第9話 スミレとペアルックでお買い物
マックスが風呂から上がってボタンが服を持って行った後、スミレは目を覚まし大きな欠伸をしてボーとする。
「ふわぁ〜、……あれ? マックスが居ないわね、そろそろ夕飯の時間ね。 ふふ♪」
ベッドから立ち上がるとスミレはお腹を擦りながらヘラヘラと恥ずかしそうに笑いながら居間へと向かう。
「お、起きたか夕飯出来てるぞ。」
スミレが俺を見て固まり、思考回路が暫くは停止したかと思えばハッと我に返り口をパクパクさせ悲鳴を上げる。
「い、いやあああああああああ!!」
「何だ? 急に悲鳴上げたり走り去ったり忙しいな。」
「そんなことより夕飯はカレーっすね。」
「マックスさんのパーティー加入のお祝いとして沢山作りましたからいっぱいおかわりできますよ。」
「おっしゃあ! 沢山食うぞ!!」
「一人増えたくらいで皆はしゃぎすぎではないか?」
「シャクヤク団長、それは無理もないかと。」
「それもそうか。」
俺は花の乙女団のパーティーメンバー達と楽しく夕飯を食べている時、前のパーティーのミニッツ、センシャ、マホは暗い森林にて食料を探しまわっていた。
「ぜぇ……はぁ……これだけ探しても木の実一つ見つからねえ。」
「あの鬼! 絶対私達を餓死させる気としか思えないわ!!」
「か、身体中が悲鳴あげてるし筋肉痛が痛過ぎる!」
「おらどうした! 自然の中じゃ食べ物一つ探すのもこんなに厳しいんだ、サボってる暇があるなら集中して探しやがれ!!」
「「「ひぃっ!!」」」
(マックス助けて!!)
夜が明け俺はシャクヤクの部屋に呼ばれ、そこにはスミレも居た。
「スミレも呼んでたのか。」
「ああ、昨日のことでマックスには謝らないといけないからな。」
「謝るって何を?」
「決まっているだろう、このギルドハウスにはマックスの専用の服や食器が無かっただろう? だからこれから相部屋のスミレと一緒に買い出しに行ってもらいたい。」
「何だそう言うことか、気にしなくていいのに。」
「ま、他に早く準備しておいた方がいい物もあるしね……」
スミレは俯きながら顔を赤くしながらブツブツと喋る。
「さて、これくらいあれば色々揃えられるだろう。 余った金はマックスの自由にして構わないぞ。」
「随分大金だな、一千万はあるな。」
「じゃあ行きましょうか。」
(これってデートだよね絶対、ベビーグッズ買わなきゃ。)
俺とスミレは街へと繰り出すと周囲の人達が二度見する中、スミレは何時も以上に赤面しながら隣を歩く。
「凄い注目浴びてんな、やっぱり花の乙女団は可愛い娘や美人な人が多いから皆見惚れるんだろうな。」
(違う! これ絶対そんなんじゃない!! 今注目されてるの私と同じ服装のマックスでしょ!? これじゃ私が無理矢理着せたみたいに見えるじゃない! 少しは恥ずかしがりなさいよ!!)
「ん、スミレ大丈夫か? 顔が何時もより赤いけど熱でもあるのか?」
「だ、大丈夫よ……それより恥ずかしくないの?」
「何で恥ずかしがる必要があるんだ? 男がスカート穿く国だってあるのにスミレって偏見持つタイプなのか?」
「あ、ううん……そうじゃなくて……」
(今私最低なこと言ったのかな?)
そこへジョギング中の男性が通りかかるとスミレは目にも止まらない速度で男性を殴り空中で高速回転させる。
「ありがとうございます!!」
何故かお礼が聞こえたかと思えば男性は地面に転がっていた。
「え、おいおいおいおい!? スミレ何やってんだ!!」
「はっ! すみません大丈夫ですか!?」
「うご、ぐげっ! おっふう!!」
「うおーい! 謝りながら殴るんじゃない!! てかこれもう男性嫌いとは別の何かだろ!!」
男性に馬乗りになり殴り続けるスミレを羽交い締めにし引き剥がすと男性は恍惚な表情で嬉しそうに気絶した。
「うえーん、マックス怖かったよぅ……。」
「怖いのはお前だ……。」
兎にも角にも俺達は店に到着すると目的の品のあるエリアまで足を運ぶ。
「さて、服を探すか。」
「いらっしゃいませ、服をお探しですか? でしたら今流行りの」
と男性店員が近付いて来たかと思えば喋っている最中にズドンと音が響き窓硝子がガシャーンと割れ男性店員は外へと飛び出していた。
「きゃあああああ! 二階から人が!!」
「憲兵! 憲兵を呼べええええ!!」
店の外では男性店員が落ちて来たことで騒ぎになり、スミレはやってしまったことに顔を青くする。
「どどどどーしよー! あの人死んでないよね!?」
「さあな。」
「やっと見つけたぞ、よくも俺達の冒険者資格を剥奪させてくれたな!」
「へ、変態だあ!!」
スミレの行動に困惑していると冒険者ギルドにて問題を起こした三人が何故か女性者の服を着ており俺の前に立ちはだかる。
「何だお前ら、そんな恰好して恥ずかしくないのか?」
「「「おめえに言われたくないわ!!」」」
(くそ、俺達を変態扱いしやがって……まあいいお陰様で花の乙女団の“断罪のスミレ”に女装すればお近付きになれると陰から観察出来たのは収穫か。)
「おいおい、俺は着る服が無くて着てるだけだぞ? 理由も無く女性物の服なんて着るわけないだろ。」
「だからって着ないだろ普通。」
「貴様ら! そこで何をしている!!」
そこへ憲兵が駆けつけ女性物の服を着た三人と俺を不審者として連行すべく近付いて来る。
「け、憲兵さん?」
「ち、違うんすよこれは。」
「そ、そうそう俺達趣味で着てるだけっすから本当ですから。」
(なんか面倒な事になってきたな、そうだいい事考えた。)
「憲兵さん助けてください! そいつら男に無理矢理女性物の服を着させて愉しむ愉快犯です!!」
「「「はあ!?」」」
「なにっ! 確かに此処最近増えてる事件だ、署までご同行頂こうか?」
「「「ふっざけんなお前!!」」」
「因みに男性店員さんは勢いあまって外に……うぅ……」
「なるほど合点がいく、強制羞恥罪及び殺人未遂で逮捕する!」
「「「ああああああああ! 違うんですって憲兵さん、てめえ覚えてろよハーレム野郎!!」」」
「ご協力有難う御座いました。」
三人は憲兵に手錠を掛けられ俺を睨みながら連行されて行く。
「よし、買い物の続きだな。」
「そうね、何だったのかしらあの変態……。」
俺はサイズの合う男性物の服を着ると幾つか同じ物を買い、余ったお金でスミレは妊婦用の服やオムツ、ガラガラなどを買い二人でギルドハウスへと帰還した。