砂糖の生産は私はやりません。
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「何だこの甘みは!!!苦みが一切ない。舐めると口の中に優しい味わいが広がったと思ったらすぐに複雑な味が広がり、口の中で何が起きたのか分からなかった。」と目をバキバキにさせながらギルドマスターは叫んでいる。
うんうん情熱的でいいと思うけれど後ろを見てほしい。
倒れた家具達を···あぁお皿もだいぶ割れてるだろうな···幸い棚ごと倒れたからマシだろうけれど片付けるのが面倒だな。とシンジュは思っていた。
すると後ろに居た隊長が「俺にも一口くれ」と言ってエメが持っていた鍋から掬って食べさせた。
シンジュは止めるのが間に合わず「あぁぁぁぁぁぁぁ」と絶望の声を上げた。
想像通り今度は隊長が窓から外に向かって叫ぶと、せっかくキレイにした庭の土がボコボコにめくりあげられガタガタになった。
何でこんな事に???
あれ?なんで?あぁぁぁぁぁぁそうだった···調理中に庭にサトウキビを植えてみようと考えて無意識に結界を解除していた···
「何で私は解除したのかな?」と庭を見ながらシンジュは呆然としながら呟いた。
その頃エメは大人達のことを気にすることなく、自分で作った砂糖をちょびちょび食べているだった。
その後すぐにギルドマスターは復活し、周りの惨状を見て「隊長のお前が片付けろ」と指示を出すと、
窓を見て固まっているシンジュとお腹に鍋を抱え込んでいるエメを外に連れ出すと、頭を下げでシンジュに頼み込んだ。
「先程はすまなかった。あまりにも美味しかった。」
未だにぼーっとしているシンジュだが、
「いいですけど、今後は騒ぐなら外に出てください。」と答えた。
「分かった。お願いを聞いて欲しい。」
絶対に聞きたくない。砂糖を作ったせいでえらい目にあった。まあいつかは作ろうと思っていたから遅かれ早かれ騒動は起きていたと思うけれど、それが今日である必要はなかった。庭も棚も見たくない···
「聞くない。」
「お願いだ。俺の話を1度聞いて欲しい!俺にこの砂糖を売らせて欲しい。」
砂糖を売る?自分で作るの?
「どういう意味?」
「この木は虎族の領地なら年中どこでも生えているものだ。売ってもいいなら売りたい。虎族の領地は貧しくて売れるものがなかったがこの砂糖を売り出せるなら領地が潤う。」
あぁ、そういうことか。私が作らないなら別にいい。
「どうぞ。作り方を教えるので虎族の皆さんで作ってください。ただまたサトウキビはゆずって欲しいです。」
「もちろん。あと売上の40%をお前に渡す。」
「何でお金?」
「そりゃお前が考えた方法を俺等が無償で使うわけ無いだろう?」
売上は別にいらないけど···砂糖が流通すれば自分で作らなくていいし私にとってメリットになるけれど、何故か要らないとは言えなさそうな雰囲気だった。
ギルドマスターからの無言の圧が怖い···仕方がないので「分かったよ。売れた時だにけでいいよ」と答えた。
その後ギルドマスターと細かく打ち合わせをしたシンジュはサトウキビについては全部任せることにした。
そもそも作るのが面倒くさかったので、美味しく作ってくれるなら虎に任せたいと思った。
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シンジュに許可をもらったギルドマスターは早速故郷に伝令魔法で連絡をすると、両親から『早く作り方を教えろ』とすぐに返事が帰ってきた。
自分が行くのは難しいためどうするか考えていたところ先程とは様子が違った伝令魔法が飛んできた。なにもないところで落ちた···鳥も驚いているようで困惑しながら、「クフェ〜」と悲しげな声を上げた。
なぜだが嫌な予感がしたギルドマスターはおっちょこちょいの伝令鳥から手紙を奪うと、『僕たちが兄さんに会いに行くね!』と返ってきた。
2度見したギルドマスターはまた飛んできた伝令魔法を見ると『2人がお前に会いに行ったぞ!兄として面倒を見てやってくれ。』と父親から連絡が来て頭を抱えるのだった。
獣人国の虎族の領地からはここまで冒険者ではなければ2ヶ月はかかると思っていたがその後1ヶ月ほどでやってくるのだった。
次回は12月16日になります。