2-1 学園生活
2年の月日が経ち、16歳になった。
今日は学園の入学式、制服に手を通す。
ブレザーの制服は本の挿絵通りで、忠実に再現されている。
とうとう物語が始まる。
留学から帰国したリュミエール様が入学の挨拶をして、
ヒロインと出会う。
今は私を愛してくれているリュミエール様、
本の世界の力はどれぐらい働くのかしら?
ひょっとして、心変わりしてしまって、
本当にヒロインを愛してしまったら・・・
そんな事を考えていると、髪を整えてくれていたメイドが、
「緊張されているのですか?」
と聞いてきてくれる。
いけない、周りに心配をかけては・・・・
このメイドはエマ・ベネットという名前で、
2年前に私専属メイドとなった。
学園にいる時以外、外出時もずっと私に寄り添って
くれている。
ベネットとみよじが付いている所からして、
貴族の出身である事が分かり、
どこから情報を仕入れてくるのか、
貴族令嬢の情報(噂話)にとても詳しい。
今では何でも話せて、一番頼れる存在だ。
私の方針は前世の記憶を取り戻した2年前と変わらない、
闇の精霊とは契約せず、ヒロインをいじめたりしない。
すでに、大分変わってしまっている小説の世界、
これで大丈夫なはず。
「いつもありがとう」
髪を整えてくれていたエマにお礼を言う。エマは微笑んで。
「お嬢様が一番お綺麗です。
皇太子殿下もそう思われるはず、
久々に会われるのですもの、
あまりに美しく変わられたお嬢様に、
びっくりされますわ」
エマの言葉に、私も微笑む。
確かにこの2年で、私はだいぶ変わった。
元々良く言えば無垢、悪く言えば子供だった私、
前世の記憶が戻った事で、一気に大人っぽく
なったし、自分で化粧もするようになった。
前世の知識でメイクはメイドより上で、
メイクを販売している商人にアドバイスを
するぐらいになっていた。
おかげで、美容関連では、
私は最先端だと社交界でも噂になっている。
単なる前世知識を披露しただけだが、
公爵令嬢として、美に長けているのは
メリットが大きいので、助かっている。
ドレスも昔ながらの若者向けも好きだが、
大人向けのドレスも着れるようになったし、
幅は一気に広がった。
学園は化粧はOKのようなので、
あくまでナチュラルにポイントだけ抑えた
メイクをしていく。
「いつ見ても、お嬢様のメイクは素晴らしいです」
髪を結っていてくれたエマが、ほおっと声を上げる。
ブラシを使い、器用に自分でメイクをする私を褒めてくれる。
髪のセットは任せるが、メイクだけは自分で
やらないと落ち着かない。
最後に口紅を塗った私は、鏡の中の自分を見つめる、
さあ、小説の世界が始まる。
必ず幸せな未来を手にしてみせるんだから!
【名前の由来】
エマ・ベネット
(エマは英語で全宇宙、全世界の、万能の、多才な)
(ベネットはラテン語の祝福された、恵まれたなどの意味を持つ「Benedictus」より)