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「ううん……」
無性に寝苦しさを感じて、私は呻いた。
元来、私は一度眠りにつくと目覚まし音が鳴り響くまで起きない人間だ。学生の頃は寝坊しないために目覚まし時計とスマートフォンのアラームの二つを用意してもなお寝過ごしたこともある。
チチチ……と窓の外から小鳥の声は聞こえているけれど、耳に突き刺さるような甲高いアラーム音は鳴っていない。ということは、まだ起きなくても良い時間のはずだ。
それなのに目が覚めるなんて、不幸以外の何物でもない。
――フミちゃん
不快感に苛まれる私を誰かが呼んでいる気がした。ちゃん付けだなんて、大人になってから呼ばれないのに。なんだか懐かしい。
――フミちゃん。フミちゃん。
また聞こえた。一度だけならまだしも二度も三度も聞こえるなんて。どうやら、空耳ではないのかもしれない。
「んん、誰……?」
私は寝ぼけて返事をしながら目を開く。
「おはよう、フミちゃん」
布団で眠る私の胸に馬乗りになっている女の子が笑顔で挨拶をしてきた。
ああ、だから苦しかったのか。小さな子とはいえ、人ひとりが乗っているんだもの。重いに決まってる。小学生くらいだろうか。
寝苦しさの原因に合点がいき、私はもう一度布団に潜り込んだ。まだ起きるには早いから。目覚ましは鳴ってないから。
「……ん?」
声を出したおかげか、寝ぼけていた頭が徐々に目覚め始める。
私は洲脇史。二十八歳。女。今のワンルームマンションには夏頃に引っ越してきた。生まれた県とは別の県の大学に進学してからはずっと一人暮らし。
子どもは居ない。まだ結婚するつもりはないし、そもそも悲しいかなもう何年も恋人すら居ない。
そして、わたしは一人っ子。当然、歳の離れた妹なんてのは存在しない。小さな子の友達ができるような気さくな性格ではないし、そんな人間関係もない。
なら、今胸の上にいるこの女の子は誰?
もしかしたら、まだ夢を見ているのかもしれない。だって、昨日の夜も間違いなく玄関と窓の鍵はかけた。それに、この部屋は四階だから小さな子がベランダをよじ登って侵入するなんて不可能だ。
女の子なんて、居るはずがない。
そう念じながら、恐る恐る私は布団から顔を出し、目を開いた。
胸の上に何者かの重みを確かに感じているというのに。
「うん? どうしたの?」
胸の上の女の子は可愛らしく首を傾げた。