戯れる鉈と箒
「さあ、その箒で私を楽しませてください」
天井も壁も見えないほど広い石の広間で、ブリムガルデは両手に巨大な鉈を持ち構える。目に見えるところに照明は無いが室内は明るい。
「楽しませるったって、どう使うのか……」
「よ!」
ブリムガルデが動く。
「ちょっ!」
遠くに居たはずなのに一瞬で間を詰め斬りかかるブリムガルデ、その鉈を箒の柄で受けるサリクト。二人の間に甲高い金属音が鳴り響き一旦飛び退き距離を取る二人。
「くぅ、この感触……。良い!」
身を震わせるブリムガルデ。
「くそ、箒でどうすんのって!」
サリクトは穂先を前に箒を構える。剣が先に付いていれば、と考えたとき、箒の穂先が一点を指すように窄まるとその先に青白い光の剣が現れた。さながら槍のよう。
「ふふ、良いですね。それの使い方は箒で空を飛ぶ方法の延長ですよ」
またもブリムガルデが斬りかかる。サリクトはその斬撃を剣先で、又は柄の腹で、時に柄尻で、箒をくるくると器用に身体に沿わせ回し何とか捌くと体勢を整える為に後ろへ退く。
「帝都来たばっかりなのに! もう!」
「まだいけるでしょう?」
ブリムガルデはすかさずサリクトに詰め寄り鉈の柄尻で顔面を殴る。
「あで!」
続いて足払いを掛けサリクトの体勢を崩すと横殴りに鉈を振り抜く。
「くっ!」
何とか箒の柄で受けるも吹き飛ばされる。その最中、サリクトはブリムガルデが本を取り出すのが見えた。
「グリモア!?」
「得物ばかりで単調ですよね?」
ブリムガルデは取り出した本から一頁破り取るとその面に掌を当てる。その瞬間、掌を当てた裏側から猛烈な火炎が噴き出してくる。
「魔法はズルくない?!」
凄まじい威力。サリクトの知っている魔法使いはせいぜいが拳大の火球を飛ばすくらいだ。
「魔法でこんな炎、見たことないよ!」
「今いる帝国に魔法使いと呼ばれる者達は皆、魔法使いの下位である魔法士ばかりだ。嘆かわしいことだが軍も殆どが魔法士レベルで魔法使いの位を与えて居るのが現状だ。それだけ魔法使いは少ない」
とライゼンダル。
「にしてもコイツは規格外だがな」
と付け加える。
「これが魔法使い? 戦闘狂の間違いじゃなくて?!」
「ふふふ、口が達者ですね。心臓、二つ在庫にしましょうか」
「なんで俺も入ってんだ!」
炎を撃ったブリムガルデは髪がほんのり赤く輝いている。
「髪が、光ってる……?」
「ああ、少し力が入ってしまったようです」
ブリムガルデ動きが止まる。熱いのか手で顔を仰いでいる。
ブリムガルデの足が止まった。彼女はさっき箒で飛ぶ延長で使えと言っていた。つまりはイメージだ。ならば、
「弾も撃てる!」
サリクトは長銃を構えるように箒を持つと柄に光の銃把が形作られその引き金を引く。すると青白い光の尾を引きながら飛翔体がブリムガルデ目掛けて撃ち出さる。反動は少しあるが炸薬が無い為に発砲音は無く、代わりに大きめの風切音がする。
「おお! 素晴らしい!」
ブリムガルデは速射される弾を跳ねて避け、鉈で弾き、走り避ける。
「でも……」
「あ、あれ……、力が……」
サリクトが撃ち出す弾が徐々に少なくなり、遂には出なくなった。
「あ、駄目だ」
とサリクトは意識を失った。




