助けに
サリクトは駆けながら魔法軍エプロンへ向かう。
「一日経ってるけど、大丈夫かな」
早くしなくてはブリムガルデが死んでしまう。
エプロンまでの通路に空箒騎兵団員の箒が掛けられている。そこにある自身の箒を引っ掴みエプロン上を駆け抜ける。するとあの声。
「こらー! 予定外の飛行は原則認められ……」
「サリクトです! 通ります!」
そのまま飛び立つサリクト。
「サリ……、あー!! もう! 第三高度上限いっぱいで飛びなさい! 他の箒の邪魔だから!」
「パロメ曹長、良いんですか? そんなに上がると上級貴族専用高度に掛かりますが……」
「良いの! シルード閣下から言われてるんだから! ただ、あの子がそこまで飛べるのかは知らないけどね。まあ? クレイドルガードにいるんだから? 飛べるんでしょうけど? ふん!」
パメロはカツカツとヒールを鳴らし部屋を出ていく。
「なんで怒ってるんだ……」
一方のサリクトは高度と言われてもよく分からない。
「何処まで上がれば良いんだよ」
「もう少し上だ。サリクト」
後ろからライゼンダルがやって来た。
「ライゼンダル! 良かったあ。またあのおばちゃんに怒られるところだったよ」
「パメロ曹長のことか? そんな歳じゃないぞ」
とライゼンダルはインカムを気にしている。
「どうしたの?」
と聞くサリクトにインカムを外して言う。
「管制室、特にパメロの捕捉能力を甘く見るなよ! ここの会話も聞かれてるぞ!」
「おばちゃんで私の名前が出るなんて、どういうコトでしょうか? ライゼンダル大佐」
外したインカムからパメロの声。急いでインカムを付け直すライゼンダル。
「いや、これは、流れでわかるだろ。流れだ。俺は思ってない。それより、平時の管制範囲外交信は禁止の筈だぞ」
「ふーん……そうですか。では、交信終わります」
ライゼンダルは少しホッとする。そんなライゼンダルを横目で見るサリクト。
「なんだよその目は。さ、そんなことより第三高度上限まで来たぞ」
どうやら指定の高度に達したようだ。下を見る。
「なんか、小さいのが動いてるな……」
「あれは人だ。一般人、その上に商人達が飛んでいる。そんなことより急ぐぞ」
ライゼンダルはサリクトを置いてすっ飛んでいく。
「あ! 待ってって」
サリクトは慌てて追いかける。
「ふふふ、尽きることがありませんねえ」
肉切り包丁で疽魔を斬り伏せていくアリストラム。斬られた疽魔は倒れ暫くすると黒い霧となって散っていく。周りは今まで斬り伏せてきた疽魔の霧のせいで薄暗くなる程だ。そんな霧を一身に浴びたアリストラムは急に身体をビクつかせる。
「ああ、こんなに疽子を浴びると……漲ってきちゃうううう……あああ!」
アリストラムは艶っぽい声色で身悶え、突然ボフンと薄青色の煙に包まれる。
「あーあ、浴びすぎちちゃった……。ブリム!どこ!?」
煙が捌けるとそこには大人の女性。その女性はブリムガルデを探し向かう。
「あー、貴女は減りすぎてるようですね……」
「なんですか、アリス。邪魔です」
そこには赤い髪をした少女が大きな鉈を両手に持ち構えている。
「はっ!」
少女は押し寄せる疽魔達の群れに真正面から飛び込んで行く。
「きゃははははは! どう振っても切れてくよー!」
型など何もない切り付け方で疽魔達に斬りかかり、ブリムガルデの通った後には疽魔の道が出来ていく。
「まったく、貴女は疽子を吸収出来ないんですから」
大人の女性の姿になったアリストラムはゆったりと歩き飛び跳ねるブリムガルデの進路真ん前に立ちはだかる。
「きゅ!」
「よしよし、じっとしててね」
アリストラムはその大きな胸に収まったブリムガルデを抱きしめ、
「はい、あーん……」
と人差し指と中指を揃えて少女ブリムガルデの口に突っ込む。
「オヴェっ!」
ブリムガルデは目を白黒させえづく。
「大きい時はあんなに気怠そうなのに、小さくなるとなんでお転婆になるのでしょうかね」
「オッ、オッ、ヴ、ぅぅぅ……」
位置を探るように指を動かすアリストラム。それに合わせて苦しそうにえづくブリムガルデ。
「よいしょ」
アリストラムは良い所を見つけると、ブリムガルデにエーテルを流し込む。
「ゔゔゔぅぅぅ!」
少女ブリムガルデは震えだし身体に青い光が走る。その光が伸びるのと併せてブリムガルデの身体も伸びていく。そのとき、不意に上空から声が聞こえる。
「たあああああああ!」
その声はアリストラムが地下祭壇天井に開けた穴を塞ぐための結界をぶち抜いてくる。
「助けに来たよ! ブリムガルデ!」
そこには見慣れぬ女性と、その女性に抱き締められ口に指を突っ込まれているブリムガルデ。
「え……、何してんの……?」




