ルネ(ハーフエルフ)接触
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収穫した植物を改めて振り返るとミゾソバは小さなドゲトゲがいっぱいあって採るのに苦労しましたが、2種類ともに特徴が素晴らしいものだったので思わずシンジュはニヤけてしまった。
それからシンジュとエメは夕食を作った。
今日は芋を茹でて半分に割ったところにバターとシソを手でちぎってふりかけた。さらにその後クレソンを鍋いっぱいに茹でて塩をふりかけたものを食べた。
クレソンは相変わらずな味だが、芋にバターとシソの組み合わせは美味しかった。
でもやっぱり新鮮な卵と油をゲットしたらマヨネーズを作りたいと思った。芋にはマヨネーズが欠かせない!!!
「エメ君おいしい??」
「うん。このシソ?へんな匂い?だけどすごくすき。」
「シソは変わった匂いだけど、美味しいよね?エメ君は大人だね!!」
「ぼくおとな?もっと大きくなるためにたべる。」そう言ってもぐもぐと一生懸命頬張るエメを横目で見ながら、今日からは結界テントを広めに作って危険回避のために一緒に寝ることに決めた。
攻撃される可能性を視野に入れて···今後は武器等の準備も必要ではないかと感じていた。エメの成長痛が終わったら、一度街へ戻ることにした。どっちにしろアイテムボックスに虫の魔物が大量に保管されているため、ギルドに買い取りしてもらいたいと思っていた。···その後必ず武器も買おうと決めた。
それから滞在予定だった2日が過ぎ、数日間警戒しながらエメと暮らしていた。
穴に住む者達と接触した翌日に例のハーフエルフが近くから様子をうかがっていたかだ。初対面の時のような言葉の暴力を言われることはなかったが、常に監視されていたため移動することが出来なかった。
最近ではシンジュとエメに慣れたハーフエルフは、食事を食べていると物凄く近づいて来るようになった。さらにじーっと口元に運ぶ様子まで見られていて食べにくい···
しまいにはハーフエルフはお腹を『ぐぅ〜ぐぅ~』と盛大に鳴らした。関わり合う気はなかったが痩せた細った様子が不憫に思ってしまった···魔法で攻撃されたことは許せないが、仕方無しに自分達のご飯を分け与えることにした。
1度ハァ〜とため息を付き、「ハーフエルフ!」と呼ぶと流石に警戒をし威嚇されたが、「これ、食べる?お腹いっぱいだから処理してくれるといいのだけど?」と伝えると、
「は?毒か?俺を殺そうとするのか?人間が?その手には乗らないぞ。でも俺が食べてやろう!」
と強気な発言をしつつシンジュの器を横取りし、手づかみで芋をパクっと一口食べた。すると今度はふぇーーーんと子供のように泣き出した。
シンジュはその様子に情緒不安定すぎて怖いと思った。この世界は情緒不安な者が多すぎる···ストレス?環境?食事?何が原因で情緒不安になっているのか自分も気をつけなければと考えた。
「おい!子供!!!」と今度は突然怒鳴ったハーフエルフにシンジュは疲れた表情を見せ「なんですか?」と答えた。
すると、「あのさ、この前は、あの··うー··ん···態度が悪くてすまんんん」と泣いて怒鳴って土下座したハーフエルフに冷めた目をしたシンジュがすかさず「別にいいですよ」と言った。
「よくないだろ?お、れお前に攻撃しようとした。竜の子供もごめんな、罰してくれれれ」とさわぎ始めた。
疲れ切ったシンジュは「気にしてないので、ご飯食べちゃって。」と促した。
「ぅぅぅありがとう」と言ってまた泣き出した。
シンジュは毎日毎日監視されることに疲れていた。
折角作った美味しいご飯も美味しく食べることが出来ず、さらには周辺の散策も思うようにできていなかったため、いい加減に帰ってほしいという気持ちを込めて食事をあげたが、情緒不安さに疲れた。今は泣き止みエメと張り合いながら食べている。
「お前はいつも食べてるからこれは俺が貰うぞ?」
「やだ、おじさんこれはぼくの!」
「誰がおじさんだ?これは俺のだ」
と騒いでいるハーフエルフに「子供か!」と思わずツッコミそうになった。
「ごはんすげぇ旨い。小僧は毎日こんな美味いものを食べてんのか?」
「そうだよ。シンジュさまはすごいんだ。」
「どんなところが凄いんだ?」
「やさしい、つよい、ごはんおいしい。ぼくの神様みたい。だからお兄さんが食べるものはないよ。」
