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死後も現世を彷徨っている幽霊は、この世に何かしらの未練や思い残しがあるから成仏できないのだと、以前、幽霊やオカルトを特集したテレビ番組で見た覚えがある。
「うーんと」
メイは少し考える素振りをしてから、パンと一度手を打った。
「うん。そう。きっと。そう。それだよ。わたし、未練が残ってるから成仏できないの。このままだと、ずっとフミちゃんに付きまとって枕元に立っちゃうよ。眠れなくて困るよ」
そう早口に言うメイは、今思いついたでまかせだけど、勢いで押し切ってやろう。という顔をしていた。
「ふふ、それは困るね」
私は少し笑う。
メイは嘘をついてる。それはもあからさまに。何に対して、どう嘘をついているのか私にはわからない。それでも。その嘘に乗ってあげるのも悪くないと思えた。
きっと、これは良い機会だ。
メイが未練を晴らしたいように、私だって思い出したくない過去をいつまでも苦々しいままで胸のうちに留めておきたくない。できることなら、若気の至りだったんだよ。とビターな思い出の一ページとして笑って話せるようになりたい。
私一人では出来なかったし、逃げることしか出来なかった。でも、メイのお願いに便乗するようで悪いが、二人なら乗り越えられる気がする。
それに、長い時間成仏できないと、魂に悪影響があるともその幽霊やオカルトを特集していた番組では言っていたから。
「仕方ない。次の休みに行こうか。週末まで待ってよ」
「やったあ」
私が言うと、メイはどれだけ嬉しかったのか、笑顔で部屋中をビュンビュンと飛び回った。
少しだけ、鬱陶しかった。