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「私が傍に来て、こうして横に座って、
どきどきするかい?」
私としては、弟が傍に来て、横に座ったのと
変わらない、なので横に顔を振った。
「私はどきどきする、こうしてレイラの横にいて、
レイラの気配を感じ、声を聴くだけで、
緊張してしまうんだ」
皇太子ともあろう者が、婚約者に緊張すると聞いて、
今まで考えた事もなかったので、いきなりの告白に戸惑う。
そうしているうちに、リュミエール様の
右手が、私のほほに添えられる。
リュミエール様をじっと見つめていると、
唇と唇が重なった。
これって、キス?
そう思っていると、いきなり私の中に、
膨大な記憶が流れ込んで来る。
何これ、ここではない世界?
日本? 文明?
そうこの世界は昔本で読んだ世界!!!!
私はいきなりの事に混乱していると、
リュミエール様がゆっくりと唇を外す。
「好きなんだレイラ、1人の女性として。
政略結婚で愛なんて必要ない事は分かっている、
それでもどうして、君に惹かれてしまう、
私の我がままだと分かっている、
それでも、君にも私を見て欲しい、
できるなら、愛して欲しいんだ」
その言葉を聞きながら、まだ呆然としてた私は、
リュミエール様の胸の中にポスンと倒れ込む。
そんな私を、リュミエール様はぎゅっと
抱きしめてくれる。
リュミエール様の心臓が、すごい早鐘を
打っていて、いかに彼が緊張しているか教えてくれる。
今までの、恋も愛も、男女の感情も、
何も知らない子供ではいられない。
そう、流れ込んできた記憶は、
40代女性の、それなりに恋愛経験のある記憶だったのだ。
リュミエール様が何を望んでいるか、
手に取るように分かる。
それだけに、半端な気持ちは返せない。
私を抱きしめたまま、リュミエール様が告げる。
「もうすぐすると、隣国に留学しないといけない、
2年間会えなくなる、
今すぐ好きになってくれとは言わない、
ただ、私以外の男になびく事だけはしないでくれ、
私も愛人などは絶対作らない、約束する」
切羽つまったような声を聴いて、
ぎゅっと抱きしめて答える。
「リュミエール様以外の人はいらない、
約束します」
そう言うと、抱きしめていた私を離し、
まじまじと私の顔を見る。
「本当に、私だけなんだな」
「はい、リュミエール様だけです」
自分でも瞳がうるんでいる事が分かる、
今までとは、明らかに違う私にリュミエール様は、
「愛している」
そうはっきりと告げた。