「神様いいな!!!俺も食べていいとお前の好きなシンジュ様に許可もらったぞ!お前が食べないな、食べちゃうからな?」
「やだやだ、ぼくのものだー!!!」
それから食べている最中はハーフエルフとエメはご飯を奪い合いながら食べた。
その後騒いだことで興奮してしまったエメは寝る時間になっても寝ず、2人でハーフエルフから話を聞くことになった。
シンジュは鑑定魔法で事情を知っていたのだが、あまり賢くなさそうなハーフエルフから鑑定魔法の内容と情報を擦り合わせるために直接話を聞くことにした。
「俺はハーフエルフだ。見た目は人間だろう??耳が尖ってない···母がエルフで父が人間だ。両親は何処かに住んでいて、俺だけエルフの里に置いていかれた。ただエルフの里は閉鎖的で自分達の種族以外を受け入れない。たまに冒険者をするような変わったエルフ達は、俺達のような半端者を受け入れてくれるが····まあ成長して里を追い出された。というよりも耳の尖ってないエルフはエルフじゃないから秘密裏に殺されそうになった。んで逃げた先がこのあたりだったんだ。最初は1人だったけど、この辺りには俺と同じように逃げた者たちがたくさん暮らしていた。
理由は様々でハーフドワーフや、ドワーフとして才能がない者や、エルフなのに魔力がない者など皆訳ありだ。
しかもこのあたりは強い魔物が多くて···死んでいく者が多い···だから皆で結束して一緒に暮らし始めた。
穴の下はドワーフの地下都市をイメージして作られてるんだぞ!
まあ一部のドワーフの憧れってやつだよ。ハハ
まあ俺達は日々必死で、、、お前に当たってしまった。」
「はぁ、、別にいいですけど鑑定魔法で大体わかりますから·····」
うーんとシンジュは考えた。若干鑑定魔法と違うなぁと思ったのだ。成長して里を追い出されたっていうよりも、貴族に追われて里を自分から出て行った気がするけど···双方に聞かなければわからないことだからなあ〜とりあえず信じても大丈夫かな···ただ地下都市ってなんだろう?
「お前鑑定使えるのか?本当に人間か?」と目を丸くし驚いた。
「人間ですけど、それで貴方はどうしてここにいるの?」
「あぁなんだ、子供に手を出したことを怒られてな、、、お前達を監視するついでに謝りに来た。ただ数日はお前達に対して怒りが治まらなかったが、お前達を見ていたら自分が恥ずかしくなった。本当に悪かった。」
「まあ、良いですけどね。バカ正直に全て話さなくても大丈夫ですよ。それよりもハーフエルフさんはご飯食べれてますか?」頬がコケて痩せすぎてる···これじゃ魔力も体力も回復しなさそう。
「俺か?うーんどうだろう。前に比べて拠点があって安全だから食べれてるぞ。俺は魔法が使えるから魔物を狩りに行く事があるが、、、一緒に暮らしいいる奴らは弱い者がほとんどだ。このあたりは魔物が強くて食べれるものがほとんどないからみんな痩せてる···移動距離を増やせば殺される可能性もまだある、、、かと言って近くで魔物を狩れば血の臭いで魔物が集まって拠点になにかあったら···と思うとなかなか食料の調達ができねぇ。」と悔しそうに呟いた。
「ちなみに拠点は何人いるの?」
「15人いる。小さな子供もその中に3人ほどいる。」
「わかった。明日の朝に貴方の住処に向かおうか?」
シンジュはこのままご飯をあげ続けたら居座られそうだと思ったので、帰るように促すことにした。
「は?どういうことだ?」
「私達も持っている食料は少ないけど、少しならあげれるし、住処までの道に食べられる植物あるから採ってこう。」
「いいのか?」
「もちろん。困ってるならお互い様だよ。それにもし住処で何か攻撃されたら返り討ちにするから、、、あとハーフエルフは夜どこで寝てるの?」
「木の上に結界張って寝てる!」
それなら大丈夫か!「わかったよ!気をつけて寝てね」
「じゃあまた明日。」
眠りかけてるエメを起こし、結界テントで2人で眠った。
その頃ハーフエルフはさっき食べた食べ物が忘れられなかった。何も食べれない日々がザラにあり、魔物は獲ってきてもうまく処理ができず臭い。さらに15人もの食事を賄うには少なすぎて、2.3口しか食べられない。
そのため先程食べた食事が美味しすぎて感動した。
明日は住処へ久しぶりに帰る。楽しみだな〜!と寝れない夜を過ごすのだった。
次回は明日11月9日になります