灰の大隊
「という訳で、連れて来ちゃいました」
「来ちゃいました、って。何だそれ?」
ネムレスが連れ帰った者達を見てアジトのメンバーは目を疑った。そこには灰色鎧の屈強な兵士達、ではなく
「お世話になります」
と言いお辞儀する二頭身の灰色の人形達。ぷかぷか宙に浮いている。何かの拍子に流され他の人形とぶつかったり、縺れたり、その度に広場で遊ぶ幼児のように「わー」とか「きゃー」とか声を上げる。
「託児所じゃねーんだがな」
とスペンス。
「いや、ブランクでは屈強な戦士だったんだよ。でもなんかここに来るまでに段々と萎んじゃって……」
その内の一人が言う。
「主よ、ここは彼の地よりもエーテルが薄い。体形の維持がままならないのだ。しかし主よ、心配は無い。見た目が変われども我らの力が衰える訳では無いのだ」
「ないのだ! やー」
浮遊する人形達は揃って勇ましく剣を抜く。
「剣まで可愛くなっちゃってる。果物ナイフみたいだ」
「安心してくれ主よ」
人形達は胸を張る。
「そ、その声で言われても説得力がなぁ」
発言は大人びていても声色は幼児のそれ。男児か女児かも分からないほど幼い声。
「任せていただきたい」
と胸を張る灰色人形、そこに突然勢いよく開かれる扉。
「ちょっと! サリクトがいなくなったってどういうこと!?」
ミーナだ。サリクトが軍に連れられて行った事を知って激昂しているようだ。
「わー」
流される灰色人形達。
「えー! なに! すごい可愛いこれ! ちょっと!」
それらを見るなりミーナは激昂した勢いそのまま一つ引っ掴むと抱きしめる。
「きゃー」
もがく灰色人形。
「情緒大丈夫か……」
「で! どうなの? サリクトは!」
「い、いや俺も知らないんだよ。ネイジならなんか知ってるだろ。ネイジー!」
返事は無い。
「ネイジならもういないぞ」
とスペンス。
「少し前に帰って来たと思ったら「じゃあな」だとよ。いつ帰って来るか、帰って来るのかも分からん」
「そんなぁ」
肩を落とすミーナ。スペンスは続ける。
「まあ、サリクトは帝都にいる。その内会えるさ」
「帝都、か……。ふーん、ふふ、邪魔したわね!」
「わー」
ミーナは少し思案すると帰って行く。手に灰色人形を一つ持って。
「良いのか?」
「良いのだ、主よ」
「そうか。で、なあスペンス、これからどうするんだ? ネイジいなくても大丈夫なのか?」
「なに、元に戻っただけさ。元々ネイジとサリクトはいなかったからな」
「そうなのか?」
「昔色々あって行く当てもなく放浪してた俺等の前に突然現れてな。付いてこいってんで一緒になって何だかんだここに居着いたって訳」
「昔何があったんだ?」
「それはね、エリミナに、っ痛え!」
何か言おうとしてスペンスに殴られる団員。
「あー、まぁなんだ。ネイジがいなくても俺らは変わらず狩猟団だ。いつも通り狩りに出るさ」
「そうだな……。そうだよな」
「お前にも働いて貰うからな。稼ぎ頭のサリクトがいないんだ。お前ももうお客じゃないんだからな」
「わかってるよ」
「我らも助太刀いたす所存、やー!」
「やー!」
「絶対幼くなってるぞ」
「子供の面倒はお前が見ろよ」
「そうじゃないんだって」
ネイジとサリクトの抜けた狩猟団は、代わりに灰の大隊改め、白夜の団が加入した。




