白き夜、灰の子ら
「何を探してるんですか? ネイジ」
サリクトを送り出した後のこと。夢の中だったネムレスを叩き起こし箒で空を飛んでいる二人。ネムレスは未だ一人では飛べずネイジの箒に乗せてもらっている。
「んん? ああ。ちょっとした人探しさ」
「人探し? 何処かの狩猟団ですか?」
「んー、まあそんな所だ」
二人は暫く空から地上を眺める。北門すぐの森林地帯を越えた先、乾いた荒野の広がる黄白色の大地は、その上にある何者も同じ色に溶け込ませてしまう。
「お、いたいた」
ネムレスには何も見えないがネイジは何かを見つけると急降下する。
「うわうわ! 突然!」
降り立ったそこには灰の大隊がいた。
「おお、何時ぞやの」
「元気か? 灰の」
親しげに挨拶する二人
「あ、あのー。どちら様、です?」
ネイジの影からおずおずと顔を出すネムレス。ネイジはそんなネムレスをよそに話しを続ける。
「ほら、お前らの探してた白のニュクスだ」
「おお!」
灰の大隊の皆々がネムレスを囲う。
「え?」
「整列!」
灰の隊長の号令で数十人が即座に整列する。前はこんなにいただろうか。
「我らが偉大なる白夜王よ! よくぞご無事で!」
「あ、あの。人違いじゃないですか?」
「いいや、大丈夫だ。合ってるよ」
「で、でも」
「あとはコイツらに聞きな。じゃあな」
「あ、ちょっ」
ネイジはそう言うと飛び去って行った。
「ああ箒……、はあ」
肩を落とすネムレス。そこに灰の隊長が声を掛ける。
「白夜王よ。お気を落とさずに」
「そうは言っても……。何が何やら」
ネムレスの落胆をよそに灰の隊長は話し続ける。
「貴方の名は白夜王ムルティリア。我らが主。異界より渡りし神々、グリゴリの一柱」
ネムレスは彼の言葉を理解出来ない。
「いやいや、何を……」
「千年周期の大黒魔海嘯を鎮める為、貴方と黒夜王グラムはお目覚めになられた」
「だから何のことを……。そんな話し……あ」
ネムレスの頭に映像が蘇る。漆黒の砂嵐、それに相対する自分とその隣にいる誰か。黒い靄に包まれ全容は分からない。その二人を守護するように囲む灰の大隊の兵達。全員が漆黒の砂嵐を止めようとしている……。
「……はっあ、はあ、はあ」
ネムレスは我に帰ると額から冷や汗が流れる。
「しかし、主が封印された後、黒夜王は取り込んだ疽を幽界へ転送出来ずに変容してしまった。今やリベリを生み出し続けるレジーナと化している」
「……何のことだかさっぱりだ……」
腰に下げた水筒を掴み水を飲む。落ち着きを取り戻し、少し気持ちの整理と現状を受け入れようとする余裕が出てきた。
「私たちは主と黒夜王を元に生み出された、言わば貴方達の子の様なもの。これからは貴方様の意志を護る盾となり、道を切り開く剣となりましょう」
灰の大隊の皆が立て膝を付き頭を垂れる。
「いやいや、こんな人数養え無いよ。俺は狩猟団見習いみたいなものだし。一旦、スペンスに相談しなくちゃ」
「主よ、我らに食事は不要。主である貴方様が生ある限り我らも存在し続けます。この実体も周囲のエーテルを取り込み形作られているのです」
「ふうむ……」
ネムレスは暫し考えた後、アジトへ連れ帰る事にした。
「悪いんだけど……箒、乗せてもらえるかな?」




