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空白の狩猟団  作者: 些阨社
赤き焰、青き刃
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運命のお告げ

 「あら、サリクトさん。昨日ぶりですね」

 ブリムガルデを抱いている女性はにこやかに挨拶する。誰だ。ブリムガルデはと言うとその女性の指を恍惚の表情でシャブっている。ように見える。こんな敵のど真ん中で何をしているのか。女性は徐ろに指を引き抜くとつーと、涎が糸を引く。

 「うぇ、ぷは……。これは違うんです。サリクト」

 我に返ったブリムガルデは急いで身体を引き剥がし弁明する。

 「あ、いや。元気そうで良かった……。邪魔、しちゃったかな……? あっちの方、片付けに行くね」 

 「違うんです、サリクト。違うんですよ……」

 ブリムガルデの呼び掛けも虚しくサリクトはそそくさとその場を離れる。 

 「サリクトー! 早くお前も戦え!」 

 ライゼンダルは一人奮闘している。剣を振るいグリモアから稲妻を走らせる。魔法使いの戦い方は剣と魔法のコンビネーションを駆使して立ち回る。派手な魔法で周囲を破壊することはあまり無い。今のような限られた空間での戦闘なら尚更だ。

 サリクトは辺りを見渡す。昨日の様なデカい奴はいない。今この場に溢れている奴らなら全然怖く無い。あの少女のおまじないのお陰もあるのだろうか。

 「コイツら疽魔は、今までも偶に現れて軍が対応していたんだが、しかし、この量は……」

 「ふぅ、行くよ!」

 サリクトは箒を斧槍の様に構える。そして息を吐き鳩尾に力を入れ頭上で回転させるとその勢いで横一文字に払い鋭い衝撃波で一帯の疽魔を屠っていく。

 「お前、凄いな……」

 ライゼンダルはその一撃に驚き、サリクトの方を見る。するとサリクトの顔が薄っすら光って見える。

 「ん……?」

 よく見ればそれはサリクトの顔にあるソバカスが光っていた。いつもは普通に愛らしい少女のそれで、特に気にはならなかったが、今は違う。明らかに異質に、それでいて彼女を優しく取り巻くように光っている。

 

 少し前、帝都では、

 「単刀直入に言います。ロウチャード卿、女神グラムを渡していただきたい」

 シルードはロウチャード伯ゾッドの前にいる。机を挟み対峙する二人。ゾッドは自身の椅子に座り、じっとシルードの目を見ている。

 「シルードよ、女神をどうする気だ?」

 「ゲートを閉じます」

 ゾッドはため息を一つ吐くとシルードに問う。

 「女神の浄化はまだ終えてない。疽子に侵された今のまま目覚めても自我を喪失していて疽魔と同じように暴れ回り玉の魔獣を吐き散らかすだけだぞ?」

 「いいんです。なんとかします」

 「……私はお前の愛国心、いや、皇帝への忠誠心を疑ってはいない。しかし、お前はあの魔女のこととなると、些か冷静さを欠くな。アリストラムもいるのだろう? 消失することはまず無いと思うがな」

 「ロウチャード伯……。本来なら、まだ猶予はあった筈です。しかし、メティアの託宣を授かりました。受けた以上、そうならない様に動くしか無いのです」

 「そうか、難儀なものだ。……まあ良い、この日の為に確保していたのだ。連れて行け」

 「有難う御座います。急ぎますので、失礼します」

 シルードは礼をすると直ぐ様部屋を出る。

 「運命の歯車に、絡められたか……」

 

 戻ってゲート戦場。

 「なんでライゼンダルはこっち来てんの?」

 サリクトは疽魔をまるで草を刈るように薙ぎ倒して行く。

 「閣下が、先に、向かえと、言われたん、だ!」

 ライゼンダルは疽魔を引き付け確実に仕留めて行く。空箒騎兵団筆頭のライゼンダルであるが楽勝と言う訳では無さそうだ。

 「それよりもサリクト、その顔どうしたんだ?」

 ライゼンダルは戦いながらもサリクトの光る顔周りが気になっている。

 「顔? どうかしたの?」

 サリクト自身は気が付いていない様子。そんな会話の間も敵を切り刻んで行く二人。そこに、

 「このまま楽しんでも良いのですけれど、代わり映えしないので飽きちゃいました」

 「あ、お姉さん……」

 ブリムガルデを抱き締めていた女性が現れる。 

 「少しミスティルテインを貸して貰えますか?」 

 「み、ミス……何?」

 女性はサリクトの箒を指差す。

 「その箒ですよ」

 「そんな名前なのか、って、あ!」

 箒を毟り取られてしまった。

 「ライゼが可愛そうだからね」

 ブリムガルデも現れる。

 「黒夜神が到着するまで、休憩としましょう」

 奪った箒を構えるとゲートに向かい大きな筆で文字を書く様に箒の光る穂先を振り紋様を描き重ねていく。

 「これだけ厚くしておけば暫くは大丈夫でしょう。そして……」

 箒の穂先をその中心に合わせる。

 「私の余剰分を大サービス! です!」

 女性は引き金を引く仕草をすると、彼女を中心に爆風が吹き荒れる、同時に箒の先端から極大の光線が放たれ紋様を貫く。貫いた光はゲートに纏わりついてガラスのように透明な覆いとなりその中に閉じ込める。その内に爆風が引くとそこにはいつもの少女アリストラムが立っていた。

 「では、少しお茶でもしましょうか」

 と少女は微笑んだ。

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