11.竜人族の男の子視点
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竜人族の男の子視点
バタンッと閉められた扉から目が離せない。
いまだに心臓の音がドクドク···
思わず胸に手を当てスーハーと呼吸をする。
思わず「現実?」と呟いた。
改めて先程の出来事を思い出すと、とてもとても緊張をした···いきなり部屋に人が入って来た時は驚いた。思わず後ろに後退ってぶつけて、今になって痛い···
でも部屋に入ってきたのが人間だった···初めて見た。
すごくすごく小さかった。それでも僕よりは大きけれど···里のみんなは大きくて怖かった。このお姉さんは何者だろう?
僕食べられちゃうかな?売られちゃう?···と思った。
だけれど話を聞いていると、
あれ?僕をいらないって言わないの?
僕も一緒に連れてってくれるの?
お姉さんも1人ボッチって言っていた···僕と同じだ。
僕もずっと1人。さみしい。
お姉さんと一緒に行きたいと思った。
そういや目の前から甘い匂いがする。こんないい香りの物を嗅いだことがない。フワァ〜と香りが···幸せな気分になる。
ごはんっていうものをくれた···なんだろ?食べれるって言ってた。フルーツってなに?初めて食べる。
勇気を振り絞って勢いよくガブッと一口食べると『甘い』、、、ガブッカブッモグモグ···ゴクンッ 食べるのが止まらない!!!
物凄く甘くて美味しい!!!グスンッ
甘い物···初めてだよぉ···ぽたぽた···涙が落ちる
いつもジャリジャリしていた。
たまに出される一部が青?緑?色のパンっていうやつが美味しいと思っていたけど、これは比べ物にならない。
『おいしー、おいしい、おいしい!!!!』
身体の隅々に力が湧き上がるような不思議なパワーを感じる。
あれ?なんかさっきから僕変だ。···シクシクッ···涙が止まらない。何があっても泣かなかったのに···どうぢてぇ?
腕でゴシゴシと涙を払っても止まらない。
なぜか分からないけど、
『このお姉さんなら大丈夫な気がする。』
ルナタシア視点
バタンッと扉を閉めて部屋から出た。 自分のテントに入り思わず「竜人の男の子可愛い子だったなあ。」と呟く。
目がくりくりで怯えてはいたけど、表情がコロコロ変わるから面白かった。
あと目の色に驚いた。スフェーン色···前世で調べたことがあった宝石と同じ色だった。
黄色〜緑色の宝石で角度によって虹色に光り···本当に美しい色。
この子の目の色は緑色が強かった。そのような色はスフェーンの中でも希少価値が高く、中々手に取ることができない。そんな宝石と同じ色でキラキラと輝いていた。
鱗も同様に輝いていて綺麗だった···竜人の男の子はこれから磨いていけばダイヤモンド以上に輝く存在になりそう···一緒に行動できればいいなあ。
でも私と一緒に行動するかについては決断は本人に任せよう。
厳しいことを言うって?
決断は自分で決めないとね!!!
私が決めたせいで後で文句を言われるのは嫌だ···但し丸投げはしない。そんな無責任な大人になりたくない。
祖国の大人は強制的に私を従わせていたけれど···それだと成長できない。自分で考えられない大人になってしまう。幸い私は前世を思い出すことができてよかった。
私はあの子が悩んだらメリット・デメリットをしっかり伝えていこう。
「ふぅー」
祖国を思い出したら嫌な気持ちになってたのでここで一息付くことにした。ご飯を食べようとゴソゴソとアイテムボックスからフルーツを取り出し、まずはアケビを割れ目の部分からパカッと半分に割り一口「モグッ」と食べてみる。
物凄くあま〜い。ニヤニヤと顔が緩んでしまう。
前世では種ばかりで食べにくいイメージだったけど、この甘さが今の身体にちょうどいい。
ただやっぱり黒い種はペッと吐き出して···うん。対応に困った。仕方ないのでアイテムボックスにしまう。
それからポポーも種入り、山葡萄も種入り···恐怖の種祭り(笑)
いちじくのみ種無しで皮ごと食べれるタイプのいちじくだった。柔らかくてとても美味しかった!!
あぁ前世に食べたいちじくのタルトが食べたい···
それからひたすら黙々と食べ、随分と時間が経った。
今日はもうここで寝て、明日川を渡ってドワーフ共和国に入ろう。
一応今日上空から見た時は船があるようだった。だが身分証の確認があるかもしれない。それはとても面倒···『あの子と一緒に飛んでみよう』と考えた。もし無理ならその時は船を使おう。
あぁそうだ!あの子には名前が必要だよね!!
名前が無いととても不便だから勝手に名前を考えて、ついでに自分の名前も変えることにした。
うーん、まずは自分の名前を···前世っぽくしたいなぁ〜
シンジュとかにしようかな。真珠が好きだったから、、、うん在り来りな感じだけれど、可愛い気がする!!!
