1-2
矢後はこの家には2回来ている。
事前に聞いていた情報が今でも通用するのかを確かめるためだ。
水曜日には老夫婦そろって午前中の10時あたりから出かけることになっている。
病院や週に1度の外食。
そして1週間分の買いものをして帰ってくる。
それが老夫婦の毎週のルーティンだ。
それが間違いないかは2回確認している。
戻ってくるのは、だいたい午後5時くらいだ。
男から聞いた話と2回の事前調査から8月に入ってからの水曜日に決行することにした。
矢後は独りで行動する。
もしかすると仲間がいたほうが良いのかもしれない。
でも矢後は独りでの犯行を好んでいる。
理由は、よほど信頼がおける者とじゃないと組みたくなかったからだ。
そしてそんな信頼できるような人間は矢後にはいない。
それどころか友人と呼べる者もいない。
結局は独りでいるのが性に合ってるんだろう。
矢後はゆっくりと庭に入った。
大きな窓ガラスがある。
雨戸で閉まってるわけではなかったので室内がまる見えだ。
誰もいない。
ここの家は空き巣に狙われやすい住宅の特徴がある。
人通りが少ない。
大きな樹木などがあって死角が多い。
そして定期的に留守になる。
矢後のような空き巣専門の泥棒にとってはうってつけの家だ。
この家に住む老夫婦は資産家だ。
家など見れば質素な雰囲気もあるが土地面積を見るとかなり広い。
優に100 坪は超えている。
主に不動産売買で儲けたと聞かされている。
銀行には預けずにタンス預金の金額も大きいらしい。
子供は2人いるが一緒には暮らしてない。
結婚して独立しているのでそう頻繁には会うこともないということまで知っている。
昔の家の造りなので裏に回ってみると勝手口がある。
もうしわけ程度の鍵がかかっているだけ。
古いタイプの鍵がそのまま。
開けるのは簡単だった。
矢後は靴を脱いで侵入した。
靴跡からバレてしまう可能性を失くすためだ。
家の中は静かだ。
ルーティン通りに今日は留守のはずだ。
ちょっと気がかりなことは、老夫婦が外出したのかは見てない。
自分がこの家に到着する前に出ていったのかもしれないと思うことにした。
それでも慎重に足を進めていった。
勝手口から侵入するとそこは台所だ。
綺麗に片づいている。
その奥は居間になっている。
その隣には和室がある。
雨戸も閉めずになんとも無用心なと空き巣の矢後は思っていた。
この家の中に入るのは初めて。
空き巣の常習犯である矢後には、だいたいのアタリがついていた。
これまでの経験から考えられる場所がいくつかある。
これからそれらの場所を探っていく。
誰もいない家なので焦る必要はない。
それよりも痕跡を残さないことに注意しながら作業を進めていくことが重要だ。
これまではその心がけもあって成功している。