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自殺を試みたこともあった。
自殺といったって首を吊ることくらいしか思い浮かばなかった。
首を吊ったとしても呼吸もしてないのだから死ねるわけもない。
手に入れることはできないが毒物を飲んだって無駄だろう。
そもそも飲むなんてことができない。
いろいろ試してみても自殺することもできない。
骨があまりにも頑丈すぎてどうやってもかすり傷さえつかない。
食事もいらない、睡眠もいらない、シャワーなどの衛生面も必要ない。
たった独りで部屋にいるだけ。
時間を持て余してしまう。
テレビだけがたったひとつの楽しみになっていた。
死ぬこともできないのならいっそのこと気が狂って欲しかった。
それも叶わない。
脳も溶けてなくなっている。
でも考えることができている。
なぜだ?
矢後はテレビも見なくなった。
一方通行で言葉が聞こえてきても虚しいだけだ。
日がな1日をただベッドの上ですごしている。
気が向いた時だけ鉄格子のある窓から外を眺めたりする。
眺めるといったって樹木しか見えない。
樹が邪魔をして外の世界を見ることはできない。
いまだにここがどこなのかもわからないままだ。
関東のどこかということだけが察しがついている。
そんな毎日、同じことの繰り返しの日々が続いた。
もう自分で死のうとの気力もなくなった。
誰でもいいから俺を殺してくれないかと願うだけだ。
その日、部屋が大きく揺れた。
地震?
しかもかなり大きい。
尋常じゃないほどの揺れが長く続いた。
部屋には被害はなかった。
この大きな揺れ以降は看護師の姿を見ることがなくなった。
すでにテレビを見なくなっていた矢後は、世の中が世界がどのように動いているのかをまったく知らなかった。
それはロシアからだった。
核ミサイルの発射だ。
この1発の核ミサイルの発射をきっかけに中国、インド、アメリカ、ヨーロッパ全土など世界中を巻き込んだ第一次戦術核大戦が勃発した。
被害にあった核保有国が次々と核による報復を行った。
日本に限っていえば一方的な核攻撃を受けて国としての機能もなにもかもが崩壊した。
アメリカの軍事基地を狙っての核攻撃だ。
そのおかげで日本領土にも甚大な被害が出てしまった。
これは推測になってしまうが、日本の生き残りの人口は8万人をきっているものと思われる。
そんなこともまったく知らない矢後は、日本が復興するかもしれないこれからの数百年間をたった独りで生きていくことになる。
矢後が発見されるのがいつになるのかはわからない。
もしかすると永遠にこのままかもしれない。
矢後としては、誰か俺を殺してくれと願う日々がこれから数百年だか数千年も続いていくことになるかもしれない。
どちらにせよ永遠の孤独という地獄から解放してくれるのだったら何でもする。
助けると思って、どうか、どうか、どうか俺を殺してくれえぇぇぇ。
殺してくれえぇぇぇ。
(完)