前世を思い出したルナタシアは、自分の名が悪役令嬢のような響きで好きではなかった。これから元の名を忘れシンジュとして色んな意味で世界中に知名度を上げていく。
次にあの子は鱗が虹色だったからレインボー、、、うーん微妙。
目の色がスフェーンだから、スフェにしようかな?
うんこれは流石に酷いよね。名付けのセンスがなかった。同じ緑色の宝石であるエメラルドから名付けてエメにしよう!!
うんエメ君!いい響き!簡単で覚えやすい。
簡単に決めちゃったけど、本人に聞いてみよう!
エメラルドから付けられたエメ君だが、安易に名前を付けられたのにも関わらずとても気に入り、至る所で自分の名前を宣言した。
エメラルドという大層美しい宝石から取った名だと···この世界は宝石と言えばダイヤモンドが主流でエメラルドは採掘されていなかった。
ただエメ君の自慢により、ドワーフ達がこぞってエメラルドを採掘することになる。エメラルドはいつの間にか『エメの宝石』という名で呼ばれ大人気を博すことになる。
また『真珠』も同様に湖で淡水パールとして養殖が盛んになる。人間の国では海水から真珠が取っていた国があった。しかし天然物であるため数は取れず歪な物が多かった。それでも珍しい真珠は高値で取引されていた。
しかしドワーフ国とエルフ国にまたがる湖で養殖栽培されるようになると価格が下落する。
なぜなら淡水パールは見事な球体でどれを取ってもクオリティーが高かった。
高級淡水パールになるにはとても時間がかかった···
しかし淡水パールに携わる人々は諦めなかった。この仕事に携わるメンバーは主にドワーフ、エルフが中心だった。ドワーフのメンバーはドワーフが得意としている採掘や鍛冶が苦手な者が中心で、エルフも狩りや弓矢が苦手な者、魔法が得意ではない者が集まった。主に種族の中で落ちこぼれと言われるメンバーだった。だからこそ自分たちが輝ける場所が欲しかった。途中困難に打ちのめされても、エメ君の昔話を聞いた者たちは必死に這い上がり食らいついた。
それによって素晴らしい淡水パールが出来上がった。
前世の人間が見たら間違いなく海水で作られたパールよりも高級品だと思うだろう。それもそのはずである。一切漂白せずに真っ白でピカピカと光る真珠!!!
誰もを魅了する真珠の完成である。
後日「真珠」見たシンジュ本人は思わず泣き、周りも嬉し涙を流しカオスな状態に陥った···
シンジュは違う意味で泣いていた。「安易に真珠」がほしいと言ってごめんなさいと。
自分の食事が終わり、男の子もそろそろご飯を食べ終わった頃かな?
ゆっくりと立ち上がり様子を見に行く。外に出ると日が落ちて暗くなっていた。ヒンヤリとした風が頬に当たる。「寒い」と呟き、急ぎ隣のテントへ。
コンコンコン
「はーい」
「お!!!」中から声が聞こえた。
「入るね。ご飯は食べれたかな?」
頭をブンブンと全力で返事をくれた。ふふ可愛い。
ご飯を食べてくれて一安心。身体があまりにも小さかったので心配だったが、ここから身体を成長させてあげたいと思った。とりあえずまずは聞きたいことを質問をする。
直球で「これからどうする?お姉さんと行動する?」
「はい」元気よくエメ君の声が室内に響き渡る。
「じゃあこれから一緒によろしくね!」とニヤける顔を必死に隠しながらエメ君に伝える。その後名前を付けたことを話し、これからの説明をした。
君の名前が無いのは不便だから名前を決めてみたよ!
君の名前は目の色がエメラルドという緑色の宝石に似ているからエメね!どうかな?
私もルナタシアからシンジュという名前に変えたからよろしくね。私の事情は落ち着いたら伝えるね。
とりあえず今日はここに泊まって、明日ドワーフ国に向かうからね。もう眠いでしょう?
今はたっぷり休んで!お手洗いは外で!身体にも結界を張っているから安心して外でトイレができるからね。では今日はおやすみ。明日からよろしくね。
バタンッと扉を閉め、一通り説明をした千織は部屋から退出した。
隣の部屋に向かう途中、「エメ君···声が出るみたいでよかった」と興奮しながら呟いた。明日から始まる新たな生活に大いに期待を持った。
自分のテントに付くと···眠いむにゃむにゃ···おやすみなさい。と疲れからすぐ寝てしまった。
エメくん視点
ドアが閉まったところぼーっと見つめ···
今日は色々あった···
捨てられるのは悲しかったけど、
僕の名前がエメに決まったり、シンジュ様とこれから一緒に行動できることになった!嬉しい!!1人じゃない。
捨てられないように頑張らないと。
今日はもう寝よう、安全に眠れるなんて久しぶりだ。
おやすみなさい。
次回は10月17日が投稿予定です!
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