第3話 マンイーター
花の乙女団のギルドハウスにて俺は紅茶を嗜んでいた。
「この紅茶美味いな。」
「口に合って良かった。」
「ところで、結構時間経ってるみたいだけど他のメンバーはまだ帰って来ないな。」
「そっすね、“マンイーター”の討伐にしては時間掛かり過ぎっすね。」
「俺が見て来ようか?」
「そうだな、今から準備するよりマックスに言って来てもらった方が早いな頼む。」
「分かった。」
俺は花の乙女団に頼まれ帰りの遅いメンバーを捜しに行く事にした。
一時間程前、花の乙女団の残りのメンバーは冒険者ギルドにてマンイーターの討伐依頼を受けていた。
「ふうん、マンイーターにしては賞金が高いわね。」
花の乙女団の“槍術士スミレ”紫色の髪の毛と瞳をしたツインテールで胸は控えめな膨らみである事を気にしており、男嫌いな一面がある女性、マックスだけは平気らしい。
「それだけ危険度が高いと言うことでしょうね。」
花の乙女団の“魔術士マリーゴールド”魔法による攻撃及び回復に加えバフ、デバフまでこなせる金髪が腰まで伸びている翠色の瞳をしたパーティー内で最も胸が大きくお尻のラインも良いスタイル抜群のお姉さん。
「危険度? 知らねえよ、ワラシが斧でぶった斬ってイチコロよ!」
花の乙女団の“切り込み隊長ツバキ”紅い髪が肩に掛かるくらい伸ばし蒼い瞳をした吊り目で何時もギザギザの歯を覗かせながら毎回先頭を進み敵を屠る背丈の低くツルペタな胸である事をさほど気にしない女の子。
「油断は禁物です、情報によると魔法が効かないとのこと。」
花の乙女団のポーター“ラベンダ”黒髪で眼鏡を掛けており、背中には大きなリュックを背負い野営用のテントや非常食などの他に回復薬や魔法薬を常備している。
「無理は無さらないでくださいね。」
「ワラシ達は冒険者なんだ、多少の無茶くらいするぜ?」
「そうね、マンイーターの生息域はここから北東にある茂みの先みたいね。」
「荷物の準備も完了してます、行きましょう。」
「大丈夫かしら。」
花の乙女団の四人は北東の茂みへと向かい立ちはだかる魔物を軽くいなして行きサクサクとマンイーターの目撃情報の在った場所へと到達する。
「ここが目撃情報の在った場所です、皆さん警戒を。」
「分かってるわ、とは言え霧が濃くて周りがよく見えないわね。」
「けっ、それっぽいのを見つけてぶった斬れば終わるだろ。」
「もうツバキちゃん、駄目よ力任せに問題解決しようとしちゃ。」
「そうは言ってもよ、霧が邪魔で……後ろだマリー!!」
「「!!」」
「へ? きゃあああああ!!」
霧に隠れ現れたマンイーターの影は大きく伸ばした植手がマリーゴールドを捉えいたる部位を強調させながら締め付ける。
「てんめえ! マリーを離しやがれ!!」
「ツバキ落ち着いて! 罠だよ!!」
「あ?」
ツバキは怒りに任せてマンイーターへと斧を振り上げ植手を斬り落とそうとするも霧に隠れた他のマンイーターの植手がツバキの背後から襲いかかり叩き落とす。
「ぐあっ!!」
「「ツバキ!!」」
「ツ……バキ……ちゃん……。」
「マズいですね、先手を取られましたか。」
「見れば分かるわよそんな事!!」
「くそ、ワラシとした事が油断した。」
地面に伏せるツバキをマンイーターは植手を使い持ち上げると巨大な花に付いている口を大きく開くとそのままパクリと丸呑みしてしまう。
「「ツバキ!!」」
「あ……ああ……。」
「ツバキを返せ! この化け物!!」
「待ちなさいスミレ!」
「ラベンダは皆に知らせて! 私はマリーだけでも助けるから!!」
「無理言わないでください!」
「心配要らないわ、あの植手さえ斬り落とせれば」
「そうじゃありません! このマンイーターの植手、よく見たら霧で隠れてるところから私達を取り囲む様に配置されてますから!!」
「なんですって!?」
ラベンダが気付いた時には逃げられない程に植手を伸ばされており更に霧を発生させているのもマンイーターであり、獲物を全て捉えたと認識したのかマンイーターはスミレとラベンダへも植手を伸ばし捉えるとツバキと同様に口の中へと放り込み丸呑みにする。
「嘘……そんな……ツバキちゃん、スミレちゃん、ラベンダちゃん……。」
その時、強風が吹き荒れ発生していた霧が全て吹き飛び視界が良くなる。
「え、何が起こったの?」
「間に合ったみたいだな。」
「ま、マックスさん!?」
「よ、久しぶりだなマリーていったか? 今助けてやるからな。」
「わ、私は大丈夫! でもツバキちゃんとスミレちゃんとラベンダちゃんが!!」
「安心しろ、三人とも助けるから、こんくらい加減すれば良いかな?」
俺はマンイーターに触れ軽く衝撃波を発生させるとみるみるうちに萎れていきマリーは開放され花の中央にある口の中から三人を救出すると服だけが先に溶かされており助けるのが早かったからか身体は無事だった。
「た、助かりましたマックスさん……でもどうして此処に?」
「シャクヤクが帰って来るのが遅いと心配してたからな、それに全滅しかねない状況だったし手助けすることにしただけさ。」
「そうだったんですね、有難う御座いました。」
マリーはペコリと頭を下げ感謝するが助けた三人の裸が目に入り、さっと目を逸らし近くに落ちていたリュックから何かしら身体を隠す物を探す。
「流石にこのまま放置するわけにもいかないし、何かないのか? ん、これなら隠せるか。」
「後これも使えそうですね。」
俺とマリーゴールドは野営に使われるシーツを取り出すと三人に巻いて起きるのを待つ事にした。