残る命
今日も今日とて狩りの日々。
サリクトは元気にブランクを駆け回っているし、そんないつもと変わらぬ狩りの場には今日も数多の狩猟団が狩りをしている。そんな中、駆け出し狩猟団の前に悲劇が訪れる。
「よ、よし! 行くぞ!」
カイル達の狩猟団は今日が初ブランクだ。
ブランクでの狩りをするのに特別な資格や条件などは一切存在しない。強いて挙げるとすれば自身の命をベットする勇気、覚悟を持っていることだ。ここでの狩りは魅力的ではあるが、町の中で働く方が安全に、安定して、不足なく稼ぐことが出来る。それでも尚、ブランクへ入るのはそれなりの理由があるのだ。
カイル達は十年前の災害孤児であった。
カイル達に限らず孤児院育ちのものは、その多くが里親の元へ巣立って行く。しかし、行けなかった者達も居た。それは里親側の好みの問題で取り残された者達が殆どだが、中でも素行不良の目立つ者は町の中では生きづらさを覚え貧民街へ消えて行った。そして窃盗団や闇商人等と付き合いをする中で、下手を打って命を狙われることもある。そうなった者達が最後に行き着く先がブランクである。ニアブランクに住めば貧民街のゴロツキ達も近付いて来ないし、ただで屋根の下で寝られるようになる。しかし稼ぎは町へ行くわけにも行かず、狩りに出るしか無い。幸い中門エリアでは私闘は厳禁、警備も厳重なため、そこで命の危険は無い。と言う訳で色々とあったカイル達は当面の命を繋ぐために狩猟団を結成するに至ったのである。
結成はしたものの、カイル達の狩猟団は三人しかおらず団と言えるものでは無い。役割としては、頭のカイル、トミの攻撃班、箒乗りのサエルとしている。装備は中古で箒を買った際、余りの頼りなさにおまけで貰ったほぼ鈍器の役しか果たさない長剣と、簡易防具。そんな貧弱な装備で出来ることと言えば採集である。活力溢れるブランクでは薬草の類も効能が高いため、それなりの値で取引される。当面は採集係のカイル、トミ。運搬係のサエルの布陣で活動することになりそうだ。
「へへ、なんだよ簡単だな! この調子ならまだ先にも行けそうだ」
「ちょっとカイル! 危ないって!」
トミが諌めるもカイルは聞く耳を持たない。途中、枝を踏み抜く音や、何か破裂するような音が鳴り響き声が通りにくくなって来た。
「サエル! この先どうだ?」
カイルが聞くもサエルの返事は無い。
「ん? サエル! 無視すんなよ!」
声が小さいかと思って大きな声で聞き直すも返事が無い。無視に苛立ち後ろに振り向こうとしたカイルは何か壁にぶち当たる。
「って! なんでこんなとこに壁があんだよ……」
突然現れた壁は黒く艷やかで、少し丸みを帯びているように感じる。
「なんだ、これ」
それは無機物のようであるが、小さく脈動しているようでもある。
「トミ! なんだこれ」
カイルが後方のトミの方への振り向く。
「ちょっと、待って」
その時、空中でパンッと破裂音が聞こえたと同時にトミが頭から二つに分断された。
「あ、?」
吹き出る血飛沫。目の前で起こったことが理解出来ず固まるカイル。すると壁が自分の方への傾いて来る。逃げなくてはいけないと頭が言うが身体が動かない。何も出来ずに頭の上に壁が迫ってきた時、トミが腰の雑嚢に入れていた音響玉が、倒れた拍子に作動していたのか、突然破裂し、甲高い超高音が鳴り響く。すると壁の動きが止まり、少し後退した。カイルはその音で意識が落ち着きその場から逃げることができた。しかし黒い壁は後を追ってくる。それは壁ではなく巨大な玉だった。必死で逃げるも直ぐに追いつかれ潰されないギリギリで逃げている状況だ。しかし、それも長くは続かない。体力も尽きてきて脚が縺れそうだ。とそこに段差が。朦朧として、それを気付かぬまま足を取られ転倒するカイル。このまま轢かれると思った瞬間、突然人影が割って入り玉を両手で受け止める。そこにすかさず数人の影が剣で玉を切り付け割いていく。その最中にカイルは誰かにすかさず引き摺り出されたまでは覚えているが、そこで意識が無くなっていた。




