病人食と隊長の件
熱が出て3日目経つとようやく熱は下がり起き上がれるようになった。しかし今度は咳が止らないようだ。
「ゲボッわりぃな。お前ら寝てるか?」
「寝てるよ。それよりも休んで。熱が下がると咳が出やすいからあまり話さないほうが良いよ。喉が辛いでしょう?」
シンジュも前世によく熱を出した後、咳が止まらなくなった。
苦手だったトローチや龍角散を舐めてどうにか咳を抑えようとしてた。
この世界にも喉の炎症を抑える飴や、熱を下がらせる錠剤とかがあればいいのにな〜とギルドマスターを見て思った。
「あぁゲボッゲボッ子供の時以来だ。小僧はどうした?」
「エメは寝てるよ。夜中は寝ないと成長ホルモンが出ないからね。」
私も身長伸ばしたいけど元々不摂生だったからこれ以上伸びなさそう。
「なんだそれ?ゲボッゲボッ」
「身体を大きくするために必要なものだよ。成長期には寝ないと大きくなれない。」
「そうか。俺もよッゲボく寝てたわ。今は眠くねぇゲボッ腹減った。」とグウグウと盛大に鳴るお腹をさすった。
「パン粥持ってくるから待ってて。」とキッチンに戻ったシンジュは鍋いっぱいに作ったパン粥をお皿に盛ると、もう1度エメの部屋で寝ているギルドマスターの元へ戻った。
「はいどうぞ。もし甘さが足りなかったら砂糖とはちみつ両方あるから言ってね。」
「ありがとう」と言うとギルドマスターは食べ始めた。
今回作ったパン粥はミルクとほのかなはちみつの甘さがあり.病人じゃなくても美味しく食べられるように作った。
エメがパン粥が好きという理由もあるが、甘いものが好きなギルドマスターのためにはちみつを入れた。
具合が悪いギルドマスターのために転移魔法を使って湖の近くにフルーツを収穫しに行ったり、キラービーから新鮮なはちみつを頂戴し、さらに鉱山都市にあるドワーフの宿で牛乳やチーズを分けてもらった。
ちゃんと賄賂として余っていたクッキーを渡したよ。
何度か市場で乳製品を見たが、どれも腐っていて結局ドワーフの宿を頼ってしまった。
ただよくよく話を聞いてみる納品業者は、魔物からミルクを絞って届けているだけと聞いたので、ギルドマスターの体調が良くなったらミルクが絞れる魔物を庭で買おうと提案しようと思った。ついでに卵も欲しいから卵を産む生き物も飼いたい。異世界と言ったらマヨネーズを作らないとね。
ただ現実問題日本の卵と違って鮮度が悪いため生で食べたら100%の確率で食中毒を起こしそう。
卵の食中毒とかそれそれ悲惨だよ···自分で育てて安全なマヨネーズを作りたいと思った。
「美味かった。ありがとう。ゲボッそういやその顔につけてる物はどうした?」
うん?あ!マスク!
「これは隊長に作ってもらったマスクだよ。これなら風邪を引いた人と一緒に過ごしても風邪が伝染るのを防いでくれるからね。」
「それならよかった。人間は弱いから心配だった。そういや隊長の気配がするがずっといるのか?」
あぁそうだった。獣人だから匂いでわかるのかな?
その件も説明しないと···なんて言えばいいのか···
実はこの前ギルドマスターの部屋で寝ていた酔っぱらいの隊長は夕方近くに起きたのだった。
初めは状況がわかっていない様子だったが、何が起きたのか説明すると次第に顔が青ざめていき「本当に申し訳なかった。」と土下座で謝られた。
むしろシンジュはドンドン、ガンガンとうるさい音が響くなか良く寝ていられるな〜と褒めたいくらいだった。
すぐにシンジュは許したのだがその後「実は俺クビになった」と爆弾発言をし、エメとシンジュは困惑した。もしかしてやけ酒??だからあんなに酔っ払っていたの?と考えたシンジュはなんて声をかけて良いのか分からず、結局帰らせることが出来なかった。そのため隊長はギルドマスターの部屋で暮らしているのだった。
だからこそ頼めば何でも裁縫をしてくれる。マスクを作ったり、日中はギルドマスターの代わりに竜化の手伝いをしてくれている。
詳しいことは私もわからないからとりあえず「隊長さんは職場をクビになったみたいで、家で暮らしています。」とギルドマスターに伝えた。
「は?ゲボッゲボッゲボッゲボッ」
あ!驚かせすぎて咳が止まらないみたい···体調が悪いのにギルドマスターに爆弾発言してごめんなさい。と心のなかで謝り、咳が止まるのを待った。
すると「でかい隊長はこの前な、俺が話した犬獣人が原因かもしれねぇ。」
は?どういうこと?
「犬獣人はドワーフ共和国にも一部領地があるんだよ。その領地は貴族と平民が極端に線引された領地で、そこの出身の貴族は平民が嫌いだ。それに隊長は不正を嫌うだろ?賄賂で釣れない隊長は嫌われてたからな。」
面倒くさい。それだけの理由でクビにするなんて···
その後1時間程度話した後はギルドマスターは熟睡した。シンジュもそのまま同じ部屋で椅子に座りながら寝たのだった。