宿の食堂
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土日は冷え込むとのことだったので体調に気を付けてください。
フェルとライオスはその後夕食を食べるためにシンジュとエメの部屋に向かうとドンドンドンとドアを叩き無理やり起こした。
「お前らいい加減に起きろ。なんで開けたままなんだ!!」とまだ眠い2人は何故怒られているのか分からなかったが、強制的に夕食を食べるために宿屋の食堂に連れて行かれたのだった。
実はこのとき廊下には朝に見かけた猫獣人達が彷徨いていた。臭いでシンジュやエメを追ってきたのかもしれないと思ったフェルとライオスは慌てて2人を起こし、無事か確認しようとしたところ2人は無防備に鍵もかけずに寝ていたため怒ったのだった。
食堂は着くと獣人達であふれていた。すぐに空いてる席をライオスが見つけたが、店内が狭いためところどころぶつかりながら歩く。フェルやライオスは当たり前のようにぶつかるが、日本人のシンジュは癖でぶつかる度に軽く会釈しながら席に着いた。
席着くとすぐに「嬢ちゃんは何でいちいち謝った?」とライオスから聞かれた。
普通はぶつかったら謝るよね···この世界は違うのかな?祖国のせいにしよう。
「祖国ではぶつかると謝りましたよ。」
「普通は貴族は謝んねぇが···まあいいや。ここはな、肉が美味いぞ。ドワーフ共和国で唯一の獣人がやっている宿屋だ。料理長も含めて全員獣人だぞ?」
だから食堂に獣人達がいっぱいいるのかとシンジュは納得した。
「本当に獣人しかいないね。何でこんなに獣人が多いの?」
ドワーフ共和国はドワーフがもちろん多いが、次に多いのが獣人達ではないかと思うくらい多いと感じていた。それに冒険者だけじゃなくて一般人も居るようだった。
「あぁ獣人国がどこにあるか知ってるよな?川の向こうにあるが、オオカミやネコ、イヌ獣人などは獣人国とは別に自分達の住処を持っている。ドワーフ共和国の一部に住んでいる者もいれば、魔族の国や山の中に住んでる者もいるから必然的に色んなところに獣人はいるぞ。」
そういうことか!それで国としてはいいのかな?
祖国以外知らないから他国のルールとか全く分からない。ただ皆祖国よりも行動が早いと思った。
「そうなんだ。獣人達はフットワークが軽そうだもんね。」
「あ?フットワークなんだそりゃ?」
あ、、、また前世の言葉が出ちゃった。最近安全に暮らせているせいで前世が出ることが多いな、何て答えようか迷っていると「シンジュ様、ぼくもしりたい!」とエメに言われてしまったためまた渋々と説明することにした。
「フットワークとは行動が早いって意味だよ?考えるより先にまずは動いてみる、やってみるというような意味で使うよ!訳してフッカルって言う!!」
この説明でわかったかな?この前話したホワイト企業の説明より分かりやすいはずだけど···
するとエメよりも早く「難しいな。まあ俺は考えるのが苦手だからいつも動いてるぞ?」とライオスが答えた。
そりゃあライオスというよりも獣人は脳筋っぽいもんね、、、とシンジュは思ったが面倒くさくなりそうだったので口には出さなかった。
その後話していると食事が勝手に運ばれてきた。ドワーフの宿と同様にメニューなどはなかったが、違う点は獣人らしくドンッドンッ ガシャンッと置き方が雑だった。
シンジュはさすが獣人は見た目通りだなと思ったが、胸元に油が跳ねたことに気が付いた···うっわぁぁぁボロボロの服しかがもっていないのに···シミ抜き面倒くさいなと自分の服を確認していると、ライオスに向けて「あら?久しぶりじゃないの?貴方が来ないからつまらなかったわ。」と突然シンジュ達が座るテーブルにやってきたのは、豊満な胸を強調した謎の服を着ているチーターの獣人だった。
「あ?おまえだれ?」
「今夜久しぶりに仕事の後にどうかしたら?」
「お前と何にもねえぞ。食事の邪魔だから消えろ。」
「なに?恥ずかしがっちゃって!!そこのハイエルフも一緒にどう?」
2人の会話が全く噛み合っていなくてシンジュは大混乱していた。
チーターは会ったことある、、、ライオスはない、、、意味が分からない···
それにあの服ってビキニアーマーっていうのかな?面積狭すぎて服を着てる意味ないと思う。よく見ると自分で服を切ったのか糸が解けてピョンッピョン出てる···ダサすぎてやばい。それに身体が冷えてお腹壊しそう···
女の子は身体を冷やしちゃ駄目だって習わなかったのかな?
