対的な指導者を持って、他を圧倒する程に、強者で無ければならない」

 「で、黒夜神を使って世界征服でもするつもりか?」

 「そうだ。お前達、コイツをここで始末しろ」

 ボルドフの指示で護衛兵がシルードに刃を向ける。

 「お前は黒夜神を強奪するために私達を殺害しようとした所を私の部下が返り討ちにした。と言うことになるだろう。死体は残らん。黒夜神の目覚めの贄に使う」

 「ロウチャード伯はそれを知っているのか?」

 「知るわけが無い。黒夜神さえ復活すれば、奴らなどただの老人だ。私がこの国の頂点に立つのだ。元老院、その先の皇帝など最早ただのお飾り、無用の長物なのだよ」

 「その傲りはどこから来るのか……。まあ良い。先に言うが、許して欲しい」

 「何をだ? 命乞いなどもう遅いのだ」

 「いや」 

 その言葉の後、静かに護衛兵の首がずり落ち、血が噴き出し飛び散る。

 「久々の荒事手加減が出来そうにない」

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