表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
さようなら、また会う日まで  作者: たま


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

53/60

さようなら、また会う日まで

一年後、私たちは結婚した。

ジョセフはブラッドリー商会の会頭に就き、私たちの結婚式は商会の威信をかけた一大イベントとなった。

新作のドレス、グラス、ワインの数々。

新郎新婦のお披露目というより、新商品の発表会に近かった。


「ティムの時以上に、大きくする」


それが、ジョセフのささやかな決意だった。

ティムは、私にとってもジョセフにとっても、決して消えない存在。

だからこそ、私たちはそれを抱いたまま、次の一歩を踏み出した。


新婚旅行先は、ティムが眠る場所。

商会本拠地の街には立派な記念碑があるけれど、あれは形式的なもの。

本当に彼が眠っているのは、最初の私が葬られた場所の近く。

流行り病で亡くなった多くの人々と一緒に、場所さえ曖昧な集団墓地の跡地。

その墓地の一角に、新しくティムのお墓を作ったのだ。


そんな大きくない街。

そんな大きくないお墓。


ここにブラッドリー商会の元会頭が眠っていると知ったら、皆驚くだろう。

私たちにとっても、頻繁に訪れるのは難しい場所だ。

でも、きっと、ティムが一番戻ってきたかった場所。

その町で小さな花束を買い、墓標に置く。


ティム、元気でいますか?

私、と会えたかな?


ねぇ、ティム。

私、ジョセフと結婚したの。

これから、どうなるか分からないけど、幸せになるね。

ジョセフの事も幸せにするね、貴方が私を幸せにしてくれたように。



手を合わせ、深く一礼して、私は墓地を後にする。

ポプラ並木の下で、呼び止められたような気がしてわず振り返った。

一瞬、目を凝らし、もう一度見る。


すると確かにそこに、ティムと夢の中の女性、ううん、かつての私が立っていた。

二人寄り添って、微笑みながら手を振っていた。


――そうであってほしい。


それはきっと、私の願いが見せた幻。

それでも。


「…今、ティムが…」


ジョセフが、ほとんど聞き取れないほど小さく呟きながら、つないだ手をぎゅっと握りしめた。

それが何を意味するのか、私だけじゃなく、きっと彼もわかっていた。


涙がこぼれそうになる。

でも――堪えた。

だって、私は貴方が大好きだったから。

その気持ちは、今も胸の奥に、宝物みたいにしまってある。


そっと、隣にいるジョセフを見上げる。

目が合って、二人して微笑んだ。


その笑顔を見た瞬間、あぁ、幸せだな、と思った。

隣にいるのがジョセフで良かった。

ティムと同じくらいに、大切だと思える人がいる。


きっと愛は、形を変えても

あの日のぬくもりのまま、私の中で息をしている。


風がポプラの葉を揺らし、陽射しが二人の影を長く伸ばす。

その影は、私達の幸せの形ーーゆるりと静かに揺れていた。


「…うん、そうだね。

彼らからの…お別れの挨拶、かもね」


わざと明るい声をだして、つないだ手をぶんぶんと上下に振りかざす。

ジョセフが笑って、誰もいない後ろに手を振る。

私も笑って手を振る。


そして、前を向いて歩きだす。

私達が紡ぎだす未来へ、と。


さようなら。


さようなら、また会う日まで。

向こうで笑顔で会えるその日まで。

その日まで、私もこちらで頑張るね。

いつもの笑顔で、待っていてね。

きっと、沢山お話することがあると思うから。

今は、ジョセフと私はここにいるから。

だから、また会う日まで、楽しみにしていてね。


お終い


お読みくださり、ありがとうございました。


本編はここで終わりです。

次に、番外編としてジョセフの話、ルーシィの話、マリアの話が続きます。

(本編53話、番外編7話)

最後までお付き合いいただけると嬉しいです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