「貴方みたいな下品な女には興味ありませんし、貴方の口から唾が飛び散ったのですが食事を変えてもらっていいですか?」とフェルが冷たく言い放った。
シンジュは正論を述べたフェルにパチッパチッと称賛した。
運ばれた食事にはチーター獣人が喋る度に唾が飛び散っていた。それになんだかチーターが臭すぎて最悪だった。
胃でも悪いのなか?よく口が臭い人って胃が悪いって言うよね?それとも普通に口臭かな?生活魔法が使えれば歯を磨く必要ないけど、使えないと歯を磨かないとね。もしかして歯肉が腫れてる?!とシンジュが色々考えている間も、ずっとチーター獣人はうるさかった。
「はあ??なに言ってんの??エルフのクセにふざんなよ?せっかく私が誘ってあげたのに後悔しても知らないわよ!そこの小汚い子供とお似合いよ。ライオンさんはもちろん会ってくれるわよね?」
「会うわけねぇだろ。さっさと消えてくれ。」
「会ってくれるの?ありがとう。じゃあ待ってるわね。305号室よ。」と言って立ち去っていた。
シンジュは全く噛み合っていない会話に聞いてるだけだったが頭痛がした。それにライオスは了承してないのに行くことがチーター獣人のなかで決定事項になってた。
頭のネジが何本か飛んじゃってるのかな?あと会話の中で自分達を汚い子どもと言ったことも許せない···ハア〜今日はほんとに散々だな。
こんなにドワーフ共和国って治安が悪いなかな?
その後チーター獣人が去った後は空気が最悪だった。誰も言葉を発さないまま時間が過ぎ、ようやくライオスが口を開いた。
「あぁなんか悪かった。俺はあの女を全く知らない。ライオン族の誰かが手を出したかもしれない。」
シンジュは意味がわからず首を傾げた。
「ライオン族は女を1人に決めない。基本的にハーレムを作るから候補が沢山いる。候補の中からハーレムに入れる者を決める時は、実際に手を出して決めることもあれば、手を出さずに女を捨てることもある。だからあの女はライオン族の誰かが手を出した1人かもしれん。」
確かにライオンはハーレムだけれど···相性を見てから決めるってことかな?それよりもライオスもライオンだから可能性あるよね?
「ライオスもライオンだから手を出した可能性もあるでしょ?」
「あ?俺か?それはないぞ!俺は兄弟が多いから下手に手を出すと大変なことになるからな。そもそも子供を作ることを禁止されてる。」
意味が分からなかったがとりあえず納得した素振りを見せて、まずは食事が再び運ばれてきたため食べることにした。唾がかかった食事は店員に素早く回収されて熱々の食事がドンッドンッガシャン目の前に置かれた。
届いたものは肉の塊に塩がかけられているだけだった。ドワーフ共和国では香辛料が大量にかけられていたが、それが塩に変わっただけで肉の硬さや大きさはむしろ獣人の宿の方が酷かった。
結局全くナイフが刺さらず、今回はフェルに切ってもらい2.3口で終わりにした。
「なんだ?食欲ないのか?」とライオスが心配した様子でシンジュに聞くと「いや、噛めません。」と正直に伝えた。
何度も奥歯で噛んだが噛み切れず、最終的には少しほぐれた肉の繊維が奥歯に挟まって最悪だ···
「人間は貧弱だな。じゃあ他に頼むか?」と言われて勝手にまた違う形の肉の塊が同じように塩で味付けされており、同様に噛むことが出来ず食べれなかった。
その後残した食べ物はエメとライオスのお腹に収まり部屋へ戻った。
シンジュは何とも煮えきらない食堂での会話や沢山浴びせられた嫌な言葉が頭をぐるぐると回ったが、久しぶりに1日中動き疲れていた。帰ってきてすぐに寝てしまったエメに「おやすみと」と声を掛けると自分も早めに就寝するのだった。
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