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空白の狩猟団  作者: 些阨社
赤き焰、青き刃
32/38

英雄の作り方

  黒夜神会アジトの偵察任務が一転、アジトを壊滅させたサリクトとギルバス。ライゼンダルに救出され今は帝都へ戻り魔法省の会議室。そこにいるのはサリクトとライゼンダル、そしてシルード、ギルバスは医務室で治療を受けている。全身を打ってはいるが命に別状は無いと言う。

 「出来ればゲートを復活させたく無かったが、仕方ない。あの状況から君達が生還出来ただけでも上出来だ」

 シルードは微笑む。

 「首謀者はゲートの為に命を捨て、その他信徒は既に殺された後だった。と言うことで良いかな?」

 その問い掛けにサリクトは頷く。

 「首謀者かはわかりませんが、器具を装着していた死体の側に血に塗れた位の高そうな服が落ちていました」

 「おそらくそれは首謀者のロマニ司祭だ。奴は狂信的な黒夜神の信奉者だ。前から不穏な動きを見せていて、ムラクから目を付けられていた。取り敢えず今回の件は表向きには過激派宗教団体の殲滅作戦と言うことになっている。ギルバスが目覚めたら驚くだろうな。国家転覆を企む宗教団から国を守った英雄になってるんだから」

 一人難しい顔をしているライゼンダル。

 「閣下はこうなる事を解っていらっしゃったのですか? だから私に後方待機させ、ギルバスに爆弾を……」

 その途中に割って入るシルード。

 「そんな訳はない。こんな事態になるとは思ってもいなかったさ。調査したロマニの性格から自分を贄にするとは考えにくかったからな。ゲートが復活する前にすんなり制圧して終わる筈だったんだ」

 「筈だった、とは?」

 ライゼンダルは食いつく。

 「ムラクの秘密警察、異端審問会エリミナ。奴らがロマニを追い詰め早まらせたと私は考えている」

 「エリミナ……。グリゴリ教団の暗殺部隊、ですか……」

 ライゼンダルは俯き黙ってしまう。

 「ブリムガルデから教えて貰ったこと、何も出来なかった。あの中から出てきた黒い奴を見たら身体が動かなかった……」 

 サリクトは俯き、悔しさに歯を食いしばる。

 「気を落とすな、初めてアレと対峙すればそうもなる」

 シルードはサリクトの肩に優しく手を触れ慰める。そして、向き直り皆に言う。

 「さて、我らが可憐なる乙女達をずっと戦わせる理由にもいかない。黒夜王グラムを探さないとな」

 「グラムちゃんなら元老院にいるよ」

 「!」

 皆が驚き声の方へ向く。

 「こんにちは」

 そこには風変わりな服装をした少女が一人立っていた。

 「どこから入った!」

 ライゼンダルは皆を庇うように前に出る。

 「やあやあ、お久しぶりですね」

 「誰か、知り合いなのか?」

 ライゼンダルは問うが誰からも返事がない。

 「ふふふふふ。さあ、早く行ったほうが良いんじゃないかなあ? ブリムが消えちゃう前にさあ」

 「くっ」

 「閣下!」

 シルードは走り部屋を出て行く。ライゼンダルも追って行き、サリクトは部屋に残った。

 「元気出しなってえ」

 少女はサリクトを慰めるも本人には届いていない。届くほどの心も籠もっていない。

 「お前はなんなんだよ……、いきなり出て来て……」

 「サリクトちゃんはさあ、強い子なんだから」

 「そんな、子供にあやされても……、まぁ、私も子供だけど……」 

 「……まあいいや。そうだ、知ってる? ブリムガルデってさ、その昔は白灰の魔女って呼ばれて恐れられてんだよ? 真っ赤な目をして燃える炎のような赤い癖っ毛でさ。彼女の後には真っ白な灰しか残らないって。怖いねえ」

 「なんの話し……」

 サリクトに昔の記憶が蘇る。子供の頃に見た。家の外、燃える家々、慌てふためく住民達、しゃがみ込むサリクト、それを見下ろす赤い瞳。そして全てが吹き飛ぶ。

 「いや、知ってる……。村を、お母さんとお父さんを、めちゃくちゃにした、奴」

 「あら、そうなの? じゃ、仇かあ……。でもこのままならあそこで死んじゃうし、仇討ちは出来ないね。残念」

 「どういうこと?」

 「今のブリムはねえ、色々あって外の世界に長く居られない身体なんだよね。戦ったりなんかしたら死ぬの早まるかもねえ」

 ああ、だから外に出なかったのか。ライゼンダルを嫌いな訳では無かったのか。

 「……ダメだ」

 サリクトの声に生気が戻る。

 「あの日のこと、聞きたい」

 サリクトの記憶にある彼女は目の前の少女を哀れんでいるような眼差しだった。人を殺し、村を壊滅させた者のする表情だろうか。

 「何日も一緒だったし、少しは情も湧くってもんよ」

 自分に言い聞かすように呟くと歩き出すサリクト。

 「どうするの?」

 「助けに行く」

 「ビビってたのに?」

 「初めてでビックリしただけ。次は殺す」

 「死ぬかもよ?」

 「死なないよ、私強いからね」

 その言葉を聞いた少女は微笑みサリクトの額に自身の額をくっつける。

 「……!」

 突然のことにサリクトは固まってしまう。

 「なら、少し手助けしてあげる」

 静かな室内。少女から良い匂いがする。滑らかな肌。すぐ近くにある小さく柔らかそうな唇。可憐と言う言葉が形を持ったような造形がそこにあり、押し離すことも、動くこともままならず、指をワキワキさせることしか出来ない。

 「はい」

 額が離れ自由になるサリクト。

 「んはっ、な、何をしたの?」 

 「勇気が出るおまじない」 

 少女はサリクトの背に回りドアに向けて優しく押し出す。

 「さあ、いってらっしゃい」

 「おっとと、ありがとう」

 礼を言い振り向くがそこには誰もいない。

 サリクトは一つ息を吐く。そして走り出した。

 

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