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空白の狩猟団  作者: 些阨社
バタリオン・オブ・アッシュ
14/38

発見

 「申し訳ない。エーテルに酔った者達が粗相をしてしまい迷惑をかけた」

 後から来た灰鎧は後ろにその他鎧を整列させ、共々ネイジに頭を下げる。

 「エーテルって酔っ払うのかよ……。いや、良いんだけどよ。で、あんたら何者?」

 皆同じような軽甲冑に身を包み、顔も兜で分からない。一度混ざって整列し直した今、どれがネイジを襲った鎧か分からない。

 「我々は災厄の監視者。灰の大隊、と呼ばれていた」

 「灰の、大隊?」

 聞いたことの無い名前だ。狩猟団や、何処かの軍隊でも無い。

 「この地に封印された災厄が目覚めたときの鎮圧手段として共に眠りに付いていたのだ。今が何時かは知らないが、眠りについたのは神生歴七百年くらいだった筈だ」

 「神生歴!? おいおい冗談だろ」

 「どうしたのお頭?」

 サリクトはネイジの驚きようにビクリとする。

 「神生歴っていや、超帝国時代の年号じゃねえか」  

 「超帝国っておとぎ話とか、伝説とかに出てくるやつ?」

 「そうだよ。今の世界の土台を作った古代の超国家だよ。この大地が球であること、そして、それが広大な宇宙に浮かぶ星だと言うことを明らかにし、魔法学の基礎を作り、その応用理論によって超絶技術を獲得し栄華を誇った、この星全てを統一した唯一の国。なんてこった」

 目の前にいる鎧達がまさかの超特クラスの古代遺物だとは。物であれば、売りに出して億はくだらない、いや値がつくのかも分からない遺物だ。アカデミーなら金に糸目は付けないだろう。しかし、この軍団は売れそうに無い。かと言ってアカデミーに売るのも癪だ。

 「ふううう。ああああ、!ごふッ。はっ、はあ、失礼」

 ネイジは独特な深呼吸で気持ちを落ち着ける。

 「今は星暦千五百十年だ。あんたらが眠りについてから一万年以上経っている」

 「一万年!」

 サリクトは目を丸くした後、まくし立てるように質問する。

 「ねえねえ! 昔ってどんなだったの? ブランクとか、魔獣とかさ!」

 その圧に押されることもなく灰鎧は低く落ち着いた声で答える。

 「申し訳無いが、その質問の答えは持ち合わせていない。我々は人間のように変化の機微に敏感には出来てないからだ」

 「人間のように? 含みがある言い方だな」  

 ネイジもサリクトも、致命的に切られてから立ち上がった所を見ているので、人では無いとは薄々思っている。

 「私達はエーテルコアから作り出された人工物だ。生命とも異なる。障害となる目標を排除する行動原理のみで動いている。今の目標は《《黒いニュクス》》、および我々に敵対してくるものだ。」

 「それって、あの黒い玉の魔獣のこと?」

 「そうだ。しかしまだ《《リベリ》》としか出会っていない」

 「リベリ?」

 「そうだ。アレは災厄の子らだ。《《レジーナ》》がまだ見つかっていない」

 「レジ、なんか分かんねえな」

 ネイジは少し苛立ってきた。

 「リベリを生む母体がまだ見つかっていないと言うことだ。それはリベリの比にならない災厄だ」

 「アレより強えのがいるのか。狩猟団家業もそろそろ潮時かなあ」

 珍しく後ろ向きなことを言うネイジ。

 「顔がニヤけてるよ」

 サリクトはネイジの顔の変化を見逃さない。

 「んん、ここは……?」

 その時、カイルが起きた。

 「うわ! なんだここ?」

 驚き木の台が軋む。

 「んん、前もこんなことあったような」

 サリクトはネムレスと出会ったときを思い出す。

 「お前、カイルだろ。連れのサエルって子がお前を心配して捜索願いを出しやがってな。んで俺らが来たって訳だ。さ、帰るぞ」

 「サエルが? へえ。会って二、三日なのにな。惚れられちゃったかなあ。へへへ」

 ニヤけるカイルからは若者特有のいやらしさが滲み出ている。

 「バカじゃないの」

 「……。まあ狩猟団組むくらいだ、そう言う目的もあるかもな」

 こうしてネイジとサリクトは灰の大隊に別れを告げる。別れ際、灰鎧のリーダーが言う。

 「もし、白いニュクスが目覚めていたら、私達のことを伝えて欲しい。彼は大切な人だ」

 ネイジは分かったと言う代わりに手を振り答える。そしてカイルと町役場まで戻ると、そこにはサエルもいた。カイルの帰りをずっと待っていたようだ。

 「君がサエルかい? 待たせたな」 

 ネイジはそこに立つ幼気な少女に声をかける。逃げるのに大変だったのだろうか、服の所々に血がべっとり付いている。

 「あ、ありがとうございます! これでやっと……」

 少女の目に安堵の色が浮かんだ後、

 「ふふ」

 微かに、歪なら笑みを浮かべたのをネイジは見逃さなかった。そして役場の入り口で別れ、別々の道で帰る。別れ際、ネイジはサエルの大きなカバンが目に付いた。

 「なぁ、あの子箒乗りだったよな」

 ネイジは帰る道すがら、何となく思ったことを口にした。

 「そう言ってたね」

 「で、上からトミの殺されるのを見て怖くなって帰って来たんだろ?」

 「そう言ってたね」

 「じゃあよ、なんであの子の服に血が付いてたんだ? それも少しじゃない、部分的にだが、べっとりだ」

 「そう、だね」

 「それにあのカバン、ちょうど良い大きさだと思わないか?」

 「何に?」

 「人の頭だよ」

 二人の間を風が吹き抜ける。

 「ま、まさかあ。あんな純真そうな女の子が、ねえ」

 ぎこちなく笑うサリクトにネイジは言う。

 「トミの頭半分、どこいったのかなあ」

 「……」

 無言の時間が流れる。暫くしてサリクトが口を開く。

 「まぁ、狩猟団だし、ね」

 「そうだな。果てしない自由を得る代わりに、命の価値がゴミクズ以下になるってーことは、ある程度は覚悟してんだろ」

 

 翌日、身元不明の少年の死体がニアブランクのあばら家から見つかった。その死体の頭部は欠損していたと言う。

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