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空白の狩猟団  作者: 些阨社
バタリオン・オブ・アッシュ
13/38

探し物

 「助けてください!」

 必死の形相で町役場で訴えるのサエルだった。血の付いた服で、サエルはカイルとトミが見たことも無い魔獣に襲われたと涙を流し何度も訴えている。

 「わ、私がしっかり、引き留めて入れば、こんなことには」

 泣きながらヒックヒックと話すサエルが言うには、止めるのも聞かずグングン進む二人について行けず途中で休んでいたら二人を見失い、空からようやく見つけたと思ったらトミが殺される瞬間だったと。そして血の気が引き怖くなって一人逃げ帰ってきたと言う。

 「黒い玉……ですか」

 北門の受付嬢は、サエルから聞いた魔獣の特徴に心当たりがあった。そして彼女の要望に対応出来るであろう所に連絡する。


 「で、白羽の矢が立った訳だ」

 「貧乏籤引いたの間違いじゃなくて?」

 ネイジとサリクトは箒でブランクの空を飛んでいる。

 「さっき帰って来たばっかじゃん。休ませて欲しかったなあ。ネムレスは寝ちゃうしさ」

 「アイツも疲れてんだよ。それに前金貰っちゃったしな。即金で五万リジュ。 まあ現地調査依頼だし、ただ見て帰るだけ。な? ついでにカイルって奴が見つかれば尚良し」

 「そんな端金で行く?」

 「お金様を悪く言うな。お金様は裏切らず俺たちを幸せにしてくれる」

 目を細くし微笑むネイジ。

 「……強欲」

 「なんか言ったか?」

 「知らなあい」

 暫くブランクの空をフヨフヨと飛び周り例の魔獣の痕跡を探す。しかしまったく見つからない。金を貰った以上は何か成果物が無いといけない、と思ってしまうくらいには真面目な二人。サリクトがふと下を見ると、何か不自然に直線的に木が倒れている個所がある。その直線の根元まで行くと、二つに裂かれた死体が一つ。

 「これって……」

 「ああ。しっかし顔の特徴聞いてても意味ねえな、こりゃ」

 ネイジはそれがトミかすぐには断定出来なかった。ブランクでは血の匂いに敏感な獣も多く生息する。その死体にはスカベンジャーが群がり肉の大部分が食われていた。それがトミだと思われるのは聞いた服の色と、身体が半分に裂かれて落ちているからだった。

 「ん? 頭、なんかおかしくないか?」

 ネイジはトミの死体に違和感を感じた。何か少ない気がする。

 「ぶった切られた時に破損したとか、飛んでったとかじゃない」

 サリクトは連れない回答だ。

 「そう、か。よし、この先行くぞ。カイルって奴は先頭だったらしいしな」 

 ネイジは死体を縦断する直線状の溝を辿り先へ進む。そこには何かを押し付けられ慣らされた様な跡があった。

 「やっぱりアイツだ……」

 サリクトは呟く。この前の玉の魔獣だ。まだいたのか。手練れのガイランでさえ敵わずにいた魔獣に駆け出しの狩猟団なぞ敵うわけもない。いや、それよりもこんな強力な魔獣が北門の比較的近くに現れたことの方が問題だ。北門付近には魔獣がいない。それはブランクの奥にある魔獣の生息域でベテラン狩猟団が狩りを行っているためだ。長年の狩りがいつしか人間と魔獣の暗黙の境界線を作り出していたのだ。しかし今回は違った。

 「帰って来る時に気付かなかったな……」

 ネイジ達は今日帰って来たところに依頼を受け、ここにいる。北門近くに魔獣が居たのであれば、何かしらの痕跡に気付いても良いようなものだが……。

 「付近に死体は無さそうだね。でも……」

 サリクトは足で下生えを掻き分け地面を露わにする。

 「一人じゃないっぽいね」

 そこにはカイルの靴とは違う足跡が残っていた。

 「一旦帰るかあ」

 ネイジが帰ろうとしたとき、風上から異臭が漂って来る。

 「うえ! 臭い! 何この臭い」

 「これは……。エーテルの臭いだ」

 「エーテルって臭うの?」

 「濃いエーテル溜まりが消えずに留まっている場所は稀にエーテルが変質して臭いを出すことがある。腐食とか発酵に近い概念だな」

 「え、発酵って、エーテルって食えるの? 美味いの?」

 サリクトが薄く笑みを浮かべ聞いてくる。

 「知らん」

 臭いの方へ向かうと音がする。茂みに隠れて覗くとそこには灰色の軽甲冑を着込んだ集団がいた。何人かはフラフラしていたり、他の仲間に羽交い締めにされたりしている。

 「何やってんだ彼奴等は」

 その中、木で組んだ台の上に少年が寝かされている。

 「あの服と顔の特徴って……」

 「んー……」

 「カイルだね、あれ。ここは、一旦帰った方が良くない? 多勢に無勢……」

 「見つけた! 追加の五万!」

 「ちょ! お頭!」

 ネイジの叫びに反応して、羽交い締めにされていた者が拘束を振り解き剣を手に取り此方へ向かって来る。

 「偶にゃ運動しねえとな」

 ネイジも茂みから飛び出す。向かって来る敵の攻撃に合わせ腰の剣を抜き受け流す。ネイジは真正面から剣を受け止めることはしない。どの角度、位置からの攻撃も受け流すことに徹している。今も剣を受け流し、相手の体勢を崩しつつ自らは適切に体を整え一撃を放つ。

 「相手が俺じゃなきゃ、良い線いってたぜ」

 斬り伏せられ突っ伏している死体に労いの言葉をかける。しかし、死体は立ち上がり何事も無かったように再度構え直す。

 「げっ」

 想定外の事に戸惑っていると、他の数人も飛びだしてくる。

 「くそっ! ……ん?」

 出てきたは良いが其々が勝手に動きぶつかり合って倒れていく。起き上がるも我先にと向かって来てまたぶつかる、と言ったまったく統率の取れていないものだった。

 「練度も何も無いな。一人だと強いのに。見掛け倒しか」

 たまに来る剣撃を軽く受け流しながらネイジは呆れて首を振る。と、そこに怒号が飛ぶ。

 「お前達! 酔いに任せて暴れるとは、戦士の恥としれ!」

 他の場所から帰って来た灰鎧が一人、茂みの向こうから現れた。

 

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