ドワーフは自分勝手しかいない
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結局その後は泣き続けるエメと、必死に説得するギルドマスターにひとまずシンジュは折れた。
それに隊長もやって来たため急いでエステサロンの扉と向き合い『一度帰って』とお願いすると扉が消えた。
突然消えた扉にエメとギルドマスターは驚いて扉があった場所を触って確かめていた。
不審な動きをする2人を見た隊長が
「この状況はどうした?」とシンジュに質問をしたが、
『私から見てもどうした?って言いたくなる状況です』と言いたい。
扉があった場所の床を叩いたり、匂いを嗅いだり、舐めたり不審者にしか見えなかった。
馬鹿正直に『スキルの場所をを舐めてます』と言ったら2人が不審に思われそうだからここは分からないと答えておこう。
「私にも良くわからない。それより寝不足大丈夫?」
「あぁ大丈夫だ。ピンピンだぜ!親父を外に今連れてきてるのだが会ってくれるか?」
ピンピンなら大丈夫かな。外にもういるの?
「もちろん。連れてきてくれてありがとう。」
「今さぁ鉱山都市周辺が色んな意味で騒がしくてな、お前達が来れる状況じゃないから連れてきた。最近金で儲かったらしいが今度は違法鉱山騒ぎだ。鉱山ギルドは休む暇がないらしいぞ?」
と言いながらヤレヤレと首を振った。
シンジュはそれを聞いて一瞬で顔が青ざめた。
うわぁぁぁそれ完全に私のせいじゃん···ごめんなさい。
床を舐めてたギルドマスターが突然睨んできた···怖い。
とりあえず隊長に返事をしないと、
「ハァ、ハハそうなんだ。じゃあ玄関に会いに行けば良い?!」
ドスンッバタンッドスンッバタンッ
「おぃまだか?俺は暇だけど忙しいんだ。早くしろ。」と変な足音で無理やり入って来たのはシンジュと同じ身長ぐらいのドワーフだった。
「親父まだ外にいろって言っただろ?何で人の家に勝手に入って来た?だめだろう?」
父親というよりも悪さをした子供を諭すように隊長は父親を注意した。
「うっせぇな。俺がわざわざ来てやったんだから普通はもてなすだろ?んでぇどいつだよ!俺に依頼したいっていう者はそこの虎っ子か?」とあたり周辺を見回し、虎に向かって言った。
「私です。」
声が聞こえる方を振り向いた隊長の父親は驚いた顔をすると、「あ?嬢ちゃんかい?!随分ちびっこだな。話だけは聞いてやるが作るかは内容次第だからな。」と想定外のちびの子供にドワーフは驚いた。
シンジュは謎のプレッシャーをかけられたが、『欲しいものは全部言っちゃえ』。と開き直った。
駄目なら駄目で他に頼めば良いもんね。
「では、まず私がほしいのはフライパンですね。鍋とは違って平面の面積が大きくて片手で持つことが出来るものです。深さは入りません。浅いものが良いです。軽いも追加して下さい。鍋と一緒で火の上で使うので火に強い素材でお願いします。次はホットプレートです。フライパンを長方形のような形にしたもので火の上で使うのではなくテーブルの上に置いて使いたいです。魔石を使ってどこでも調理できる器具にしてほしいです。追加で油を使わなくても料理できる素材でお願いします。あとはお玉、菜箸に、、、泡だて器と濾し器、揚げ物用の鍋に、トン···」
「ちょっと待ってくれて。まだまだあるのか?」とドワーフは目を白黒させると、すかさずカバンからノートを取り出し羽ペンでメモを書き始めた。
急いでメモを書いているようでインクがそこら中に飛び散っている。
そりゃまだまだ欲しいものがあるに決まってるよとシンジュは思った。
なんたって前世が便利大国日本だったのだから、せめて自分の使うものは便利にしたいに決まってる。羽ペンもやめて普通のペンも作りたいな〜
「もちろん。でも1番はフライパンとホットプレートですね。」
この2つだけは今すぐ欲しい。
「お前さんは人間とドワーフのハーフか?」
あまりにもおかしな子供に種族を疑った。
「人間と人間ですよ。」何言ってるのだろう?目が悪いのかな?
眼鏡も新しいものを新調したほうがいいかもしれない。
そもそも眼鏡かけてる人なんてお金持ちくらいしかいないから、このドワーフは相当稼いでることが分かる。
眼鏡は金持ちしか持つことが出来ない装飾品と言われてるくらい高い。
ただし眼鏡をつけるのは男性のみで女性は眼鏡は恥だと言われていた。
なぜなら女性に勉強は必要ないからだ。女性が勉強する場合は家族の男性が養っていけない、貧乏、財政難などを思われる恐れがあった。
もともと目が悪い女性は災難であった。
「嘘言っちゃいけねぇぞ?それか人間とエルフのハーフか?知能がスゲェ。」
「いや、だから正真正銘人間です!!!」
うそだろう···と心の声が漏れ出たドワーフは
「お前さんは人間にしておくのはもったいねぇ。ドワーフにならねぇか?それだけ数々のアイデアが浮かぶなんてすげぇな。」とシンジュを褒め称えた。
まあ前世の記憶があるからね。なるべく前世のものが使いたいなと思ったが流石に作ることは出来ない。
「ありがとうございます。アイデアはあるのですが作るのことが出来ないのでお任せしてもいいですか?」
「いや、嬢ちゃんなら作れるはずだぞ。俺と一緒に作ってみないか?材料は俺が用意するし、ここに通ってやる。お願いだ。こんな天才的な子供を俺は放っておけねぇ。」と懇願した。
ドワーフって煽てるのがうまいな〜
「いやいや、ドワーフさんのほうが天才ですよ。」
「こうしちゃいられねぇ。俺は住まいをこっちに移すぞ。ハニーに相談して来る。おぃ息子よ!ハニーのところへ連れてけ。嬢ちゃんは2番弟子することに決めたぞ。これからよろしくな?」とパチッとウィンクすると隊長の腕を掴み引きずるように連れて行ってしまった。
ハニー?弟子?うん???どういうこと?!
作ってもらうのじゃなく自分で作るの?スキルが無くても作れるのかな?と大困惑した。
「お前やべぇな?あの人は自分の気に入った者しか弟子にしねぇぞ。」と2人の様子を見ていたギルドマスターが言った。
「いやいや勝手に弟子にされただけです。どうすればいいの?」
「ドワーフは決めたらそれに向かって一直線だ。諦めろよ?それより腹が減ったな。なんか作ってくれ!」
他人事だと思ってるギルドマスター···何だか疲れちゃった。
ドワーフって自分勝手な者しかいないのかな?
隊長も、その父親も、リボンの旦那さんも皆自分勝手だな···
これからドワーフと仕事する時は気をつけようと思うのだった。
シンジユもギルドマスターと同様にお腹が空いたため、
「エメ君ご飯作るよ?」と泣いていたエメに声を掛けると「うん。クッキー作る。」
あ!忘れてた。エメとクッキー作る約束をしていた。
そのために昨日バターの塩抜きをしてた。
「分かったよ。バターの塩分も抜けているはずだから作ろうね。」と言ってギルドマスターも強制的にキッチンに移動させて一緒に作ることになった。
次回は12月19日予定です!!