うるさーーーい
翌朝シンジュはうるさい声で目が覚めた。
思わず「うるさい」と叫ぶくらいガシャガシャとうるさかった。
耳を澄ませてみると、自分の部屋の真下で誰か言い合いをしているようだ。
部屋を閉め切っているにも関わらず騒音で目覚めたためイラッとしていた。
よく上の階や横の部屋がうるさくてクレームになることはあるがまさかの下の階からの騒音なんて···ハァ〜とため息を付いた。
シンジュは昨日ギルドマスターが帰って来てから長い時間お喋りをしていたため3時間程度しか寝ていなかった。それにまだ5時であった。眠い目をこすりながらクリーンをかけて整えると、うるさい声がする1階へ向かった。
隣の部屋で寝ているエメはこんな騒音の中で起きていなかった。
段々とうるさい場所に近づくにつれてハッキリ声が聞こえてきた。
「お前さ常識的に考えてこんな時間に来るなんておかしいだろ。」
「早いほうが良いだろう?それに今日はバッチリ整えてきたから大丈夫だ。」
「そういう問題じゃねぇよ。騎士団にもそんな馬鹿げた行動をする者はいねえだろよ。」
「騎士団は上司に媚びを売る集団だから何があっても呼ばれたら行くよ。例え女性といても行かないと怒られるからな。」
「は??それはおかしいだろ。そんなことしてるから街を守ってる騎士がいないんだろ?呼び出しした上司は何やってんだ?お前ら騎士団が働かないから俺ら冒険者が働く羽目になっているのを分かっているのか?」
とギルドマスターと誰かが揉めているようだった。
こんな朝早くからよく言い争えるなあ〜声がキンキンと頭に響いて痛い···ハァ〜とまたため息をついて仕方なしに半開きになっていた執務室を開けて
「うるさいので静かにしてほしいです。エメが起きちゃいますよ。」と声をかけた。
「あ?あぁ、悪かった。ただ悪いのはこいつのせいだ」と横を指し、その先を目で追ってみると何とドワーフの隊長が居た。
「隊長?」と声をかけてみると、
「うわぁーーーーーんやっと思い出してくれた。あぁよかった。本当に良かった。ありがとう神様!!!」と突然泣きながら拝み始めた。
以前見た隊長とあまりにも違う様子にドン引きしながら、ギルドマスターに助けを求めた。
「どういう状況?」
「それは俺が聞きたい。やっぱりお前ら知り合いだったのかよ。」
この前って?良く分からず困惑していると···
「この前一緒に飯を食ったろ?お前は知らないって言い張ってたがな。」
え?飯?あれ??
「あ!!!自称隊長さん?」
「は?なんだそれ?もしかしてお前って臭いで判別できない?」
臭いで判別できるわけないよね。あれ?獣人って臭いで判別できるの?嗅覚は良いって知ってたけれど···
「判別できないよ。自称だったでしょ?見た目は浮浪者だったもん。」
「浮浪者がなにか知らんがヨレヨレだったな。俺達獣人は臭いでオスかメスかまで判別できるからな。そうか、そうかお前は人間だったな、規格外すぎて忘れた。」
オスメス判断まで出来るなんてそれはそれで怖いけど···
「そういや何で隊長がこんな時間に来たの?」
「それはお前が隊長に伝令してくれって俺に頼んだだろ?夕食後すぐに連絡をしたらすぐにやってきた。あまりにも変な時間に来たから叱ってやったところだ。」
そりゃ叱られるよ···いくら伝令魔法を受け取ったからと言ってこんな時間に来るなんて···やっばりこの隊長さん変わってるよね。
「とりあえず私はご飯準備するので、隊長さんは任せて良い?あとギルドマスター寝てる?隈が凄い···」
隈のせいで大きな目が陥没して見えてる。
「隈ってなんだ?」
「今度教えるよ。とりあえず今はそこの隊長と寝てて!」と言ってわんわん泣き続けている隊長とセットにして無理やり魔法で寝かせた。
この魔法は以前シンジュがレンコンに埋もれた後、エメが眠れなくなったことで生み出した魔法であった。
いつシンジュが目を覚ますのか四六時中ずっと待ち構えていたことで、シンジュが起きてからも眠りが浅くなったエメのためににスリープ魔法を思いついた。
それ以来エメの寝付きが悪い時は魔法で眠らせていた。
だからこの2人にもスリープをかけてみた。うるさい大男2人を眠らせると、そのままシンジュは朝食を作った。
今日はミルクスープと、ミルクレープもどきを作った。
ミルクレープもどきは小麦と砂糖を溶いた種を薄く何枚も焼き間にジャムを塗って何層も重ねただけだが、最後にカラフルな生のフルーツを盛り合わせると美味しそうに見えた。
毎回似たようなメニューになってしまうため、本格的に食材探しほしたいな〜と作りながら思うのだった。