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空白の狩猟団  作者: 蓮谷 渓介
空白を狩る者達
1/14

幸運の名の下に

 「ネイジー! 人が倒れてるー! 素っ裸だ!」

 鬱蒼とした山の中、日も落ちかけた時分に行き倒れを見つけた少女の声。

 「なんでこんな所に人が居るんだよ。しかも手も足も全部残ってるって……」

 男は空と辺りを見渡す。

 「……今日はここらで野営だな。あー、あー、ネイジだ。狼煙を上げる。皆集まれ」

 次いで行き倒れの男を見やる。

 「運が良いのか悪いのか……」

 

 日が落ち暗い山に一つの明かりと人の影。焚き火を囲む男と少女、それとその他大勢。干し肉をしゃぶる者、得物の手入れをする者、外敵避けの魔法具に集中する者、などなど。

 「魔獣、見失ったね」

 少女が言う。

 「横穴でもあるのかもな。空から見てた箒隊も見失ったんだから」

 「狩りはしたけど、獣と小型の魔獣じゃあね。稼ぎが淋しいんじゃない?」

 「子供がんな事気にすんじゃねーの。この前の稼ぎがあるから大丈夫だよ」

 「強欲のネイジが良く言うよね」

 「それさ、誰だよ言ったやつ。勝手に渾名されてこっちゃ迷惑だよ」

 「ん、んん……」

 行き倒れの男が目を覚ます。

 「ん、何処だここ……」

 辺りを見渡せば此方を見つめる多数の眼。

 「うあっ!」

 男は布を掛けられ全裸では無くなっていた。

 「目え覚めたかい? ラッキーボーイ」

 「ラッキーボーイ……?」

 「そうだよ。危険過ぎてどの国も治められないこの空白地帯(ブランク)のど真ん中で呑気に寝てたんさ。しかも無傷で。どんだけ幸運なの」

 とネイジの代わりに少女が言う。

 「ブラ、ンク……」

 「この奥に霊穴があるんだ。強力な魔獣がうじゃうじゃ居るし、エーテルが濃い場所もそこかしこにある。何の装備も無しに昼寝出来るほど穏やかじゃねーんだな。ほれ、食いな。」

 ネイジは干し肉を齧りながらラッキーボーイに同じ干し肉を差し出す。

 「はぁ……。で、皆さんはどうしてそんな危険な場所に?」

 「そりゃ魔獣狩りさ」

 少女が言う。

 「その質問を聞くにラッキーボーイは狩猟団稼業をよく知らない都会育ちと見た。私達狩猟団は魔獣や獣をかることが生業なのさ。魔獣の持つ生アクリスは結構良い稼ぎになるし。でもまあ育ちの良い坊っちゃんは知らなくても仕方ないか」

 「サリクトの言う通り、魔獣は金になる。まぁ、魔獣が人里に降りて悪さするのを防ぐ目的もあるし、駆除したら報酬も貰える。俺等みたいな筋肉馬鹿にはうってつけの稼ぎ場なのさ」

 「金、ですか」

 「で、アンタは何してたの?つか名前は?」

 とサリクト。

 「私? 私は……」

 「私は……?」

 鸚鵡返しの後に固唾を飲んで見守る一同。

 「私は……、誰だ……?」

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