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空白の狩猟団  作者: 些阨社
赤き焰、青き刃
27/38

そこにあるもの

 「はあ、はあ、次はなんだ!」

 サリクトはブリムガルデのもと、怪しい宗教のアジト偵察と言う忘れかけていた任務に向けて色々な想定でしごかれている。不思議なことにブリムガルデの魔法屋から出た先は様々に形を変える。最初は広い訓練場のような場所だったが、他には狭い通路、円筒状の竪穴の底、更には森の中の様な場所等など、変幻自在に姿を変えた。そしてそこにはブリムガルデが標的と言う仮想敵もいた。黒い靄の固まった様な人の形をしたそれは、多少緩慢ではあるが実用的な動きをしてくる。サリクトはブリムガルデの指示のもと、標的を相手に訓練していた。

 「ああ、そろそろ標的も少なくなってきたのでここら辺でおしまいですね」

 「はぁー! 疲れたー!」

 その場に大の字に寝転がるサリクト。

 「少し休んだら帰るか」

 度々外に出ていたが、ほぼずっとサリクトの訓練の様子を見ていたライゼンダル。

 「あら、ライゼまだいたんですか」

 素っ気ないブリムガルデ。

 「いたら悪いか」

 「暇そう」

 息の落ち着いてきたサリクト。

 「お前はまだ疲れてろ」

 不貞腐れるサリクトを他所にライゼンダルは続ける。

 「一旦帰るぞ。こんなに何日もぶっ続けだとそのうち死ぬ。にしてもブリムガルデ、偵察任務だって言ってただろ? なんでこんな具体的な拠点制圧の訓練をするんだ」

 「だって、何でもすぐ出来ちゃうものだから。やること無くなってつい……」

 「閣下に何か言われたか?」

 「……少ない友達を更に少なくしたくは無いでしょ?」

 ブリムガルデは不敵に微笑む。

 少しの休憩の後、帰り際、

 「また来てください。数百、数千年ぶりに動いたような気がします」

 「そんな大袈裟な。じゃまたね」

 その後サリクトとライゼンダルは魔法屋を出てタワーへ向かう。魔法屋へ向かうときはかなりの道程だったが、帰ろうとドアを開けるとそこは帝都の大通り。最初にカンプ魔法堂の文字が書いてあった壁が入り口になっていた。外は日が落ちているが飲食店の明かりが賑やかだ。

 「次からはここからすぐに入れるぞ。探索したいのなら最初の道を行くのも良いだろうな。帰ってこられる保証は無いが」  

 「はは、行かないよ」

 ライゼンダルは疲れ果てたサリクトをタワー中層にある部屋まで送り届けると中へ入らずベランダでそのまま別れた。

 「はあ、寝よ」

 サリクトは雪崩込むようにベッドへ寝転がる。中層の住居には使用人が付くのかベッドは綺麗に整えられ、ムステラから持ってきた雑嚢諸々は端に寄せられていた。

 「元気か、な……ミーナ……」

 サリクトは一瞬にして眠りに落ちた。

 

 「ライゼンダル、サリクトの仕上がりはどうだ?」

 窓から月明かりが差し込む暗い部屋に人影が二つ。

 「どうって、化け物ですよ。ブリムガルデの相手してるんですから」

 「化け物になってもらわないとな。あそこに囚われてるブリムの代わりに」

 窓際に立ち月の光に照らされるシルード。

 「私には皇帝を護る使命がある。黒夜神会の崇める神の復活は何としても阻止したいんだ」

 「かの者共のようなカルト教団の御神体など、大抵は大昔の高位魔獣を石化した物ばかり。魔獣であればやりようはありますよ」

 「魔獣なら、な」

 「と、言いますと? 最近話題の玉の魔獣ではないのですか?」

 「違う」

 微笑み勿体付けるシルード。

 「なら、何が?」

 微笑みが消え、月を見上げて目を細める。

 「あの世の入り口だよ」

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