人でなし狩猟団
「なんで、あの子は捜索依頼したんでしょうか」
今日も賑わう皆の居酒屋蒼鋼亭。名物、魔獣の干し肉を齧るネムレスはふと口にした。
「そうだなあ。首が欲しかった、だろうな」
麦酒を飲むネイジ。
「金を払ってまで、ですか」
「新規狩猟団の救済措置とし北門管理側から何回かタダで捜索とか応援してくれるんだよ。費用は北門管理から出るんだ。因みに北門通行料も初回から十回まではタダだ」
「へえ」
「でもあの子、今回が初めての狩りじゃ無いっぽいよ」
ステーキを頬張るサリクト。
「初めてじゃ無い?」
「ほら、通行申請って代表して一人でやるでしょ。だからあの子名前変えて色んな狩猟団に参加してたらしいよ」
「ふうん、首狩り放題だな」
サラッと言うネイジ。
「そんな、決め付けは良くないですよ」
「決め付けなもんかよ。わざわざ首取りに戻ったり、助けた奴が翌日に首無しで死んでたりしてんだぞ? アイツは首を狩ってんだよ、はい決定」
「カイル君はすぐ発覚したじゃないですか」
「あれは下手こいたんだよ。ニアブランクなんかで殺るから。ブランクなら茂みに隠れてやりゃ分かんねえよ。参加した狩猟団皆殺しなら完璧だ」
「そんな……」
「わかってねぇな。ブランクってのはそう言う場所なんだよ。誰が入ろうが、誰が死のうが関係無え。ブランクは国外だから調査に入る権限も無い、ただ出た数と入った数は把握しときましょう、てのが国のスタンスさ。持ち帰った物の検閲も無し。呑気なのかなんなのか……、楽で良いけどよ」
ネイジは麦酒をおかわりする。
「それにネムレスよ、狩猟団ってのはそもそも犯罪者から始まったんだ。大昔、犯罪を犯した者の刑罰として生アクリス採集って言う刑務があってな。基本的には死ぬしか無い死刑みたいなもんだが、帰って来る奴もいてな。帰って来たら刑は終了なんだがもう普通の職には付けねえ、そしてハイリスクだがハイリターンな生アクリス採集の味を占めちまってるから、それを生業にした奴らがいた。狩猟団の始まりさ。今でも通行印が有るやつは白い目で見られるだろ?」
とネイジはネムレスに自身の右手の甲に有る印を見せる。
「だから、死んでも構わないと?」
と、そこに突然男達が怒鳴り込んで来た。
「おらあ! 酒出せ! 狩猟団様が来てやったぞ! どけ!」
先頭の若い男やその取り巻き達は周囲を威圧しながら横柄な態度で入ってくる。その集団がネムレス達の方へやって来た。
「へえ、若い女連れて良いねえ。なあ姉ちゃん、俺らと飲もうぜ。こんなおっさん面白くねえだろ?」
取り巻きの一人がニヤニヤと下卑た笑いを浮かべサリクトの手を掴む。
「へえ。勇気あるじゃん。それかここ初めて?」
サリクトは余裕の表情。
「生意気なガキだな」
頭らしき男が取り巻きを掻き分け前へ出てくる。
「ムカつく……じゃ死ね」
と銃をサリクトの頭に突き付け引き金に指をかける。それと同時に銃声が鳴り男の頭が横に跳ね飛ばされる。
「お客様ー、サービスの鉛玉でーす。 お熱いのでお気を付けくださーい」
ウェイトレスが無愛想に銃を握っている。
「お、お頭ー!! てんめえ! こらあ! ……あ」
ウェイトレスの後ろから屈強な男達がぞろぞろと現れ、突然頭を殺された不届き者達の憤慨を威圧感で霧散させると、彼らを店の奥へと連れ込んで行った。そこにナンナが出てくる。
「皆、騒がしてごめんね! 今日の酒は奢りだよ!」
「こ、殺されましたよ!? 誰か! 自警団に!」
「まあ気にすんな。人を殺そうとしたんだ、殺されて文句言えねえだろ」
「いや、で、でも……」
慌てるネムレスを尻目にネイジは隣に倒れている死体に興味を示さず目の前の肉をつまむと徐ろにネムレスの方を向く。
「ネムレス、俺は狩猟団なんて死んでも構わん人でなしのクソ連中だと思ってるぜ? しかし例外はある。コイツはいい奴だった」
と死体を見やる。
「し、知り合いですか?」
「いや」
微笑むネイジ。
「酒をタダにしてくれた」
その言葉に顔が引きつるネムレス。
「ひ、人でなしだ……」




